赤外線カメラ透過画像と車の安全性や夜間視認性

赤外線カメラの透過画像について、その仕組みと車載用途での活用方法を解説します。近赤外線と遠赤外線の違いから、車の安全運転支援システムでの実用例まで詳しく紹介。赤外線技術は夜間の視認性向上にどう役立つのでしょうか?

赤外線カメラ透過画像

この記事でわかること
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赤外線カメラの透過原理

可視光線と赤外線の違い、透過撮影の仕組みを科学的に解説

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車載用赤外線カメラの活用

夜間運転の安全性向上に貢献する最新技術の紹介

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フィルターの種類と選び方

近赤外線・遠赤外線フィルターの特性と用途別の使い分け

赤外線カメラ透過画像の仕組みと原理


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赤外線カメラによる透過画像は、可視光線よりも波長が長い赤外線の特性を利用した撮影技術です。人間の目に見える可視光線は紫から赤までの範囲ですが、赤より波長が長くなると赤外線となり、カメラのセンサーで捉えることができます。
参考)赤外線カメラの透過写真で服が透ける?簡単な作り方とは?

赤外線カメラで透過画像が撮影できる原理は、可視光線と赤外線の物質への反応の違いにあります。可視光線は衣服などの表面で反射しますが、波長が長い赤外線は直進性が高く、衣服を透過して肌の表面で反射する特性を持っています。赤外線フィルターは可視光線をカットし、この反射した赤外線だけを透過させるため、透過画像の撮影が可能になるのです。
参考)赤外線カメラで透ける衣服を透過できる原理や仕組みを解説

赤外線カメラによる透過撮影では、真っ黒い赤外線フィルターをレンズに装着します。これによって可視光線をカットし、赤外線だけをカメラのセンサーに反応させることで、通常では見えない情報を画像化できます。太陽光には人間の目には見えない赤外線が含まれているため、晴天時の屋外では特に鮮明な透過画像を得られます。​

赤外線カメラ透過画像に使われるフィルターの種類

赤外線カメラの透過画像撮影に使用されるフィルターには、透過する波長によって複数の種類があります。代表的なものとして、IR-76(760nm)、IR-80(800nm)、IR-85(850nm)などがあり、数字が大きいほど長い波長の赤外線を透過させます。
参考)赤外透過フィルター

レンズ装着型とフィルム型の2つのタイプが存在します。レンズ装着型は「PRO1D R72」などの製品があり、可視光線の波長をカットして赤外線のみを透過させる構造になっています。一方、フィルム型は「IR76」などが有名で、カメラレンズに貼り付けて使用します。​
波長によってフィルターの特性が異なり、IR720は通常のデジタルカメラでも使用可能ですが、IR580やIR850は専門業者による赤外線カットフィルター除去改造が必要です。IR720フィルターは約720nm以下の可視光線をカットし、初心者でも三脚を使用したスローシャッター撮影で赤外線透過画像を撮影できます。IR850フィルターはほぼカラー情報が含まれない赤外線のみを取り込むため、ハイコントラストなモノクロ画像の撮影に適しています。
参考)田村拓也先生寄稿記事:見慣れた風景がまるで異世界に!KANI…

工業用赤外線フィルターの詳細な仕様や種類については、トキナーの公式サイトで確認できます

赤外線カメラ透過画像と車の夜間視認性向上技術

車載用赤外線カメラは、夜間運転の安全性を大幅に向上させる技術として注目されています。遠赤外線(FIR)カメラは物体から放射される遠赤外線を映像化できるため、光源に左右されることなく夜間の遠方撮影や画像認識が可能です。
参考)車載用遠赤外線カメラシステム

車載用途では、遠赤外線カメラ本体は遠赤外線の特性によりフロントガラスを透過しないため、車外のフロントグリルなどに搭載されます。この配置により、ヘッドライトの光が届かない遠方の歩行者も検知でき、自動ブレーキを発動させて事故を未然に防ぐことが可能になります。
参考)FIRカメラ搭載フロントガラスで 夜間の歩行者交通事故ゼロに…

自動運転におけるセンシングデバイスとして、遠赤外線カメラは他のセンサーにはない重要な性能を持っています。完全な暗闇や霧、煙、太陽光やヘッドライトの逆光の影響を受けず、車両のヘッドライトを数倍上回る知覚を実現します。欧州を中心に、NCAP(自動車アセスメント)で夜間歩行者を対象とした自動ブレーキの評価が行われており、ナイトビジョンシステムを積極的に採用する車両が増加しています。
参考)車載量産向け遠赤外線カメラ TURA™

赤外線の種類 波長 車載用途での特徴 主な採用メーカー
近赤外線 700~3000nm 専用ライトで照射し反射光を撮影 トヨタ
遠赤外線 4~1000μm 物体からの放射を直接検知、ライト不要 GM、ホンダ、BMW

車載量産向け遠赤外線カメラTURAの詳細仕様については、コーンズテクノロジーの製品ページで確認できます

赤外線カメラ透過画像撮影における注意点

赤外線カメラで透過画像を撮影する際、カメラのセンサーの種類が重要な要素となります。CCD方式のセンサーはC-MOS方式よりも赤外線によく反応するため、少し古めの機種や安価な機種の方が透過画像撮影に適しています。​
デジタルカメラには通常、センサーの前に赤外線を除去するIRカットフィルターが内蔵されており、通常の撮影では不必要な赤外線の光量を減少させています。このため、透過画像撮影に使用するカメラは、IRカット機能が弱く赤外線感度が高い機種を選ぶことが基本です。​
撮影環境も重要な要因で、太陽光線が強く赤外線成分が豊富な夏の昼間は、透過画像撮影に最適な条件となります。布の色によって透過の度合いが異なり、実験では赤い布が最も鮮明に透過し、白色や黒色でも文字が読める程度に透過することが確認されています。​
⚠️ 重要な法的注意事項。

  • 被写体の承諾なしに赤外線カメラで透過画像を撮影すると法律や条例に抵触する恐れがあります
  • 公共の場での無断撮影は絶対に行わないでください
  • 人物撮影は必ず同意を得た上で行う必要があります

赤外線カメラ透過画像の産業応用と今後の展望

赤外線カメラによる透過画像技術は、車載用途以外にも様々な分野で応用されています。監視カメラなどの防犯用途では、暗所での撮影が可能という特長を活かし、夜間でも鮮明な映像を記録できます。温度を検知できる特性から、設備監視システムや建築物の点検にも利用されています。
参考)赤外線を用いた画像処理を簡単解説!種類・原理・導入事例 - …

考古学や犯罪捜査の分野でも赤外線透過画像技術が活用されています。長期間野ざらしになっていた古文書の場合、肉眼では表面の堆積物で文字が確認できませんが、赤外線カメラを使用すれば堆積層を透過して文字を炙り出すことができます。絵画に隠れた下絵や文字を透視する用途でも利用されています。​
車載分野では、AGCが開発した遠赤外線を透過するフロントガラスが注目を集めています。従来のフロントガラスは可視光を70%以上透過させる透明なガラス材料が使われていますが、新技術により遠赤外線も透過可能となり、車室内からの赤外線カメラ設置が実現できるようになりました。これにより視差の少ない高精度な検知が可能となり、ADASの性能向上に貢献しています。
参考)遠赤外線を透過するAGCのフロントガラス、ADASの性能向上…

📊 車載赤外線カメラの市場動向。

  • 自動運転レベルの向上に伴い、センシング技術として需要が拡大
  • ASIL B準拠の高信頼性製品が量産化段階に到達
  • 640×512の高解像度を提供する小型カメラモジュールが登場
  • シャッターレス設計により24時間365日の安定動作が可能

近赤外線と遠赤外線の使い分けも重要なポイントです。近赤外線は可視光線に近く、テレビやエアコンのリモコンなどに使用されています。一方、遠赤外線は電波に近い性質を持ち、物体から放出される熱を検知するサーモグラフィーに利用されます。車載用途では主に遠赤外線カメラが採用されており、歩行者の体温を検知して夜間でも確実に認識できる利点があります。
参考)近赤外線と遠赤外線の違いとは

赤外線カメラの基礎技術やICカードの透過撮影など、産業応用の詳細は画像処理システムの専門サイトで解説されています
道路インフラでも赤外線カメラの活用が進んでいます。路面点検車に赤外線カメラを搭載することで、舗装の温度差を測定し、従来の目視では確認できなかったアスファルト舗装内部の変状を可視化できるようになりました。公共交通機関では、線路上を歩く人間の存在を検知し、運転手に危険状況を警告するシステムにも赤外線サーマルカメラが使用されています。
参考)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000377.000004762.html

遠赤外線カメラは車室内の乗員検知システムにも応用されています。乗員の肌がカメラ映像中で比較的高輝度(高温)に映るため、乗員の有無の判別や乗員と荷物の判別が容易になります。可視カメラや近赤外線カメラと異なり、太陽光やヘッドライトの影響を受けにくい点が大きな利点です。
参考)https://sei.co.jp/technology/tr/bn174/pdf/sei10566.pdf

赤外線カメラ技術の進化により、ドローン搭載やセキュリティ対策システム、工場での設備監視など、幅広い分野への応用が期待されています。特に自動運転の実現に向けて、複数のセンサーを組み合わせたセンサーフュージョン技術の中核として、赤外線カメラの重要性はさらに高まっていくでしょう。​

 

 


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