バニング ハイエースは、1970年代にアメリカから伝わったバニング文化が日本独自に進化を遂げた改造車で、商用バンであるトヨタ・ハイエースをベースとして豪華な内外装にカスタムした車両のことです。アメリカでは単に「Vanning」と呼ばれますが、日本では独特の発展を遂げ「バニング」という日本固有のカスタムジャンルとして確立されました。
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バニングの語源は英語の「van」を動詞にした「vanning(荷台にものを詰める)」から来ており、本来はキャンピングカーの一種として発展しました。しかし日本では1980年代以降、派手なエアロパーツや豪華な内装を施した「見せる車」として独自の進化を遂げています。
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トヨタ・ハイエースがバニングのベース車として人気の理由は、広い車内空間と改造の自由度の高さです。長距離走行にも耐えられる頑丈な造りで、商用車として設計されたシンプルな荷室はレイアウト変更やDIYによるパーツ追加に適しています。
バニング ハイエースの内装カスタムは、昭和の高級キャバレーのような豪華な空間作りが特徴で、天井に至るまでベルベット調の生地を貼り込んだフルモケットトリム仕様が定番です。内装には「ふとん張り」と呼ばれる独特の工法が使われ、表面を「ボタン留め」した懐かしい意匠のソファや各部にミラーを配置した奥行き感のある演出が施されます。
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内装に使用される生地は、当時最先端だったチンチラなどの高級素材が好まれ、ボンボンが付いたダッシュカバーやワンオフ製作のカーテンなどの細かなディテールにもこだわりが見られます。テーブルやソファを配置したラウンジ空間を作り、折り畳み式テーブルでベッドにも変更できる機能性も重視されています。
DIYで内装を施工する際は、チューブボンドやスプレーボンドを使用して生地を貼り付けますが、しわやたるみを防ぐため5〜10mm程度のウレタンを下地に貼ることが重要です。天井の施工では6〜9mm程度のベニヤ板にウレタンを貼り、その上からレザーを被せて各箇所をくるみ釦で留める手法が効果的です。
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バニング ハイエースの外装カスタムでは、巨大なエアロパーツの装着が最大の特徴で、フロント・リア部分に派手な形状のスポイラーやエアダムを取り付けます。200系ハイエースでは全長12m、横幅2.49m、車重3.5トンオーバーという建造物レベルの改造例も存在し、FRPを駆使した外装製作技術の高さが伺えます。
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外装パーツには当時の一流品が使われ、180mm径のゾルベ製ヘッドライトやグリーンレンズタイプの希少なランプ、米国ハードレー製のコンボイホーンなどが装着されます。ワイパーアームやブレードまでボディ同色に塗装するなど、細部へのこだわりも日本のバニング文化の特徴です。
塗装技術では、単色塗装からグラデーション塗装、エアブラシによるアートワークまで幅広い表現が可能で、パール塗装によって奥深いツヤを演出する技法も好まれています。フロントと前ドア以外の窓を埋めて外観をフラット化する改造も定番で、リアウィンドウ部分に人気アニメやアーティストのイラストをエアブラシで描く表現も見られます。
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バニング ハイエースの年間メンテナンス費用は、通常のハイエースの基本メンテナンス(約10万円)に加えて、特殊パーツの維持管理費用が追加で必要になります。エンジンオイル交換、ブレーキオイル交換、各種フィルター交換などの基本メンテナンスは通常車両と同様ですが、カスタムパーツの修理や部品調達に高額な費用がかかる場合があります。
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バニング車両で特に注意が必要な故障箇所は、オルタネーター(6〜11万円)、DPF関連(50万円)、サプライポンプ(35万円)などのハイエース共通の故障に加えて、カスタムパーツ固有の不具合があります。修理の際に工場で取り扱いを断られることも多く、バニング専門店での対応が必要になるケースが大半です。youtube
任意保険についても、バニング車両は引き受け審査が厳しくなる傾向があり、保険料の上昇や加入できる保険会社の限定といった問題が発生します。特に2003年の8ナンバー構造要件厳格化以降は、保険加入がより困難になっており、購入前に保険会社への確認が必須です。
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現在のバニング ハイエース文化は絶滅危惧種とも言える状況で、2003年の8ナンバー構造要件厳格化と2004年の200系ハイエース登場により、バニング製作業者が一気に減少しました。200系は100系に比べて一回り大きく、デザイン的にもバニング化しづらいという理由で、多くの業者がラグジュアリースタイルのハイエースに転向しています。
それでも現在でもバニング愛好家は存在し、令和の技術でリメイクされた「フュージョン」のような新作も登場しています。かーいんてりあ高橋のような老舗ビルダーは、1983年創業以来培った縫製や架装技術を活かし、現代の安全基準に適合したバニング車両を製作し続けています。
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バニング車両の希少性により、道行く人からの注目度は非常に高く、子供から大人まで幅広い世代から写真を撮られる機会が多いという特徴があります。海外のテレビ局からも取材依頼があるほど、日本独自のカスタム文化として国際的な注目を集めており、完全に消滅してしまうのは惜しいという声も聞かれます。