日本の野生動物の中でも、哺乳類はドライバーが遭遇する可能性が最も高い種類です。霊長目ではニホンザルが、食肉目ではキツネやタヌキ、ニホンツキノワグマなどが広く分布しています。偶蹄目のニホンジカやイノシシも本州から九州にかけて生息しており、特に農業地域や山間部での目撃報告が相次いでいます。これらの動物は生活圏が人間と重なりやすく、夜間の活動時に道路横断時の衝突リスクが高まります。
ウサギ目のノウサギやキュウシュウノウサギ、齧歯目のエゾリスやシマリスなども多く存在し、小型動物であっても高速走行中に避けようとしたハンドル操作が原因で大型事故に発展することがあります。海牛目のジュゴンやクジラ目のスナメリなど、海生哺乳類も含めると日本の野生動物の多様性は極めて高くなります。環境庁の調査では、日本に生息する哺乳類約240種のうち、2割強が絶滅の危機に瀕していることが指摘されており、保護と同時に安全運転による衝突回避も重要な課題となっています。
参考資料:日本の動物について詳しく知ることができます
https://pz-garden.stardust31.com/nihon.html
高速道路におけるロードキル統計によると、全体の44%がタヌキによって占められており、次に鳥類が27%となっています。NEXCO東日本の調査では、2002年の約3万6,000件から2018年には約4万7,400件へと年々増加傾向にあり、高速道路だけで1日平均130件以上の衝突事故が発生しているのが実態です。年間統計ではタヌキだけで約18,800頭が犠牲になっており、次点としてシカが続きます。
タヌキが犠牲になりやすい理由は、驚くと丸まって動けなくなる習性にあります。この防御姿勢は天敵からの身を守るための本能的行動ですが、自動車の前では自殺行為となります。一方、シカ類はその体の大きさから、衝突時にドライバーが急ハンドルを切ることで二次事故が発生し、人命が失われるケースも報告されています。キツネやアナグマなどの中型動物も日常的に道路を横断し、季節ごとに発生パターンが異なります。
特に6月から10月の動物活動が活発な時期、そして夜間18時から24時、早朝4時から7時にかけてロードキル発生率が高まります。都市部から郊外へ向かう道路では、夜間に餌を探しに来た動物が朝方に巣へ帰る際の衝突が多く報告されており、運転者の警戒心が必須となります。
参考資料:ロードキルの詳細な対策と統計情報
https://www.menkyo.jp/column/column0315.html
春から初夏にかけては、繁殖期に入った動物が活動範囲を拡大するため、ロードキルのリスクが上昇します。特にシカやイノシシは、冬の間に消費したエネルギーを取り戻すため採食活動が活発化し、道路横断の頻度が増えます。夏季から秋季にかけては、気温低下に向けて越冬準備に入る動物が増え、山間部の農地へ頻繁に下りてくるようになります。
冬季は一見ロードキルが減少するように思えますが、実際には積雪地域でも温暖な地域への移動に伴う衝突事故が増加する傾向にあります。特に北海道や本州中部の山岳地帯では、冬眠前の動物たちの行動が予測しにくくなり、昼間の活動時間帯での衝突も報告されています。平地よりも山間部を抜ける道路、そして川や湿地周辺の経路では季節を問わず危険性が高いため、動物注意標識がある場所では常に時速を10~20km程度落とす警戒運転が推奨されています。
気象条件の変化も影響し、雨や霧の中では動物の視認性が低下し、同時にドライバーの判断時間も短縮されます。氷結路面では急ハンドル操作が不可能に近くなり、小動物でも避けきれない事態が増加しているのが現実です。
ドライバーが野生動物に遭遇した際、最も重要なのは落ち着いた判断と予測的運転です。動物の目が反射して光るのが見えたら、まず後続車の位置を確認してから緩やかに減速しましょう。高速道路上での急ブレーキは追突事故のリスクを高めるため、状況が許すなら徐々に速度を落とすことが基本です。危険がない限り、こちらが刺激を与えなければ多くの動物は停止したままでいる傾向があります。
夜間運転ではハイビームを活用し、遠距離から動物を確認することが重要です。道路の両側、特に草むらや森の入り口に注意を向け、常に動物の飛び出しを予測した運転心理を持つ必要があります。どうしても飛び出してきそうな危険性を感じたら、状況が許す限り一旦停止して、動物が移動し去るまで待機するべきです。小型動物であっても避けようとして急ハンドルを切ることは厳禁で、多くの場合、単独事故扱いとなるため自損事故になります。
衝突後に動物がケガをしている場合は、警察に直ちに連絡し、指定の動物病院への搬送を検討してください。治療費はドライバー負担となりますが、動物の生命救助が最優先です。動物が死亡している場合は、後続車の安全を確保するため、亡骸を道路脇に寄せた後、警察と地方自治体の処理指示を待つことになります。
日本全国の野生動物分布図を総合的に分析すると、地域ごとにロードキルの高リスク動物が異なることが明確になります。北海道ではエゾシカやエゾヒグマによる大型衝突事故が主流で、時に人命が失われるケースさえあります。本州中部の山間部ではニホンジカやツキノワグマが主要な脅威であり、近年個体数の増加に伴いロードキル件数も増加傾向です。
関東以南の都市周辺部ではタヌキやキツネ、アナグマなどの中型動物が目立ち、これらは農地と住宅地の境界域で活動するため衝突リスクが高まります。京都・大阪などの都市部郊外でもイノシシの出没が多く、近年では農業被害だけでなく交通事故も社会問題化しています。森林破壊と気候変動に伴い、かつて見られなかった地域にも野生動物が進出してきており、全国的に予測不可能なロードキル事故が増加しているのが現状です。
NEXCO各社は動物侵入防止柵の設置、そして獣用トンネル(けもの道)の確保によって対策を強化していますが、それでも年間数万件の事故が発生し続けています。運転者側の警戒心強化と予測的運転技術の習得が、野生動物との共存と安全運転の両立には不可欠となります。
参考資料:動物との衝突事故についての最新情報
https://www.sf-japan.net/archives/7020