救助工作車 I型は、主に2~3トンクラスのトラックシャーシをベースにした小型の救助工作車です。かつては小規模な自治体が運用することが多かったのですが、近年はI型を配備する自治体は減少傾向にあります。その理由として、I型は国庫補助が受けられないことが挙げられます。また、近年では救助専任ではなく、消火活動も行う兼任救助隊が使用する車両に救助資機材を積載して運用する自治体が増えています。
しかし、例外的にI型が活躍する地域があります。道路の幅が狭い地域や建物が密集した市街地、山間部などを管轄する消防署では、あえてI型を配備しています。小型であることを活かし、アクセスの悪い現場でも迅速に到着できるというメリットがあるためです。特に離島や山岳地帯を抱える自治体では、I型の機動性が重視されています。
救助工作車 II型は、最も普及している種類で、主に5~7トンクラスのトラックシャーシをベースにしています。全国の消防本部で最も多く採用されており、クレーンと照明装置を装備した車両が一般的です。II型の特徴は、地域の特性に応じた多様な仕様が存在することです。
消火も行える装備を備えた車両もあれば、水難救助用の資機材を充実させた車両、山岳救助に特化した車両など、地域ニーズに合わせたカスタマイズが行われています。近年はハイルーフ化が進み、屋根を高くして車内で救助資機材の着装などを楽に行えるスペースを確保した車両が一般的になっています。さらに、シングルキャブをマイクロバスのように改造した「バス型」と呼ばれる車両の導入が増えており、隊員が広い後部スペースで装備の準備ができるようになっています。
興味深いことに、見た目がII型であっても、省令上の救助資機材や装備を満たさない場合はI型に扱われたり、ポンプ車に分類されたりすることもあります。これは消防車両の分類がサイズだけでなく、積載装備によっても決定されることを示しています。
救助工作車 III型は、阪神・淡路大震災の教訓から設定された震災対応救助車両です。主に東京都と政令指定都市に設置されている特別高度救助隊、および中核市に配備されている高度救助隊が運用しています。II型をベースに、7~10トンクラスのトラックシャーシ(4WD)に架装され、より高度な救助資機材を搭載できるように設計されています。
III型に搭載される高度救助資機材には、電磁波人命探査装置(レーダー)やボーカメ(瓦礫内部確認用カメラ)が含まれます。また、現場の状況をモニターで即座に探査できる装置、地中の音で現場の様子を探査できる地中音響探知機、夜間でも明るい画像をキャッチできる熱画像直視装置(サーモカメラ)なども搭載されています。これらの装置により、倒壊建物や瓦礫の中に閉じ込められた人命の探索が格段に向上しました。
当初、悪路に対応するため除雪車やウニモグをベースにした超高床型の車両も存在していましたが、通常の市街地での取り回しが悪いという理由から、現在では高床型や低床型への移行が進んでいます。クレーンを装備していない、基本シャーシが2WDである、または高度救助資機材を搭載していない場合は、III型の要件を満たさないためII型に分類されます。
救助工作車 IV型も阪神・淡路大震災後に登場した震災用救助車両で、III型と異なる大きな特徴があります。IV型は大規模災害派遣時に航空自衛隊のC-130輸送機またはC-2輸送機で空輸されることを前提としており、コンパクトボディが特徴です。通常2台一組で運用されます。
平成8年には、東京消防庁、大阪市消防局、名古屋市消防局、福岡市消防局に無償配備されました。初代の車両はトヨタ・スーパーダイナの2トンシャーシをベースにし、足回りはメガクルーザーの4駆メカニズムを採用していました。その後、各消防局で更新が進み、大阪市消防局は日野・デュトロ4WDベース、東京消防庁はいすゞ・エルフベースに更新されています。
IV型の活躍は、近年の大規模災害でも実績が示されています。2018年9月の北海道胆振東部地震では、横浜市消防局の大規模震災用高度救助車がC-2輸送機で被災地へ派遣されました。また2024年1月の能登半島地震では、東京消防庁のハイパーレスキュー(消防救助機動部隊)のIV型が活躍するなど、全国的な大規模災害対応の中核として機能しています。
救助工作車には、様々な救助資機材が搭載されています。その中でも特に重要なのが、フロント・リアの両側に装備されるウインチです。フロント用の油圧式ウインチは、交通事故現場で車両を固定したり、けん引する際に使用されます。リアには電動式ウインチが装備され、ワイヤー全長が60メートル(有効長45メートル)に及ぶものもあります。リモコンでの遠隔操作が可能で、危険な状況での安全な作業を実現しています。
クレーン装置は、重量物の移動や交通事故での車体引き起こしに威力を発揮します。2.9トン吊の4段ブームを装備した車両では、最大地上揚程が約10メートルに達し、無線リモコンでも操作が可能です。照明装置は、地上高6メートルまで伸長でき、夜間活動を支える重要な装備です。上向きに180度、旋回も左右ともに180度使用でき、左右を別々に動かすこともできます。
油圧救助器具(スプレッダー・カッター)は、交通事故の救助で最も使用される装備です。30メートルのホースリール接続で即座に使用でき、車体の切断や重量物の持ち上げなど、多様な救助活動に対応します。その他、マット型空気ジャッキ、切断器具、発動発電機、投光機、破壊器具なども積載されており、あらゆる救助シーンに対応できるようになっています。
参考情報:救助工作車の装備詳細と運用方法について
Wikipedia「救助工作車」ページでは、各型式の詳細仕様と全国各消防本部での運用事例が詳しく記載されており、II型とIII型の仕様上の区別、IV型の大規模災害派遣実績などが確認できます
参考情報:消防車両の装備と機能
ホームメイト「消防車両紹介」では、救助工作車の各種装備の役割と、地域特性に応じた運用方法について、図解を交えて説明されています
参考情報:実際の救助工作車の装備品紹介
座間市消防局の「救助工作車装備品紹介」では、熱画像直視装置、レシプロソー、ハリガンツール、各種ウインチ・クレーン装置など、実装されている具体的な機器の説明が詳細に記載されています
各自治体が救助工作車を選定する際には、その地域の地形や規模、特性を考慮した機種選択が行われます。道路が狭く密集した市街地ではI型やコンパクト設計のII型が選ばれ、広大な平坦地ではII型やII型バス型が採用されています。山間部や島しょ地域ではIV型やオフロード性能の高い3型が配備されることもあります。
また、政令指定都市であり、航空機の離着陸が可能な空港などの施設がある自治体では、IV型を保有する傾向があります。大阪市消防局は特に狭隘な地区が多いという地域特性から、救助工作車をほぼすべてIV型に更新するという、全国でも珍しい選択をしています。このように、各消防本部は地域に最適な車両配備を行うことで、より効率的な救助活動を実現しています。
近年注目すべき傾向として、ハイルーフ化やバス型の導入が増えていることが挙げられます。これは隊員が車内で充分な準備ができる環境を整えることで、現場到着後の対応時間を短縮し、救助精度を高めるという考え方に基づいています。あなたが車を運転していて見かけた救助工作車も、その地域のニーズに合わせて最適化された装備で活動しているのです。
それでは、「関釜フェリー 料金」に関するブログ記事を作成いたします。