労働安全衛生法照度基準と事務所作業場測定方法

労働安全衛生法で定められた照度基準は、事務所や工場での作業環境を守るための重要なルール。精密な作業には300ルクス以上が必要とされるが、具体的にどのような基準があり、どう測定すればよいのでしょうか?

労働安全衛生法照度基準の概要

労働安全衛生法照度基準と事務所作業場測定方法

📋 労働安全衛生法における照度基準のポイント
事務作業は300ルクス以上

一般的な事務作業では300ルクス以上、付随的な事務作業では150ルクス以上の明るさが必要です

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健康障害防止が目的

照度不足による眼精疲労や不適切な姿勢による上肢障害等を防止するための基準です

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定期点検が義務

照明設備は6ヶ月に1回の定期点検が法律で義務付けられています

労働安全衛生法では、労働者が常時就業する場所の照度について明確な基準を定めています。この基準は、労働者の安全と健康を確保するために事業者が遵守しなければならない最低限の要件となっており、令和3年12月に改正が行われました。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000905329.pdf

改正前は「精密な作業」「普通の作業」「粗な作業」の3区分でしたが、令和4年12月1日から事務所においては「一般的な事務作業」と「付随的な事務作業」の2区分に変更されました。一般的な事務作業については300ルクス以上、付随的な事務作業については150ルクス以上の照度が求められるようになりました。
参考)事務所における照度基準について

厚生労働省のリーフレットによると、この改正は照度不足によって生じる眼精疲労や、文字を読むために不適切な姿勢を続けることによる上肢障害等の健康障害を防止する観点から、すべての事務所に対して適用されます。事務所における高年齢労働者の増加も背景にあり、個々の労働者に視力を眼鏡などで矯正することを促した上で、作業面における照度を適切に確保することが重要とされています。​

労働安全衛生法照度基準の具体的な数値


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労働安全衛生規則第604条では、作業の区分に応じた照度基準が定められています。現行の基準では、精密な作業には300ルクス以上、普通の作業には150ルクス以上、粗な作業には70ルクス以上の照度が必要です。
参考)https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-2/hor1-2-1-3h4-0.htm

事務所衛生基準規則では、事務所特有の作業区分として「一般的な事務作業」に300ルクス以上、「付随的な事務作業」に150ルクス以上という基準が設けられています。付随的な事務作業とは、資料の袋詰め等、文字を読み込んだり資料を細かく識別したりする必要のない作業を指します。
参考)https://www.aience.jp/wp/office-law-amendment/

JIS規格(日本工業規格)Z9110では、さらに詳細な推奨照度が示されており、設計室・製図室では750ルクス、事務室でも750ルクスが推奨されています。これは労働安全衛生法で定める最低基準よりも高い値であり、より快適な作業環境を実現するための目安となります。
参考)工場に必要な照度の基準は?労働安全衛生法とJIS規格の基準の…

厚生労働省リーフレット「職場における労働衛生基準が変わりました」では、照度基準の改正内容と測定方法について詳しく解説されています

照度基準を守らない場合の罰則

労働安全衛生法で定められた照度基準を満たさない場合、事業者には法的な責任が生じます。労働基準監督署から是正勧告を受ける可能性があり、場合によっては罰金などの行政処分の対象となります。
参考)照度測定で現場の安全と生産性を劇的に改善する方法まとめ

労働安全衛生法第3条では、事業者の基本的な責務として、快適な職場環境の形成、労働災害の防止、労働者の安全と健康の確保が明記されています。照度管理は、これらの責務を果たす上で極めて重要な要素となるため、基準を満たしていない事業所は速やかに改善する必要があります。​
罰則の具体的な内容については、労働基準法および労働安全衛生法の関連条項に基づき、違反の程度や悪質性によって判断されます。特に、照度不足が原因で労働者に健康障害が発生した場合には、事業者の責任が厳しく問われることになります。
参考)職場における労働衛生基準の改正

事務所と工場における照度基準の違い

事務所と工場では、作業内容の違いにより求められる照度基準が異なります。事務所では主に書類作業やパソコン作業が中心となるため、一般的な事務作業で300ルクス以上が必要とされます。
参考)https://www.tech-try.com/shoudo/product/kijun.html

工場では、作業内容がさらに多岐にわたるため、より細かい区分が設けられています。精密作業を行う場所では300ルクス以上が必要であり、JIS規格では精密作業の種類によって最大2000ルクスまでの照度が推奨される場合もあります。
参考)https://www.genspark.ai/spark/jis-%E7%85%A7%E5%BA%A6%E5%9F%BA%E6%BA%96/44723568-8d44-4368-9b80-420fe176abdc

労働安全衛生規則では、工場の制御室や電気室などで150ルクスから300ルクス、設計室・製図室では750ルクスから1500ルクスの照度が必要とされています。屋内非常階段や倉庫などの補助的なエリアでは30ルクスから75ルクス程度でも許容されますが、労働者が常時作業を行う場所では必ずより高い照度基準を満たす必要があります。
参考)JIS照度基準についての技術|株式会社 GSユアサ ライティ…

以下の表は、主な作業場所における照度基準をまとめたものです。

 

作業場所 作業内容 労働安全衛生法の最低基準 JIS推奨照度
事務所 一般的な事務作業 300ルクス以上 750ルクス
事務所 付随的な事務作業 150ルクス以上 -
工場 精密作業 300ルクス以上 500~2000ルクス
工場 普通の作業 150ルクス以上 300ルクス
工場 粗な作業 70ルクス以上 150~300ルクス

労働安全衛生法照度と自動車整備作業場の関係

自動車に関わる作業場や整備工場でも、労働安全衛生法の照度基準は厳格に適用されます。自動車整備作業は細かい部品の取り扱いや精密な作業を伴うため、作業内容に応じて適切な照度を確保することが極めて重要です。​
整備作業場では、エンジン点検やブレーキ調整などの精密作業が行われるため、300ルクス以上の照度が必要となります。特に車体の下部や内部など、影になりやすい部分では補助照明を使用して十分な明るさを確保する必要があります。
参考)https://meccs.image-w2.jp/column/92/

自動車整備工場の事務所部分では、一般的な事務作業として書類作成や部品発注などが行われるため、こちらも300ルクス以上の照度が求められます。待合室や休憩室については200ルクスから500ルクス程度が適切とされており、JIS規格に基づいた照明計画を立てることが推奨されます。​
自動車関連の作業場では、作業エリアごとに照度を測定し、基準を満たしているか定期的に確認することが法律で義務付けられています。測定は6ヶ月に1回以上の頻度で実施する必要があり、照度計を使用して作業面の明るさを正確に測ることが求められます。
参考)https://meccs.image-w2.jp/column/92/index.html

労働安全衛生規則第604条(照度)では、作業場における照度基準の詳細が規定されています

照度測定の実施方法と点検義務

労働安全衛生規則および事務所衛生基準規則では、事業者に対して照明設備の定期点検を義務付けています。点検の頻度は6ヶ月以内ごとに1回、定期的に実施しなければなりません。​
照度測定には照度計という専用の測定器を使用します。照度計は、光源によって照らされている面にどれだけの光が到達しているかを測定する機器で、測定値はルクス(lx)という単位で表示されます。​
測定の際は、実際に作業を行う面(机上面や作業台など)で測定することが重要です。オフィス全体が明るくても、パーテーションで区切られた執務スペースや机の手元が暗い場合は基準を満たしていない可能性があるため、作業面での測定が必須となります。​
照度測定の具体的な手順は以下の通りです。

 

  • 照度計を水平に保ち、作業面の高さに設置する
  • 室内の複数箇所(特に最も暗いと思われる場所)で測定する
  • 測定結果を記録し、基準値と比較する
  • 基準を満たしていない場合は照明の増設や配置変更を検討する
  • 測定記録を保管し、次回点検時に参照できるようにする

労働安全衛生法では、採光および照明について「明暗の対照が著しくなく、かつ、まぶしさを生じさせない方法」によることも求められています。これは、十分な明るさを確保するだけでなく、快適な視環境を整えることが重要であることを意味します。
参考)http://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-2/hor1-2-1-3h4-0.htm

照度不足が引き起こす健康障害と対策

照度不足は労働者の健康に深刻な影響を及ぼします。最も一般的な問題は眼精疲労で、暗い環境で作業を続けると目が物をはっきりと見るために余計な努力を要し、目の筋肉に過剰なストレスがかかります。
参考)照明と目の健康:目の疲れを軽減するための照明の最適化

眼精疲労の主な症状には、目の疲れ、かすみ、痛み、充血などがあり、さらに進行すると頭痛や肩こり、集中力の低下を引き起こす可能性があります。特にパソコンやスマートフォンなどのディスプレイを使用する作業では、照度不足による影響が顕著に現れます。
参考)光と眼精疲労 href="https://www.hari-care.jp/%E5%85%89%E3%81%8C%E3%80%8C%E3%81%BE%E3%81%B6%E3%81%97%E3%81%84%E3%80%8D%E3%81%A8%E6%84%9F%E3%81%98%E3%82%8B%E7%97%87%E7%8A%B6%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/" target="_blank">https://www.hari-care.jp/%E5%85%89%E3%81%8C%E3%80%8C%E3%81%BE%E3%81%B6%E3%81%97%E3%81%84%E3%80%8D%E3%81%A8%E6%84%9F%E3%81%98%E3%82%8B%E7%97%87%E7%8A%B6%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/amp;#8211; 眼精疲労治療 難聴めまい肩こり…

照度不足のもう一つの重要な問題は、不適切な姿勢による上肢障害です。暗い環境で書類や画面を見ようとすると、前かがみになったり首を不自然に曲げたりする姿勢になりがちで、これが長期間続くと首や肩、腕に痛みや障害が発生します。​
照度不足による健康障害を防ぐための対策として、以下のような方法が効果的です。

 

  • 照明設備の増設や高効率照明への交換により基準値以上の照度を確保する
  • デスクライトなどの局所照明を活用して作業面の明るさを補う
  • 定期的に照度測定を実施し、照度不足の箇所を早期に発見する
  • 労働者に適切な視力矯正(眼鏡やコンタクトレンズ)を促す
  • 作業姿勢の改善指導を行い、不自然な姿勢での作業を減らす

照明環境の改善は、労働者の健康保護だけでなく、作業効率の向上にもつながります。適切な照度の下では目の疲れが著しく減少し、より長時間の集中が可能になり、作業ミスの減少や生産性の向上も期待できます。
参考)https://www.hrpro.co.jp/series_detail.php?t_no=3020

労働安全衛生法における照度基準は、単なる数値目標ではなく、労働者の健康と安全を守るための重要な基盤となっています。事業者は法令遵守の観点だけでなく、労働者の健康管理と快適な作業環境の提供という観点からも、照度基準を適切に管理することが求められます。
参考)チェックしましたか?「職場における労働衛生基準の変更」 ~照…

独立行政法人労働者健康安全機構では、事務所の照度基準とJIS規格について詳しい情報を提供しています