ツインチャージャーは、ターボチャージャーとスーパーチャージャーという2種類の過給機を1台のエンジンに組み合わせるため、非常に複雑な構造となります。ターボチャージャーは排気管の一部に接続され、冷却と潤滑用のオイル配管が必要です。さらにスーパーチャージャーではクランクシャフトから動力を伝達するベルトやチェーン、電磁クラッチ付きの大型スーパーチャージャーなどが必要となり、搭載スペースもかなり占有されます。
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それぞれで過給された空気を運ぶ吸気管やインタークーラー配管なども2つの過給機の間を入り組んで繋げなくてはならず、かなり複雑な経路となります。その分エンジンは大型化してエンジンルームのスペースを占有するため、年々狭くなっていくエンジンルームにツインチャージャーエンジンを収めるために車両側の部品変更も必要です。エンジンルームのレイアウトが複雑になることは、メンテナンス性の悪化にも直結します。
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システムが複雑でさまざまな追加部品が必要となれば、それだけエンジンの重量は多くなってしまいます。ターボチャージャーもスーパーチャージャーも金属を多用した重たい部品であり、さらに関連部品の重量も上乗せされます。特にツインチャージャーのスーパーチャージャーに使われる電磁クラッチはそれだけでかなり重たいものであり、普通のスーパーチャージャーよりも重くなります。
近年は燃費を向上させるために重量の低減は大きな課題となっており、ツインチャージャーエンジンはそれ自体が燃費に対してデメリットを持ってしまうのです。フォルクスワーゲン ゴルフトゥーランの1.4LツインチャージャーエンジンのJC08モード燃費は15km/Lと、小排気量エンジンとしてはそれほど優れた数値ではありません。車両重量が重くなると燃費は悪化し、長期的な運用コストにも影響を及ぼします。
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複雑なシステムと部品点数の増加は当然ながらコストの増大を招きます。エンジンのコストは部品種類の多さと密接に関係しており、コストダウンを図る時にはできるだけ同じ部品をたくさんの箇所に使えるようにするのが一般的です。しかしツインチャージャーエンジンではそれとは全く逆のことが起こっており、2種類の過給機と関連システムで部品種類は一気に増大しコストも増えてしまいます。
コスト面で言えばターボチャージャーかスーパーチャージャーだけのエンジンには遠く及ばない高さとなっており、性能はよくてもなかなか採用しづらいエンジンです。修理時にはターボユニット交換で20万円から40万円、ターボオーバーホールでも10万円から18万円程度の費用がかかります。さらにスーパーチャージャー関連部品の交換も必要となるため、維持費用は単一過給機のエンジンと比較して大幅に高額となります。
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フォルクスワーゲンのツインチャージャーエンジンでは、特にスーパーチャージャーのマグネットクラッチ付きウォーターポンプの故障が非常に多く発生しています。マグネットクラッチのON/OFFでスーパーチャージャーをコントロールするのですが、実際に持ってみると非常に重たくベアリングに負担が掛かるのはよくわかると整備士も証言しています。壊れるのが当然のような故障率の高さで、エンジンからガラガラ・ゴロゴロ異音がするようになったら早急に点検を受ける必要があります。
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ブーストコントロールバルブの故障も比較的よく起きる故障で、パーツも対策品に変更になっています。走行中に突然チェックランプの警告とともにアクセルの反応が無くなって失速してしまうケースも報告されており、スーパーチャージャーのマグネットクラッチの異常を検出したためフェイルセーフでアクセルを操作しても回転が上がらなくなることがあります。プーリーの破断や冷却水漏れによるオーバーヒートなど、どれも重篤な症状の結末を迎える可能性があります。
参考)VW トゥーラン(1T)マグネットクラッチ付きウォーターポン…
ツインチャージャーのメリットであったターボラグの削減については、ツインチャージャー以外にもさまざまな方法があり、そちらのほうがコストメリットがあり軽量です。デメリットのひとつだったターボラグは、技術の進歩によって気にならなくなりました。より多くの部品を積むためクルマが重くなるだけでなく、生産コストもかさみ、車両重量が重くなると燃費は悪化します。
当のフォルクスワーゲンにしてもツインチャージャーエンジン廃止の方向に向かっており、日本市場では早々にツインチャージャーモデルはなくなりました。最新型のゴルフVIIではツインチャージャーは廃止されターボチャージャーのみとなっています。こうした事情からツインチャージャーが今後増えるとはあまり考えにくく、過給圧の細かな制御が可能になったこと、エンジンの回転上限が低くなっていること、直噴で燃焼の高度な制御が可能になったことなどの理由でターボのほうが優位になったわけです。
フォルクスワーゲンのTSIエンジンに関する情報は、こちらの専門サイトでも詳しく解説されています。
ツインチャージャーとは?搭載車を日本車/外車の車種からそれぞれ紹介!
ツインチャージャーエンジンの複雑な構造とデメリットについては、自動車メディアの解説記事も参考になります。
同じ過給器でもターボばかりでスーパーチャージャーがあまり採用されない理由
フォルクスワーゲン車の具体的な故障事例と修理内容については、整備工場の実例レポートが役立ちます。

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