トヨタFT-1は、2014年1月の北米国際自動車ショー(デトロイトモーターショー)で世界初公開されたコンセプトカーです。車名の「FT」は「Future Toyota(未来のトヨタ)」を意味し、「1」は「頂点」を表現しています。このネーミングからも分かるように、トヨタが描く未来のフラッグシップスポーツカーとしての位置づけが明確に示されています。
デザインを担当したのは、トヨタの北米デザイン拠点である「Calty Design Research(キャルティ)」です。同拠点の創立40周年という節目の年に開発されたこのコンセプトカーは、「Caltyの集大成」として位置づけられています。
開発チームは、1967年に登場した伝説的なスポーツカー「2000GT」をはじめ、「セリカ」「スープラ」「FT-86」といったトヨタのスポーツカーの歴史を紐解きながら、その情熱を注ぎ込んでデザインしました。
興味深いことに、FT-1の開発当初は現在のGRスープラを想定してデザインされたわけではありませんでした。当時は「未来のトヨタのFRフラッグシップスポーツカーはどうあるべきか」をコンセプトに掲げてデザインされており、その後にスープラの復活プロジェクトと結びついたという経緯があります。
FT-1の最も印象的な特徴は、その革新的なエクステリアデザインです。全体的なフォルムは曲線美を強調しつつも、レースカーらしい力強さを表現しています。
フロントデザインの特徴
サイドビューの魅力
リアデザインの機能性
実際のサイズは、グランツーリスモ6でのスペックによると全長4,675mm×全幅1,970mm×全高1,225mm、ホイールベース2,740mmとなっています。これは現在のGRスープラと比較すると二回り近く大きなサイズで、最も近いサイズ感の車はレクサスのLCだそうです。
FT-1のパワートレインについては、公式な詳細スペックは明かされていませんが、グランツーリスモ6での設定では非常に興味深い仕様となっています。
グランツーリスモ6でのスペック
実際の展示車両では、ボンネットの一部がスケルトンになっており、エンジンの様子を確認することができます。展示車両のエンジンは比較的コンパクトで、世界的なダウンサイジングターボの流れを考慮すると、2リッター直4ターボエンジンが現実的な選択肢として考えられています。
興味深いことに、FT-1のエンジンルームを詳しく観察すると、吸気の経路であるエアクリーナーホースが分岐していることが確認できます。これは直列6気筒エンジンではなく、V型エンジンの搭載を想定していたことを示しており、当時のRC-Fなどに搭載されていた2UR-GSEエンジンなどが候補として考えられていた可能性があります。
FT-1と現在のGRスープラとの関係は非常に深く、多くの共通点が見られます。GRスープラのデザインのベースとなったのがこのFT-1ですが、制約のないコンセプトカーであるFT-1の方がより伸びやかなプロポーションを実現しています。
スープラとの共通デザイン要素
FT-1独自の特徴
現在のGRスープラでは、コンセプトを完全に再現できていない部分もあります。例えば、ダクトの開口部やライトユニットの分離構造など、量産化の制約により実現できなかった要素も存在します。
デザイナーによると、FT-1の開発時点では「スープラといえば直6」という認識があったため、エンジン形式の違いがFT-1とスープラの大きな差別化ポイントとなっています。
FT-1の特筆すべき点の一つは、発表翌日という異例の速さでプレイステーション3向けドライビングシミュレーションゲーム「グランツーリスモ6」に登場したことです。これは自動車メーカーとゲーム業界の連携として画期的な出来事でした。
グランツーリスモシリーズでの展開
さらに興味深いのは、2014年8月に「FT-1 ビジョングランツーリスモ」というレーシングモデルが追加されたことです。このバージョンでは、よりピュアなレーシングカーとしてブラッシュアップされており、以下の特徴があります。
また、2014年8月には「グラファイトFT-1コンセプト」という新バージョンも発表されました。これは従来の赤いボディカラーとは異なり、「グラファイト」と呼ばれるシルバー系のメタリックカラーを採用し、内装もブラウン系のサドルレザーでコーディネートされたプレミアムな仕様となっています。
トヨタ公式サイトでは、FT-1に関する詳細な技術資料やデザインコンセプトが公開されています。