東京湾口道路とは何か~第二アクアライン構想の全貌と現状

神奈川県横須賀市と千葉県富津市を結ぶ東京湾口道路は、第二のアクアラインとも呼ばれる大規模な海峡横断道路構想です。国道16号の未開通区間を補完し、東京湾環状道路の一部として注目されていますが、実現には多くの課題も。果たしてこの壮大な計画は実現するのでしょうか?

東京湾口道路とは何か~構想概要と現状

東京湾口道路の基本概要
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延長約17km

神奈川県横須賀市から千葉県富津市までの海峡横断道路

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第二アクアライン

東京湾アクアラインに続く2番目の海峡横断道路として構想

♻️
計画再始動

2023年のSNS話題化をきっかけに9年ぶりに建設促進活動が復活

東京湾口道路の基本構想と位置づけ

東京湾口道路(とうきょうわんこうどうろ)とは、浦賀水道を横断して神奈川県横須賀市と千葉県富津市を結ぶ延長約17キロメートルの海峡横断道路構想です 。この道路は「第二のアクアライン」とも呼ばれ、1997年に開通した東京湾アクアラインに続く東京湾の2番目の横断道路として位置づけられています 。
参考)東京湾口道路 - Wikipedia

 

構想の歴史は古く、1959年に産業計画会議が政府に勧告した「NEO-TOKYO PLAN」に盛り込まれた道路計画にまで遡ります 。1962年には調査が開始され、1994年に地域高規格道路の候補路線に指定されるなど、長期にわたって検討が進められてきました 。
参考)もうひとつのアクアライン構想「東京湾口道路」に動きが!

 

東京湾口道路は東京湾アクアライン、第二東京湾岸道路などとともに東京湾を8の字状に結ぶ東京湾環状道路の重要な構成要素として計画されており 、首都圏の交通ネットワークの完成に向けた要の道路と考えられています 。

東京湾口道路による国道16号環状化の意義

東京湾口道路の最も重要な意義は、国道16号の完全な環状化です 。現在の国道16号は、神奈川県横浜市西区を起終点とし、東京都八王子市、埼玉県さいたま市、千葉県を経由して首都圏を環状に結ぶ道路ですが、東京湾の海上区間である富津市から横須賀市までの約17キロメートルが未開通のため、環状が不完全な状態となっています 。
参考)かつて注目された「東京湾口道路」に動きが。もうひとつのアクア…

 

この未開通区間は「国道16号の海上区間」として正式に位置づけられており、東京湾口道路の開通により初めて国道16号が完全な環状道路として機能することになります 。完成すれば、首都圏を一周する約160キロメートルの環状道路ネットワークが実現し、広域的な道路交通の効率化が期待されています 。
参考)http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00011/1986/02-0001.pdf

 

国道16号の環状化により、従来のアクセスルートに加えて新たな交通動線が生まれ、東京湾周辺地域の経済活動や物流効率の大幅な向上が見込まれています 。
参考)房総地域東京湾口道路建設促進期成同盟会 に参加しました。 -…

 

東京湾口道路の建設構造と技術的課題

東京湾口道路の建設構造については、吊り橋または海底トンネルの2つの方式が検討されていますが、現時点では決定されていません 。浦賀水道は東京湾の入口にあたる海峡部で、海上交通の要所であることから、構造決定には慎重な検討が必要とされています 。
参考)東京湾の入口に「橋が欲しい」? フェリーからはhref="https://kuruma-news.jp/post/599707" target="_blank">https://kuruma-news.jp/post/599707quot;震え声href="https://kuruma-news.jp/post/599707" target="_blank">https://kuruma-news.jp/post/599707quot; 市…

 

吊り橋案では、世界最長級の長大橋となる可能性があり、現在建設中のメッシーナ海峡大橋(支間長3,300メートル)に匹敵する規模の橋梁技術が必要とされます 。一方、海底トンネル案では、東京湾アクアラインで培われたシールド工法の技術を活用することになりますが、浦賀水道の地質条件や海底地形への対応が重要な課題となります。
参考)https://www.city.oita.oita.jp/o0169/machizukuri/kotsu/documents/4.pdf

 

富津市では構想実現への期待を込めて、吊り橋をデザインした東京湾口道路のマンホールふたを設置するなど 、地域レベルでの関心の高さを示しています。しかし、実際の構造決定には詳細な地質調査や環境アセスメントが不可欠で、相当な時間を要すると予想されています。

東京湾口道路建設費と経済性の課題

東京湾口道路の建設には、東京湾アクアライン(総工費約1兆1,500億円)に匹敵する莫大な建設費用が見込まれています。延長約17キロメートルという規模から考えると、吊り橋案でも海底トンネル案でも数兆円規模の投資が必要となる可能性が高く 、費用対効果の検証が重要な課題となっています。
参考)第104回国会 参議院 建設委員会 第10号 昭和61年4月…

 

建設費の問題に加えて、完成後の維持管理費も大きな負担となります。東京湾の厳しい海洋環境下での長期間にわたる維持管理は、技術的にも経済的にも大きなチャレンジとなることが予想されます 。
さらに、投資に見合う交通需要の確保も課題です。東京湾アクアラインの例では、開通当初の高額な通行料金により利用が低迷し、後に大幅な料金引き下げが行われた経緯があります 。東京湾口道路についても、適切な料金設定と需要予測が事業の成功を左右する重要な要素となるでしょう。
参考)https://www.hido.or.jp/study/files/pdf/application_06_3.pdf

 

東京湾口道路が東京湾フェリーに与える競合影響

東京湾口道路の実現は、現在運航している東京湾フェリー(久里浜~金谷間)に深刻な影響を与えると予想されています。東京湾フェリーは三浦半島と房総半島を結ぶ唯一の海上交通機関として、1960年代から50年以上にわたり地域の足として機能してきました 。
参考)「アクアラインの利用をお勧め」も!? 窮地の「東京湾フェリー…

 

2023年のSNS話題化の際には、東京湾フェリーの公式アカウントが「みんなフェリーで渡ろうよ…(震え声)」とツイートし、多数の応援コメントが寄せられるなど、フェリー存続への関心の高さが示されました 。現在でも船舶事故による1隻での運航で輸送力が半減し、「3割から4割の収益減」という厳しい経営状況にあります 。
参考)「第二アクアライン」実現へ本腰!? 花火大会にまで“名称復活…

 

東京湾口道路が実現すれば、24時間利用可能で天候に左右されない道路交通により、フェリーの競争力は大幅に低下することが避けられません。しかし、富津市の担当者は「フェリーの代替等の話はまだまだ着手できていない」として 、フェリー事業者との調整や代替案検討の必要性を認識しています。
参考)「第二アクアライン」実現へ本腰!? 花火大会にまで“名称復活…

 

産業観光振興における東京湾口道路の独自視点
東京湾口道路は単なる交通インフラとしてだけでなく、産業観光の新たな拠点としての可能性も秘めています。東京湾アクアラインの「海ほたる」パーキングエリアが年間800万人以上の観光客を集める一大観光スポットとなったように、東京湾口道路にも同様の観光施設を併設することで、房総半島の観光振興に大きく貢献する可能性があります。

 

特に、浦賀水道は江戸時代にペリーが来航した歴史的な海域であり、明治維新の舞台ともなった場所です。この歴史性を活かした観光展示施設や、東京湾の海洋生態系を学べる水族館機能などを組み合わせることで、教育的価値の高い観光拠点として整備することも考えられます。

 

また、建設工程そのものも建設技術の博物館として活用できる可能性があります。世界最大級の海峡横断プロジェクトの建設現場を一般公開し、最新の土木技術や海洋工学技術を間近で見学できる施設とすることで、技術立国日本の魅力発信にもつながるでしょう。

 

房総地域東京湾口道路建設促進期成同盟会は2024年10月29日に設立総会を開催し、「構想の具体化に向けて国等へより一層強く働きかける」ことを宣言しています 。早ければ2025年度予算に前進があるかもしれず、最初のステップとなる「計画段階評価」の動向に注目が集まっています 。
参考)横須賀~房総半島直結!? 第二アクアライン「東京湾口道路」計…

 

建設費や維持管理費、既存の東京湾フェリーとの競合など多くの課題があるものの、SNSから始まった市民の関心と地域経済界の期待を背景に、東京湾口道路構想は新たな段階に入りつつあります。首都圏の交通ネットワークを完成させる最後のピースとして、その実現可能性に今後も注目していく必要があります。