日産ローレルスピリットは1982年にデビューした「小さな高級車」で、サニーとローレルの中間を埋める車種として誕生しました。カタログには複数のグレードが用意され、2代目B12型では最廉価グレードの「LF」が126万8千円からスタートし、中間グレード「XA」は136万8千円、上級グレード「グランドリミテッド」は148万円という価格設定でした。最上級の1600ツインカムグランドリミテッドは181万9千円と、本家ローレル1800グランドエクストラリミテッドに迫る価格帯となっていました。
参考)日産・ローレルスピリット - Wikipedia
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各グレードでは装備内容が明確に差別化されており、グランドリミテッド系にはパワーウィンドウが標準装備され、タコメーターやリモコンミラーなどの快適装備が充実していました。一方、最廉価のLFグレードでもフードマスコットやフルホイールキャップは標準装備され、外観上はグランドリミテッドとほぼ同等の高級感を保っていました。
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| グレード | 価格(4速AT) | 主な装備 |
|---|---|---|
| LF | 126.8万円 | パワステ、チルトステアリング、ブロンズガラス |
| XA | 136.8万円 | LF装備+タコメーター、FM/AMラジオ |
| グランドリミテッド | 148.0万円 | XA装備+パワーウィンドウ、リモコンミラー |
| 1600ツインカムGL | 181.9万円 | GL装備+ツインカム16バルブエンジン |
ローレルスピリットのカタログには、1.5Lガソリンエンジンを中心とした複数のパワートレインが掲載されていました。基本エンジンのGA15S型は直列4気筒SOHCで、キャブレター仕様が最高出力85ps/6000rpm、最大トルク12.5kgm/3600rpmを発揮しました。上級グレードには電子制御インジェクション仕様のE15E型が搭載され、95ps/12.5kgmの性能を実現していました。
参考)Document moved
最上級グレードには、CA16DE型1.6Lツインカム16バルブエンジンが搭載され、120馬力というクラスを超えた動力性能を発揮しました。初代B11型には高性能なE15ET型ターボエンジンも用意され、115ps/17.0kgmという数値に加えて、わずか800rpmから過給が立ち上がる扱いやすいセッティングが特徴でした。経済性を重視するユーザー向けには、CD17型1.7Lディーゼルエンジンも用意され、グランドリミテッドディーゼルは156万3千円で購入できました。
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ローレルスピリットのカタログで特に注目されるのは、サニーベースでありながら本家ローレルに匹敵する高級装備でした。インテリアにはローレルと同形状のステアリングホイールが採用され、ファインレッドを基調とした内装色や厚みのあるダブルラッセル地のシートが標準装備されていました。全車にパワーステアリング、デュアルシートリフター、チルトステアリングが標準装備され、小柄な女性ドライバーでも快適なドライビングポジションが取れるよう配慮されていました。
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2代目B12型では「グランドリミテッド」に大型ドアアームレストや電動格納式ドアミラー、車速検知式オートドアロックが標準装備されました。さらに上級グレードには、フロントぼかし入りのブロンズガラスや電動ガラスサンルーフ(オプション)が設定され、まさに「小さな高級車」としての性格を際立たせていました。エアコンは全車オプション設定でしたが、トランクスルーやリアセンターアームレストなど、実用性と快適性を両立させる装備も充実していました。youtube
カタログのデザインコンセプトも独特で、ファッション雑誌のような紙面構成となっており、女性ユーザーを強く意識した演出が印象的でした。カタログには一貫して女性モデルのみが登場し、ボディカラーや背景とのトータルコーディネートが施されていました。youtube
ローレルスピリットのカタログを見ると、ベース車のサニーとは明確に差別化された「小さな高級車」としてのアイデンティティが確認できます。外観ではローレルと同じメッキ格子グリルやフードマスコット、2トーンカラーの設定により、サニーとは一線を画す高級感が演出されていました。全長4285mmというコンパクトなボディながら、フロント周りはローレルに準じたデザインで、サニーの面影はほとんど感じられない仕上がりとなっていました。
参考)ローレルスピリット
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価格面でもサニーとは概ね10〜11万円高に設定され、装備内容の充実ぶりを考えると妥当な価格差でした。サニーには設定のある1.3Lエンジンはローレルスピリットには用意されず、1.5L以上のエンジンのみとすることで、性能面でも余裕を持たせていました。足回りも4輪独立懸架を採用するなど、走行性能にも配慮がなされていました。youtube
一部では「飾り立てたサニー」と揶揄されることもありましたが、本家ローレルと同等のステアリングやインテリアデザイン、モケット張りシートの採用など、明らかにベースのサニーとは別格の高級車として開発されていたことがカタログからも読み取れます。
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現在、ローレルスピリットのカタログモデルは希少な旧車として扱われており、中古車市場での流通はきわめて限定的です。1982年から1990年まで生産された本モデルは、すでに生産終了から30年以上が経過しており、程度の良い個体を見つけることは困難となっています。当時の新車価格が126万円から181万円という価格帯でしたが、現在の中古車相場は車両の状態や走行距離によって大きく変動します。
参考)ローレルスピリット(日産)の中古車一覧|中古車の【ネクステー…
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ユーザーの評価を見ると、総合評価は2.7点(5点満点)と控えめですが、外観デザイン、走行性能、乗り心地については3.0点と平均的な評価を得ています。燃費・経済性や装備面では2.0点とやや厳しい評価となっていますが、これは30年以上前の車両としては避けられない側面と言えるでしょう。
参考)https://www.goo-net.com/catalog/NISSAN/LAUREL_SPIRIT/car_review/
「小さな高級車」というコンセプトは当時としては先進的でしたが、市場での受け入れは限定的で、珍車扱いされることも多かったのが実情です。しかし、そのスピリットは現在のノート・メダリストなど、コンパクトでありながら上質な仕上げを施した日産車に受け継がれていると指摘する声もあります。カタログコレクターの間では、特に女性向けにファッション雑誌風に制作されたB12型のカタログが人気を集めており、メルカリなどのフリマアプリでも取引されています。
日産ローレルスピリットのカタログ情報(楽天Car)- 新型・歴代モデル・グレード情報が確認できます
ローレルスピリット解説(名車文化研究所)- サニーベースの小さな高級車の詳細な歴史が紹介されています