第一汽車集団とは|中国三大自動車メーカーの歴史と紅旗ブランド特徴

第一汽車集団は中国初の国営自動車メーカーとして1953年に設立され、東風汽車や上海汽車とともに中国三大自動車メーカーの一角を占めています。最高級ブランド「紅旗」や国際的な提携戦略について、あなたはどれだけ知っていますか?

第一汽車集団とは

第一汽車集団の特徴
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中国初の国営自動車メーカー

1953年に長春市で設立された中国最古の自動車メーカーで、中国自動車産業の幕開けを担った企業

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中国三大自動車メーカーの一角

東風汽車や上海汽車とともに中国を代表する自動車メーカーとして年間300万台以上を生産販売

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世界的な提携ネットワーク

フォルクスワーゲン、トヨタ、マツダなど国際的自動車メーカーと提携し最新技術を導入

第一汽車集団の設立と初期発展

第一汽車集団は1953年にロシアの自動車メーカー・ジルの支援により吉林省長春市郊外に設立されました。当時は「第一汽車製造廠」と呼ばれ、革命後の社会主義中国で最初に設立された自動車メーカーとして中国自動車産業の象徴的存在となりました。設立プロジェクトはソ連の156項目に上る対中援助中最大のもので、モスクワ郊外のスターリン自動車工場をモデルにフォードシステムと呼ばれる大量生産システムを導入して建設されました。
参考)中国第一汽車集団 - Wikipedia

1956年にジルによる支援が終了した後、同社は国産中型トラック第1号の「解放」を生産開始し、中国自動車産業の幕開けの栄誉を担いました。設立後30年間の主な生産車種は、ソビエト連邦のトラックZIS-150をベースとした中国人民解放軍の中型トラックCA-10と、その2年後に生産が開始されたZIL-157をベースとする軍用トラック解放CA30でした。1988年には新型のCA-141の生産が開始され、商用車分野での技術革新が進められました。
参考)中国第一汽車集団(ちゅうごくだいいちきしゃしゅうだん)とは?…

第一汽車集団の紅旗ブランド開発

第一汽車集団は1958年から自社ブランドの「紅旗(ホンチー)」を立ち上げました。紅旗は中華人民共和国初の国産乗用車として開発され、中国要人の専用車としても広く使われる最高級車ブランドとなりました。ブランド名は中国の国旗である五星紅旗を象徴しており、ブランドロゴには中国建国の第一人者であり第一汽車の創設者でもある毛沢東の筆跡がそのまま用いられています。
参考)第一汽車とは何? わかりやすく解説 Weblio辞書

紅旗ブランドのラインナップはレトロデザインのLシリーズとモダンデザインのHシリーズに分けられています。LシリーズのフラッグシップモデルであるL9は国家主席の移動や式典で用いられる車で、L7と呼ばれるストレッチモデルとともに政府機関にしか納入が許されておらず、中国人であっても一般人は購入できないほどに珍重されています。一方でHシリーズは誰でも購入可能で、2018年にはマツダ6ベースのH5、アウディQ5ベースのSUV HS7、2020年にはアウディA6LをベースにしたH9がデビューしました。
参考)日本車神話が崩壊?日本上陸した中国車最高級ブランド「紅旗」っ…

2018年9月には、ロールス・ロイスのチーフデザイナーだったジャイルズ・テーラーが第一汽車の副社長および紅旗の最高クリエイティブ責任者に就任し、紅旗ブランドのデザインを担当することで国際的な高級車ブランドとしての地位を確立しています。
参考)【読み物】知られざる中国の高級車ブランド「紅旗」

第一汽車集団と国際自動車メーカーの提携戦略

第一汽車集団は1977年と1981年に大野耐一の直接指導でトヨタ生産方式を導入し、世界最先端の生産技術を取り入れました。1991年にはフォルクスワーゲンと提携し、世界の最新技術を用いた乗用車フォルクスワーゲン・ジェッタの生産を子会社で開始しました。フォルクスワーゲングループとの提携は長期的なもので、2014年には2041年まで提携関係を延長することで合意しています。
参考)フォルクスワーゲン と中国第一汽車、提携関係を25年延長…2…

トヨタやマツダなどの大手自動車メーカーとも提携関係を構築し、2005年からはトヨタ・クラウンなどの生産を開始しました。2004年12月にはV6エンジンの生産を開始する「一汽トヨタ(長春)エンジン有限会社」を設立し、トヨタとしては中国初のV6エンジン工場となりました。2021年時点で一汽フォルクスワーゲンの販売台数が180万台、一汽トヨタの販売台数が84万台となっており、外資合弁事業が同社の主要な収益源となっています。
参考)第一汽車:2025年までに販売台数650万台、NEV比率20…

第一汽車集団の販売実績と生産能力

第一汽車集団は成長を続け、東風汽車や上海汽車とともに中国三大自動車メーカーの一角となりました。2004年には販売台数100万台を突破し、2017年の販売台数は334万6000台に達しました。2021年の販売台数は351万台で、そのうち紅旗ブランドが30万台、奔騰ブランドが7万台、解放ブランドが45万台を占めています。​
同社は2020年までに販売台数400万台、うち自主ブランドで200万台を目指す計画を立てており、2025年までには販売台数650万台、新エネルギー車(NEV)比率20%を目指しています。2017年時点の従業員数は11万3866人で、総資産は4367億8000万元、売上高は4698億9000万元、利益高は418億元という規模に成長しました。1997年末時点で世界70か国の100の企業と提携関係にあり、グローバルな事業展開を進めています。​

第一汽車集団が自動車オーナーにもたらす独自価値

第一汽車集団は中国の自動車オーナーにとって、国産技術と国際先端技術の融合という独自の価値を提供しています。紅旗ブランドは中国の富裕層に十分アピールできるレベルに達しており、BMW5シリーズやメルセデス・ベンツEクラスのライバルとされる一方で、インテリアなどはロールスロイスに匹敵するレベルのラグジュアリーカーに仕上がっています。​
また、フォルクスワーゲンやトヨタとの合弁事業により、国際水準の品質管理と最新技術を搭載した車両を中国市場で入手できる環境を整備しました。2016年から2020年までの5年間には合計18車種の自主ブランド新型車を導入する計画を明らかにしており、環境対応車用中核部品やシャシー、生産技術の開発では大きく進化しています。長春市を拠点とする同社は、中国自動車産業の発展を牽引する企業として、自動車オーナーに多様な選択肢と信頼性の高い製品を提供し続けています。
参考)第一汽車集団 (下):自主ブランド事業の販売/開発体制とモデ…

第一汽車集団の詳細な歴史と企業概要について知りたい方はこちら(Wikipedia)
第一汽車の最新の販売計画と新エネルギー車戦略について(マークラインズ)
紅旗ブランドの日本進出と車種ラインナップの詳細(カーモビー)