WLTCモード(Worldwide harmonized Light vehicles Test Cycle)は、2018年10月から新型車への表示が義務化された世界統一基準の燃費測定方法です 。この測定方法の最大の特徴は、市街地、郊外、高速道路の3つの走行パターンごとに測定を行い、実際の使用状況に近い条件で燃費を算出することです 。
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測定条件について詳しく見てみると、エンジンが完全に冷えた状態(コールドスタート)から測定を始め、実際の運転に近い動作を再現します 。さらに、運転者や荷物が乗っていることを想定し、実際よりも重い状態で測定するため、より現実的な燃費データが得られます。測定時間は約24分程度で、JC08モードの20分程度と比較してより長時間の測定が行われます 。
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WLTCモードでは、総合燃費に加えて以下の3つの走行環境別の燃費も表示されます。市街地モードは信号や渋滞等の影響を受ける比較的低速な走行を想定し、郊外モードは信号や渋滞等の影響をあまり受けない走行、高速道路モードは高速道路等での走行を想定しています 。
参考)https://www.mlit.go.jp/common/001191356.pdf
JC08モード(Japan Cycle '08)は、2011年4月から本格的に導入され、2018年秋まで使用されていた日本独自の燃費測定基準です 。10・15モードよりも現実の運転状況に近づけるよう改良され、平均速度と最高速度を引き上げた測定方法が採用されていました。
JC08モードの測定条件は、測定時間が約20分程度で、エンジンが冷えた状態での測定も一部(25%程度)導入されていました 。しかし、この測定方法では実燃費との乖離が大きく、実燃費は全車平均でJC08モード燃費より2~3割程度低下すると言われていました 。
参考)https://www.zurich.co.jp/carlife/wltc-mode/
JC08モードでは、10・15モードから約1割ほど数値が低くなる傾向があったものの、それでも実際の走行状況と比べると理想的すぎる条件での測定であったため、消費者が実際に感じる燃費とのギャップが問題視されていました 。
WLTCモードとJC08モードの換算について、一般的な目安として、WLTCモードの数値はJC08モードの約80~90%程度になると言われています 。具体的には、ハイブリッド車では約80~85%、純ガソリン車では約85~90%程度の換算率が適用されます。
実例を見てみると、スズキ「ハスラー」(マイルドハイブリッド)では、JC08モード30.4km/Lに対してWLTCモード25.0km/Lで、換算率は約82.2%でした。一方、スズキ「ジムニー」(純ガソリン)では、JC08モード16.4km/Lに対してWLTCモード14.3km/Lで、換算率は約87.2%となっています 。
この換算率の違いは、ハイブリッド車やアイドリングストップ搭載車の方がJC08モードとWLTCモードでの燃費差が大きいためです 。国土交通省も公式にこの傾向を認めており、車種選びの際にはパワートレインの種類も考慮した換算が必要になります。
カタログに記載される燃費と実際の燃費には必ず差が生じます。カタログ燃費は、メーカーが基準に沿って試験場で測定した理想的な数値であり、実燃費は実際にドライバーが日常的に走行したときの燃費です 。
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この差が生じる主な原因として、エアコン使用やアイドリングの有無、渋滞の有無や坂道の多さ、急加速・急ブレーキなどの運転スタイル、荷物や乗車人数による重量差が挙げられます 。例えば、カタログでは「25km/L」とされている車でも、日常の走行では「18〜20km/L」程度にとどまることがあります。
燃費の計測は「シャシーダイナモメーター」と呼ばれる装置を使用し、あらかじめ計測した走行抵抗を負荷としてかけて行われます 。さらに、計測時の運転は「神の足を持つ」と呼ばれる燃費計測スペシャリストが担当し、素人には真似できない絶妙な運転技術で低燃費を実現します 。
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日本の燃費測定方法は時代とともに大きく変化してきました。最初に採用された10・15モードは、1973年に設定された排出ガス規制の厳格化に伴い導入されました 。10モードは市街地走行を代表するモード、15モードは都市内の高速道路やバイパスの整備進展を反映した高速走行パターンでした 。
参考)https://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=viewamp;serial=1198
10・15モードからJC08モードへの移行時には、換算率として約85%が適用されていました。つまり、10・15モードで30.0km/Lの場合、JC08モードでは25.5km/L程度になることが一般的でした 。この変化により、より実際の走行状況に近い燃費表示が実現されました。
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現在のWLTCモードへの移行により、燃費表示の信頼性はさらに向上しています。近年では、テスト値とカタログ記載値、実燃費との差は従来と比較してかなり小さくなってきており、消費者が実感する燃費との乖離が縮小されています 。数年前の燃費偽装事件の影響もあり、メーカー各社はより保守的で信頼性の高い燃費データの提供を心がけるようになりました 。
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