道路交通センサスは、国土交通省が5年ごとに実施する全国規模の交通量調査です。この調査結果を視覚的に表示する可視化ツールが国土交通省の「xROAD」プラットフォームで無料公開されており、自動車利用者にとって非常に有用な情報源となっています。
参考)一般交通量調査結果WEBマップ(可視化ツール)
可視化ツールは「一般交通量調査結果WEBマップ」として提供され、全国の主要道路における交通量、旅行速度、混雑度などのデータを地図上で確認できます。ブラウザ上で動作するため、特別なソフトウェアのインストールは不要で、誰でも簡単にアクセスできる点が大きな特徴です。
参考)マルチセンサーデータの可視化 AVETO.app Devel…
可視化ツールには、道路データを効果的に表示するための多彩な機能が搭載されています。地図上での計測機能により、距離や面積を測定できるほか、画面キャプチャ機能で表示内容を保存することが可能です。また、外部アプリで作成したGeoJSON形式のファイルを読み込んで重ね合わせ表示することもでき、独自の分析結果と組み合わせた活用ができます。
参考)道路データプラットフォーム(DPF)データビューア
背景地図は標準地図、淡白地図、白地図、航空写真の4種類から選択でき、用途に応じて最適な表示形式を選べます。さらに「簡易検索モード」と「通常検索モード」の2つの検索方法が用意されており、初心者でも直感的に操作できるよう配慮されています。
参考)https://www.xroad.mlit.go.jp/img/article/02_%E9%81%93%E8%B7%AFDPF%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%93%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%A2%E3%83%9E%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AB(%E7%B0%A1%E6%98%93%E7%89%88).pdf
データの出力機能も充実しており、表示中のデータをCSV形式やGeoJSON形式でダウンロードできるため、ExcelやGISソフトウェアでの二次利用が容易です。設定出力・設定読み込み機能を使えば、現在の表示状態を保存して他のユーザーと共有したり、後日作業の続きを行うことも可能です。
道路交通センサスでは、1日あたりの交通量だけでなく、平日と休日の差異や時間帯別の交通量も詳細に記録されています。これにより、通勤時間帯の渋滞状況や休日のレジャー交通の流れなど、時間的な変動パターンを把握できます。
参考)https://www.mlit.go.jp/kisha/kisha05/06/060901_2/02.pdf
車種別のデータも取得できるため、大型車の混入率から道路の主要用途を類推することも可能です。例えば、大型車の割合が高い道路は物流の主要ルートであることが推測でき、時間帯によって混雑度が変わる可能性があります。
参考)交通センサスの解析と可視化 - ponkotuyのブログ
調査区間は主要交差点や市区町村境界で区切られており、全国の主要道路をカバーしています。各区間にはピーク時速度のデータも含まれており、実際の走行速度から渋滞の程度を判断できます。国土交通省の資料によれば、これらのデータは渋滞3Dマップの作成や将来交通量の推計にも活用されています。
参考)https://www.msr.co.jp/mapinfo/dat/map/dourokoutusensasu.html
自動車利用者にとって最も実用的な活用方法は、日常的なルート選定における渋滞回避です。出発前に目的地までの複数ルートの交通量を比較することで、最も混雑の少ない経路を選択できます。特に長距離ドライブや時間厳守が必要な移動の際には、事前の交通状況確認が重要です。
参考)通行量調査・交通量調査の活用事例
店舗開発や不動産調査の分野でも、道路交通センサスの可視化ツールは重要な役割を果たしています。店舗前の交通量を確認することで、潜在顧客数を推定でき、出店判断の材料として活用できます。実際に、店舗開発の実務では「物件調査」の一環として交通センサスの可視化ツールが広く利用されています。youtube
参考)道路交通センサス情報の取得 - SENSY Product …
引っ越しや住宅購入を検討する際にも、周辺道路の交通量データは有用です。騒音や大気汚染の程度を予測する材料となるほか、通勤ルートの混雑状況を事前に把握できます。環境影響評価やNOx・SPM等の排出量算定の基礎資料としても活用されているため、居住環境の質を判断する上で信頼性の高い情報源です。
2025年5月に国土交通省が公開した「道路データプラットフォーム」では、より高度なデータ活用が可能になりました。全国約2,600箇所の直轄国道で観測されている方向別交通量データをAPI経由で取得でき、独自のアプリケーション開発に利用できます。
参考)https://zenn.dev/jnch/articles/b76e38ea130d4c
APIで提供されるデータは5分間値と1時間値の2種類があり、観測から約20分後には最新データを取得できます。5分間値は過去1ヶ月分、1時間値は過去3ヶ月分のデータにアクセス可能で、リアルタイム性の高い交通情報として活用できます。
参考)https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001888454.pdf
国土交通省交通量APIガイダンスサイト(日本道路交通情報センター)
APIの利用方法や規約の詳細が確認でき、無料で利用登録が可能です。
開発者向けには、国土交通省データプラットフォームがGraphQLベースのAPIを提供しており、過去の道路交通センサスデータ(2021年度、2015年度)も取得できます。これにより、時系列での交通量変化の分析や、長期的なトレンド把握が可能になります。実店舗のデータ解析において、店舗周辺の交通パターンを把握し、顧客流入予測に活用している事例も報告されています。
道路交通センサスの可視化ツールは、他の交通関連データと組み合わせることで、より包括的な交通分析が可能になります。例えば、パーソントリップ調査データと併用すれば、道路交通量だけでなく人の移動目的や移動手段も含めた総合的な交通流動の把握ができます。
参考)可視化・簡易分析ツール
国土交通省が提供する「都市交通調査プラットフォーム」の可視化・簡易分析ツールでは、移動回数、発生集中量などの交通特性指標をマップやグラフで表示でき、道路交通センサスデータと相補的に活用できます。現在は仙台都市圏と北部九州圏のデータが公開されており、今後対象エリアが拡大される予定です。
民間企業が提供する人流データサービスと組み合わせることで、より詳細な分析も可能です。携帯電話基地局データやGPS位置情報を活用すれば、道路ネットワークだけでなく、人々の実際の移動経路や滞在場所まで把握できます。路線バスの潜在需要分析や、公共交通網の再編計画などに活用されている事例もあります。
参考)https://www.zenrin-datacom.net/solution/congestion/casestudy/traffic
道路交通センサスは5年ごとの調査であるため、最新データでも数年前の情報である点に注意が必要です。令和3年度(2021年度)の調査結果が令和5年(2023年)6月に公表されたように、調査実施から公表までにタイムラグがあります。そのため、急速に開発が進む地域や新しい道路が開通した地域では、現況と異なる可能性があります。
参考)道路:道路関係データ(交通量・旅行速度・渋滞 等) - 国土…
一方で、2025年5月に公開された交通量APIは、常設型トラフィックカウンターとCCTV映像を活用したAI型トラフィックカウンターによる機械観測データを提供しており、約20分遅れでほぼリアルタイムの交通量情報が取得できます。定期的な道路交通センサスと常時観測データを併用することで、長期トレンドと短期変動の両方を把握できる体制が整いつつあります。
参考)https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2505/13/news145.html
データの信頼性については、国土交通省が一定の精度基準を設けており、その基準を満たしたデータのみが公開されています。ただし、データ利用者からは「年度ごとに変数構成が異なる」「一部の変数情報に誤りが含まれている可能性がある」といった指摘もあり、実務での利用時には国土交通省が公開している調査資料で詳細を確認することが推奨されます。
令和3年度全国道路・街路交通情勢調査(国土交通省)
一般交通量調査の詳細資料や調査方法、データ項目の定義が確認できます。
AIやIoT技術の進展により、今後は交通データの収集・分析手法がさらに高度化することが期待されています。画像認識AIを活用した自動カウントシステムや、複数センサーを組み合わせた統合的な交通監視システムなど、新しい技術が次々と登場しています。これらの技術により、より詳細でリアルタイムな交通情報が利用可能になり、自動車利用者にとっての利便性がさらに向上していくでしょう。
参考)世界最高レベルのAIを活用した交通量・通行量調査