道路管理における国土交通省の権限は、道路法第18条に基づいて明確に規定されています。国土交通大臣が道路管理者となる範囲は、高速自動車国道と一般国道の指定区間に限定されており、その他の道路については都道府県知事や市町村長が道路管理者として機能します。
参考)http://www.douroweb.jp/312administrator/administrator.html
この管理体制の特徴は、道路の種類に応じた階層的な管理システムを採用していることです。高速自動車国道については、国土交通大臣が道路管理者とされていますが、実際の管理業務の多くは道路整備特別措置法第8条と第9条の規定により、日本高速道路保有・債務返済機構および高速道路会社が代行しています。
参考)道路管理者 - Wikipedia
道路管理権は、道路の効用発揮を担保する公権的側面と、敷地の権原という私権的側面を持つ包括的な権能として位置づけられています。この権限により、道路管理者は道路の新設、改築、維持、修繕、災害復旧その他の管理を行い、一般交通の用に供するという道路本来の目的を達成しています。
国土交通省では、効率的な道路管理を実現するため、道路管理データベースシステムの整備を進めています。このシステムは、道路施設の基本データを体系的に管理し、維持管理業務の効率化を図る重要な基盤となっています。
参考)https://www.hkd.mlit.go.jp/ky/kn/dou_iji/ud49g7000000cjt9-att/splaat000001n3d2.pdf
道路管理データベースの作成は、「道路管理データベース データ作成マニュアル(案)平成23年4月 国土交通省」に準拠して実施されており、全国共通の標準的な工種および項目について詳細に規定されています。このデータベースには、縦断勾配、平面線形、道路交差点、鉄道交差点など、道路構造に関する基本的な情報が含まれています。
また、デジタル道路地図基礎資料の整備も並行して進められており、VICSや特車オンライン申請システム、道路交通センサス、交通事故分析など、様々な道路管理システムの基盤として活用されています。これらのシステムは、自動車利用者の安全性向上と利便性の向上に直接的に貢献しています。
参考)http://www.lascom.or.jp/wp-content/uploads/2018/08/b3d9ae8be893169ed773d1d8b6fbe6d2.pdf
現在の道路インフラは深刻な老朽化問題に直面しており、道路橋は全国に約72万橋、道路トンネルは約1万本が存在し、これらの適切な維持管理が急務となっています。国土交通省では、この課題に対応するため「道路メンテナンス会議」を全都道府県に設置し、関係機関の連携による効果的な老朽化対策を推進しています。
参考)https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/seicho/20191219/191219seicho03.pdf
道路の維持管理は、機能及び構造の保持を目的とする日常的な維持行為と、損傷した構造を当初の状態に回復させる修繕行為に大別されます。維持行為には道路の巡回、清掃、除草、剪定、舗装のパッチング等が含まれ、修繕行為には橋梁、トンネル、舗装等の劣化・損傷部分の補修や耐震補強等が含まれます。
参考)https://www.nilim.go.jp/lab/peg/img/file1712.pdf
道路メンテナンス会議では、維持管理等に関する情報共有、点検・修繕等の状況把握及び対策の推進、点検業務の発注支援、技術的な相談対応等の役割を担っており、地方整備局、地方公共団体、高速道路会社、道路公社が連携して取り組んでいます。
国土交通省では、IT技術を活用した道路管理の効率化を積極的に推進しています。この取り組みは、従来の人力に依存した管理手法から、デジタル技術を活用した高度な管理システムへの転換を意味しています。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/103d4bb0d10e147963f130871a4fe97ec748c0d0
具体的には、道路施設の点検や監視にセンサー技術やドローン、AI解析技術を導入し、より精密で効率的な維持管理を実現しています。これらの技術革新により、道路の安全性向上と管理コストの削減を同時に達成することが可能となっています。
また、道路管理者と利用者をつなぐ情報システムの整備も進んでおり、リアルタイムでの道路状況の把握や緊急時の迅速な対応が可能となっています。これは自動車利用者にとって、より安全で快適な道路利用環境の提供につながる重要な取り組みです。
参考)https://www.kkr.mlit.go.jp/road/maintenance/kanri/index.html
道路管理の新たな展開として、住民参加による協働体制の構築が注目されています。平成28年4月の道路法改正により創設された「道路協力団体制度」は、民間団体等との連携により道路管理の一層の充実を図る画期的な仕組みです。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/1b2227ff5662762bee2ed0b42a4a9121230676ea
この制度では、道路協力団体が道路の魅力向上のための活動で得た収益により道路管理活動を充実させることも可能とされており、持続可能な道路管理体制の構築を目指しています。ボランティア・サポート・プログラムなどの取り組みにより、地域住民と道路管理者が協力して快適な道づくりを進める事例も増加しています。
これらの住民参加型の道路管理は、自動車利用者にとってより身近で親しみやすい道路環境の創出に寄与しており、地域全体の交通安全意識の向上にも貢献しています。また、地域の特性を活かした道路管理が可能となり、より効果的な維持管理体制の確立につながっています。
参考:国土交通省道路局の道路管理に関する詳細な情報
https://www.mlit.go.jp/road/sisaku/ijikanri/ijikanri.html
参考:道路の維持管理について包括的な解説
https://www.kkr.mlit.go.jp/road/maintenance/kanri/index.html
参考:道路法の条文と道路管理者の規定
https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000180