ロードキル食べる実態と食肉活用の法律・衛生管理

ロードキルされた動物を食べることは可能なのか?法律や衛生面、海外の活用事例から自動車ドライバーが知るべき処理方法まで詳しく解説します。あなたの知らない野生動物との共存の実態とは?

ロードキル食べる

ロードキルと食肉活用の基礎知識
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法律上の扱い

ロードキルされた動物は廃棄物扱いで、拾うこと自体は合法だが食用には厳格な衛生管理が必要

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主な対象動物

キョン、シカ、イノシシなどの特定外来生物や狩猟対象動物が食用として活用される例がある

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衛生管理の重要性

E型肝炎ウイルスや寄生虫のリスクがあり、中心温度75℃で1分以上の加熱が必須条件

ロードキルを食べる法律上の位置づけと廃棄物処理

ロードキルされた野生動物は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」により一般廃棄物として扱われます。道路上の動物の死体は道路に落ちているゴミと同じ扱いとなるため、拾うこと自体は法律違反にはなりません。しかし、公共の利益に反してみだりに鳥獣の死体を棄てた場合は軽犯罪法違反となります。
参考)キョンを拾って食べてみた。気になる味は?

野生動物の肉を食用として流通させる場合、食品衛生法に基づく食肉処理業の許可を受けた施設で処理する必要があります。許可施設では基準に適合する設備を設け、衛生的に処理加工を行うことが義務付けられています。自家消費の場合でも衛生管理を徹底し、食中毒予防に努めることが求められます。
参考)ジビエ(野生鳥獣の肉)の衛生管理 |厚生労働省

ロードキルを起こしてしまった場合、どんな小さな動物でも警察に連絡する義務があり、これを怠ると「報告義務違反」となって3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金が科せられます。また道路緊急ダイヤル「#9910」に連絡して、動物の死体処理について指示を仰ぐことも重要です。
参考)野生動物と事故での対処法とは|やるべきことや使える保険を詳し…

ロードキル食肉の衛生管理と食中毒リスク

ロードキルされた動物を食べる際には、極めて高い衛生リスクが伴います。生または加熱不十分な野生のシカ肉やイノシシ肉を食べると、E型肝炎ウイルスや腸管出血性大腸菌による食中毒のリスクがあり、さらに寄生虫感染の危険性も知られています。
参考)https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/niku/jibie/guideline.html

厚生労働省のガイドラインでは、ジビエ(野生鳥獣の肉)の調理には中心部の温度が75℃で1分間以上、またはこれと同等以上の効力を有する方法で十分加熱することが推奨されており、生食は絶対に避けるべきとされています。また調理に当たっては生の肉類と加熱済みの肉類で、まな板や包丁などの器具を使い分ける必要があります。
参考)https://www.pref.okayama.jp/uploaded/life/966144_9290110_misc.pdf

実際にロードキルを食べた事例では、死後すぐで冬場の気温が冷蔵庫より低く、狩猟の知識がある者がダメージのない部分を選んで調理し、しっかり火を通すという厳格な条件が守られています。血液等の体液や内臓にはなるべく触れないようにし、ダニ等の衛生害虫対策として長袖、長ズボン、手袋等を着用することも重要です。youtube​
参考)https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/attachment/251001.pdf

ロードキルされた動物の種類と食用価値

日本でロードキルされる動物のうち、実際に食用として活用されている事例があるのは主に特定外来生物や狩猟対象動物です。千葉県で特定外来生物に指定されているキョンは、ロードキル個体をラーメンにして食べた実例があり、狩猟対象としても注目されています。​youtube​
シカ肉は「クリーンキル」という手法で一発で仕留められたものが高品質とされ、ジビエ料理として人気があります。適切に処理されたエゾシカ肉は、スライスをソースに漬け込んで焼くなど、様々な調理法で美味しく食べられます。
参考)【お肉大百科】初心者向けジビエ「シカ肉」の楽しみ方&レシピ …

高速道路でのロードキル発生件数は年間約5万件に及び、タヌキやキツネなどの中型動物と鳥などの小型動物の処理件数が最も多くなっています。特にタヌキは年間約18,800頭が犠牲になっているとされ、高速道路だけで1日約130件の動物との衝突事故が発生しています。
参考)動物が飛び出したら「急ブレーキ、急ハンドルは基本NG」 車と…

ロードキルを食べる海外の活用事例と文化

海外ではロードキルを食料として活用する文化が一部地域で根付いています。アメリカのテキサス州などでは、たまたま道路で鹿の屍を見つけた場合、自分で屠殺することなく狩りをしたのと全く同じ獲物を手に入れることができると考える人もいます。
参考)奇妙だけど美味?「ロードキル」を食料に|パトリック・ サッコ…

オーストラリアでは収穫期にトラックからこぼれ落ちた穀物を食べに来る野鳥のロードキルが増加し、カンガルーのロードキルも断トツに多いとされています。西オーストラリア州南部では、野鳥のロードキルが群を抜いて多い時期があり、道路状況への注意喚起が行われています。
参考)繧ェ繝シ繧ケ繝医Λ繝ェ繧「縺ョ蟶ォ襍ー縺ョ莠、騾壻コ区腐繝サ…

チェコ共和国では2014年から「Animal Vehicle Collision」というロードキル収集システムを運用しており、市民約633人がデータ提供者として参加し、これまでに87,784件のデータを収集しています。Web上で事故多発地点のマップを公開し、市民への注意喚起や意識啓発として活用されています。
参考)https://www.kckk.co.jp/wp-content/uploads/2024/05/P-R-33.pdf

ロードキル発生時の正しい対処方法と保険適用

ロードキルを起こしてしまった場合、まず安全な場所に停車して警察に連絡することが最優先です。事故が発生した日時・場所、負傷者の有無、車両損傷の有無、事故の状況を警察に伝える必要があります。警察に通報しないと保険金請求に必要な事故報告書・交通事故証明書が発行されません。​
ロードキルは自損事故として扱われるため、自賠責保険は補償対象外となり、任意保険からの補償となります。車がダメージを受けた場合は車両保険、ドライバー・同乗者が負傷した場合は人身傷害や搭乗者傷害、他人が負傷した場合は搭乗者傷害または対人賠償が適用されます。
参考)通称ロードキル。動物を車で引いてしまった時どうすれば?保険は…

ただし車両保険の補償に関して注意が必要なのは、エコノミープランなど保険のプランによっては適用されない場合があることです。自損事故での補償が備わっているか、自動車保険の内容を確認しておくことが重要です。また破損させてしまったガードレール等の修理代については、対物賠償保険による補償を受けることができます。
参考)こんなとき保険は使えるの?【保険市場】の自動車保険ガイド

ロードキルの調理方法とジビエとしての活用

ロードキルされた動物を調理する場合、厳格な衛生管理と適切な温度管理が不可欠です。ジビエセミナーでは、65℃で15分または66℃で11分あたりで加熱すると非常に美味しいローストビーフ風のジビエができると解説されています。中心温度計やスチームコンベクションオーブンを使って温度設定を正確に行うことが推奨されます。youtube​
実際の調理では、使い捨てのゴム手袋やレインコートを着用し、血抜きや逆さ吊りなどの基本的な処理を行うことが望ましいとされています。野生鳥獣やジビエの処理、調理、加工に使用する器具や容器は、処理終了ごとに洗浄し、83℃以上の温湯または200ppm以上の次亜塩素酸ナトリウム等による消毒を行う必要があります。
参考)ロードキルされたアナグマを食べてみた|利一 谷渡朗 R.N.…

食材は必ず分けて保存し、冷蔵庫では台下冷蔵庫(コールドテーブル)などにバットを使って適切に保管します。食肉は10℃以下で保管することが基本で、肉眼的に異常が認められない場合も微生物及び寄生虫の感染のおそれがあるため、調理器具の使い分けが重要です。​youtube​

ロードキル防止対策と自動車運転時の注意点

ロードキルを減少させるためには、物理的な対策と運転者の警戒が重要です。動物侵入防止柵(ワイルドフェンス)は、動物が道路に進入するのを防ぐための重要な対策で、特に野生動物の生息地に近い道路で効果的です。発生しやすい時期や時間帯を把握し、適切な対策を講じることでロードキルは減少させることが可能です。
参考)ロードキルを減らすために—人と動物が共存する未来へ

運転中に野生動物と遭遇した場合、急ハンドルは基本的にNGとされています。急ハンドルで回避しようとすると、対向車に衝突したり、ガードレールに激突したりする二次的な事故のリスクが高まるためです。山間部や自然の多いエリアでは速度を落として走行し、動物の飛び出しに備えることが重要です。​
国交省が発表した令和3年度のロードキル処理件数は約51,000件で、タヌキやキツネなどの中型の動物と鳥などの小型動物が大部分を占めています。道路により生息域が分断された場合、通常動物は道路を通行する自動車の危険性を理解できないため、道路建設前と同じように通行して事故に遭います。
参考)https://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn0393_0395pdf/ks039304.pdf