パワーステアリング(パワステ)は、現代の自動車において軽い力でハンドル操作を可能にする重要な装置です。このシステムには主に油圧式と電動式の2種類があり、それぞれ異なる仕組みと特徴を持っています。かつては油圧式が主流でしたが、2000年代以降は電動式が急速に普及し、現在では多くの車両に採用されています。
参考)パワステの電動式と油圧式の違いとは?
パワステがない「重ステ」の車両では、停車時のハンドル操作に相当な体力が必要となり、特に駐車時には大変な労力を要します。パワステの登場により、力の弱いドライバーでも快適に運転できるようになりました。
参考)パワステ(パワーステアリング)の油圧式と電動式の違いとは?│…

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油圧式パワステは1920年代から開発が始まり、第二次世界大戦で軍用車に普及した後、乗用車にも広く採用された歴史ある技術です。仕組みとしては、エンジンの動力でベルトを介して油圧ポンプを駆動し、パワーステアリングフルード(オイル)に圧力を発生させます。
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この油圧は、動力装置、作動装置、制御装置の3つの主要部分で構成される倍力機構によって機械的な力に変換されます。動力装置にはフローコントロールバルブやプレッシャリリーフバルブが含まれ、作動装置ではパワーシリンダーとパワーピストンが油圧を機械的な力に変換します。制御装置のコントロールバルブがハンドル操作に応じて油路を開閉し、アシスト力を調整します。
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油圧式の最大の特徴は、エンジン始動中は常に油圧ポンプが作動し続けることです。これによりいつでもハンドル操作に対応できる準備が整っていますが、同時に燃費に3〜5%程度の悪影響を与えるという欠点があります。
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電動パワステは2000年代に入ってから普及した比較的新しい技術で、ステアリングラックやピニオンギアを電気モーターで直接アシストする仕組みです。エンジンの動力を使わないため、ハンドル操作時にエンジン回転数が変化せず、燃費性能が向上します。
電動式の構成部品はモーターと制御用のECU(電子制御ユニット)が中心で、油圧ポンプやチューブ、パワーステアリングフルードが不要なため省スペース化が可能です。また、車種間での部品共有化を進めやすく、製造コストの面でもメリットがあります。
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速度に応じてアシスト力を変化させる制御が可能なのも電動式の大きな特徴です。低速時はハンドルを軽くして駐車を楽にし、高速走行時はハンドルを重くして安定性を高めるといった細かな制御が実現できます。初期の電動パワステは操舵フィーリングに違和感があると指摘されていましたが、近年の技術進化により、その問題はほぼ解消されています。
電動油圧式電子制御パワーステアリングは、油圧式と電動式の両方の利点を併せ持つシステムです。日産フーガなどの一部車両に採用されていました。
このシステムでは、エンジンではなく電動モーターで油圧ポンプを駆動します。ステアリング操作があったときだけ電動ポンプが作動して油圧を発生させるため、従来の油圧式よりも燃費性能が優れています。同時に油圧式特有の自然な操舵フィールと電動式の緻密な制御を両立できる点が特徴です。
ただし、油圧系統と電気系統の両方を備えるため構造が複雑になり、オイル漏れと電気的な不具合の両方のリスクを抱えるというデメリットもあります。現在では純粋な電動式の性能向上により、このタイプのパワステは減少傾向にあります。
油圧式パワステのメリットは、長い歴史により技術が確立されており信頼性が高いことです。出力が大きいため重量級の大型車やトラックにも対応でき、ステアリングフィールが自然で違和感が少ない点も評価されています。基本的な構成部品が少なく、シンプルな構造であることも長所の一つです。
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一方でデメリットとしては、エンジン始動中は常に油圧ポンプが作動するため燃費に悪影響を及ぼします。パワーステアリングフルードの劣化によるメンテナンス負担があり、経年劣化によるオイル漏れのリスクも存在します。エンジン回転数と油圧が比例するため、アイドリング時や低速時には十分なアシストが得られないことがあります。
参考)油圧式パワーステアリングのメリットとデメリット
さらに、アイドリングストップ機能との相性が悪く、エンジン停止時にはステアリングアシストがゼロになってしまいます。レーンキープアシストや自動運転などの先進的な運転支援システムにも対応できないという課題があります。
電動パワステの最大のメリットは燃費性能の向上です。油圧式と比較して3〜5%の燃費改善が期待でき、エンジンの動力を使わないため環境にも優しい特性があります。電流のオン・オフで制御できるため、車速やドライブモードに応じて操舵力を細かく調整でき、低速時は軽快に、高速時は安定したハンドリングを実現できます。
参考)https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/1604/15/news039.html
省スペース化が可能で、油圧ポンプやチューブが不要なため車両レイアウトの自由度が高まります。パーキングアシストやレーンキープアシストなどの高度な運転支援システムにも対応でき、将来の自動運転技術への発展性もあります。
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デメリットとしては、油圧式に比べて初期コストが高い傾向があります。モーター保護回路が作動するとハンドルが突然重くなることがあり、大電流を使用するため大容量のバッテリーやオルタネータが必要になります。また、大型トラックやバスなど非常に大きな操舵力を必要とする車両では、油圧式の方が有利な場合があります。故障時の修理費用が高額になる可能性も考慮すべき点です。
油圧式パワステでは、パワーステアリングフルードの定期的な交換が必須です。一般的な交換目安は3〜5年または走行距離4〜5万kmごとで、カーブや高低差が多い道を頻繁に走行する場合はより短い間隔での交換が推奨されます。
参考)パワステオイルの交換目安と交換しないと起きるトラブルとは?
フルードを交換しないと、ハンドルが重くなり操作性が悪化します。劣化したフルードではパワステポンプに負担がかかり、「ウィーン」「ゴーッ」といった異音が発生することもあります。最悪の場合、パワステポンプやパワステラックの故障につながり、高額な修理費用が必要となります。
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油圧系統からのオイル漏れは特に注意が必要なトラブルです。ホースの劣化やシールの損傷によりフルードが漏れると油圧が下がり、ハンドル操作が困難になります。漏れたフルードが他の部品に悪影響を及ぼす可能性もあるため、異音などの兆候が出た際は速やかに修理する必要があります。
電動パワステはオイルレスシステムのため、フルード交換の必要がなく、メンテナンス負担が大幅に軽減されます。ただし、モーターやECUなどの電気系統の故障が発生した場合、修理費用が高額になる傾向があります。長期使用によるモーターの劣化や、電子部品の故障リスクも考慮する必要があります。
パワステには意外な故障原因も存在します。油圧式では、冬場の低温時にフルードの粘度が上がり、一時的にアシスト力が低下することがあります。また、エアが混入すると操舵フィーリングが不安定になるため、フルード交換時のエア抜き作業が重要です。電動式では、高温環境下での長時間使用によりモーター保護機能が作動し、アシスト力が急に低下することがあります。
パワステオイルの交換時期と点検方法の詳細
パワステ故障時の対処法と修理費用の目安
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