旅行時間測定システムとは|仕組み・VICS・メリット・活用法

車での移動時間を正確に知りたいと思ったことはありませんか?旅行時間測定システムは、道路上のカメラでナンバープレートを読み取り、区間の所要時間を計測する技術です。このシステムを使えば渋滞を避けてスムーズに目的地へ到着できますが、一体どんな仕組みなのでしょうか?

旅行時間測定システムとは

📊 旅行時間測定システムの概要
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カメラによる車両撮影

道路上部に設置されたカメラが通過車両を撮影し、ナンバープレート情報を自動読み取り

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旅行時間の自動計測

同一車両が複数地点を通過する時刻差から、区間の所要時間をリアルタイムで算出

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ドライバーへの情報提供

計測データをカーナビやVICSを通じて配信し、目的地までの到達予定時間を提供

旅行時間測定システムの基本概念

旅行時間測定システムは、道路監視を目的としたインフラ設備で、通称「Tシステム」と呼ばれています。道路上部に設置されたカメラが通過する車両を撮影し、ナンバープレート情報を抽出する情報収集装置と、それを解析するシステムで構成されています。このシステムは交通流速の計測を行い、ドライバーに目的地までの到達予定時間などの情報を提供することを主な目的としています。

 

原理的には犯罪車両の追跡に使われる自動車ナンバー自動読取装置(Nシステム)と同じ技術を用いていますが、情報の利用目的が異なります。Tシステムで収集された情報は交通情報提供を主目的としていますが、1999年の警察庁通達により、Nシステムの情報と統合される可能性が明示されており、犯罪捜査にも活用されることがあります。

 

旅行時間測定の仕組みと技術

旅行時間計測端末装置は、道路上部に取り付けられたカメラによって走行する車両を画像処理により自動的に読み取ります。同一車両が複数の計測地点を通過する際の時刻差から、その区間の旅行時間を正確に計測する仕組みです。この技術はAVI(Automatic Vehicle Identifier:車両番号自動読取)装置とも呼ばれ、高精度な交通情報の収集を可能にしています。

 

カメラで撮影された画像からナンバープレートを識別する際には、OCR(光学文字認識)技術が使用されます。認識率は99.5%に達し、時速100km以上で走行する車両でも正確に読み取ることが可能です。大型トラックやバスなど、ナンバープレートの大きさが異なる車両にも対応しており、画像1枚当たり0.025秒という高速処理を実現しています。

 

測定されたデータは5分ごとに更新され、リアルタイムで交通管理センターに送信されます。このデータを基に、各道路区間の旅行時間、渋滞状況、平均速度などが算出され、ドライバーへの情報提供に活用されます。

 

旅行時間測定システムとVICSの関係

旅行時間測定システムで収集されたデータは、VICS(道路交通情報通信システム)を通じてドライバーに提供されます。VICSは、渋滞や交通規制などの道路交通情報をリアルタイムにカーナビゲーションに届けるシステムで、FM多重放送、光ビーコン、電波ビーコンの3つのメディアを使って情報を配信しています。

 

VICSセンターでは、都道府県警察や道路管理者から車両感知器やTシステムなどで収集された交通情報を集約し、編集・処理を行います。これらの情報は「渋滞度」「渋滞長」「旅行時間」として整理され、5分ごとに更新されてカーナビに配信されます。カーナビのメニューから「旅行時間」を選択することで、主要な地点間の所要時間を確認できます。

 

VICSの光ビーコンは、車両側への旅行時間や渋滞情報の提供だけでなく、VICSビーコンユニットを搭載した車両から走行データを収集する双方向通信の役割も担っています。ただし、車上にVICSビーコンユニットが搭載されている車両しかサンプルにできないという制約があり、Tシステムは全車両を対象とした補完的な役割を果たしています。

 

VICS公式サイト - 仕組み:VICSの基本的な動作原理と情報配信の流れを詳しく解説

旅行時間測定システムのメリットとドライバーへの影響

旅行時間測定システムの最大のメリットは、ドライバーに正確な所要時間情報を提供することで、効率的なルート選択を可能にする点です。リアルタイムで更新される旅行時間データにより、渋滞を事前に把握し、代替ルートへの変更を検討できるため、遅刻のリスクを大幅に減らすことができます。

 

このシステムがもたらす具体的な効果として、以下の点が挙げられます。
時間の有効活用:予定より早く到着しすぎて待ち時間が発生することを防ぎ、時間を無駄にしません
燃料費の削減:渋滞を回避することで、無駄なアイドリングや加減速が減少し、燃料消費を抑えられます
ストレスの軽減:到着時間の予測精度が高まることで、運転中の心理的負担が軽減されます
交通流の最適化:多くのドライバーが分散してルート選択することで、特定道路への交通集中が緩和されます
道路管理者にとっても、旅行時間データは交通計画の立案や道路整備の効果測定に不可欠な情報源となっています。渋滞の発生パターンや時間帯別の交通状況を分析することで、信号制御の最適化や新規道路インフラの必要性を科学的に判断できます。

 

旅行時間測定システムとプライバシーへの配慮

旅行時間測定システムは全ての通過車両のナンバープレートを記録するため、プライバシー侵害の可能性について議論されることがあります。システムが収集する情報は基本的にNシステムと同様であり、掲げられた目的は交通情報提供ですが、実際にはTシステムで収集された情報が犯罪捜査に使われた事例も存在します。

 

1999年に発出された警察庁の通達「丁刑企発第165号 自動車ナンバー読取システムとの接続について」によれば、Tシステムで取得した情報とNシステムの情報を統合することが明示されています。つまり、交通情報提供という本来の目的を超えて、個人の移動履歴が追跡される可能性があるということです。

 

一方で、システムが記録するのはナンバープレート情報と通過時刻のみであり、車内の様子や乗員の顔などは撮影対象ではありません。また、赤外線カメラを使用しているため、ドライバーが撮影に気づくことはほとんどありません。交通管理の効率化と個人のプライバシー保護のバランスをどう取るかは、今後も継続的な議論が必要な課題です。

 

Wikipedia - 自動車ナンバー自動読取装置:プライバシー侵害の問題点について詳細に解説

旅行時間測定の将来性と技術革新

旅行時間測定技術は、AI(人工知能)とディープラーニングの進化により、さらなる高精度化が進んでいます。従来の車両感知器やカメラに加えて、コネクテッドカーから収集される車両プローブデータを活用することで、より詳細で正確な交通情報の提供が可能になっています。

 

最新のシステムでは、以下のような技術が導入されています。
🔹 Bluetoothを活用した計測:スマートフォンのMACアドレスを検知することで、一般道路でも低コストで旅行時間を測定できる技術が研究されています
🔹 プローブ渋滞予測:カーナビアプリから収集される走行データを基に、将来の渋滞を予測し、事前に回避ルートを提案するシステムが実用化されています
🔹 区間速度分析:特定の交差点間など、道路区間単位での詳細な分析が可能となり、時間帯別の速度変化を可視化できるようになりました
🔹 クラウド連携:データをクラウドに蓄積することで、サーバー設置が不要となり、初期費用を大幅に削減できるシステムが登場しています
今後は、5G通信の普及により、より大量のデータをリアルタイムで処理できるようになり、センチメートル単位での車両位置把握や、数秒先の交通状況予測が可能になると期待されています。自動運転技術との連携も進み、車両自体が最適なルートを自律的に選択する時代が近づいています。

 

日立評論 - 旅行時間計測・提供システム:システム構成と計測方式の詳細な技術解説