自動車を所有するドライバーにとって、年収に応じた税負担の理解は家計管理の基本です。所得税と住民税は年収が増えるにつれて税率が上昇する累進課税制度を採用しており、年収のレンジによって手取り額が大きく変わります。
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日本の所得税率は5%から45%まで7段階に分かれており、課税所得金額が増えるほど税率が高くなる仕組みです。加えて住民税は一律10%が課税されるため、所得税と合わせると最大で55%の税負担となります。
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自動車を持つドライバーの場合、税金だけでなく車両維持費も考慮する必要があります。軽自動車で年間約25万円、普通車で年間約30万~35万円の維持費がかかるため、手取り額からこれらの支出を差し引いた実質的な可処分所得を把握することが重要です。
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税負担を年収別に比較することで、自分がどの収入レンジにいるのか、また今後の収入増加によってどの程度税金が増えるのかを予測できます。特に転職や昇給を検討している方は、年収アップによる税負担の変化を事前に知っておくと、より現実的な生活設計が可能になります。
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所得税の税率は課税所得金額によって決まります。課税所得金額とは、年収から給与所得控除、社会保険料控除、基礎控除などの各種控除を差し引いた金額です。
所得税の税率は以下の7段階に分かれています。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円~194万9,000円 | 5% | 0円 |
195万円~329万9,000円 | 10% | 9万7,500円 |
330万円~694万9,000円 | 20% | 42万7,500円 |
695万円~899万9,000円 | 23% | 63万6,000円 |
900万円~1,799万9,000円 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円~3,999万9,000円 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
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注目すべきは、税率が10%から20%に上がる境目(課税所得330万円)と、20%から23%に上がる境目(課税所得695万円)です。特に10%から20%への変化は税負担が2倍になるため、家計への影響が大きくなります。
会社員の場合、年収から給与所得控除を差し引いた金額が所得金額となります。例えば年収600万円の方の給与所得控除額は164万円(600万円×20%+44万円)となり、所得金額は436万円です。ここから社会保険料控除や基礎控除48万円を差し引いた金額が課税所得金額となります。
ドライバーにとって重要なのは、自動車保険料は所得控除の対象外という点です。生命保険料や地震保険料は控除対象となりますが、自動車保険料は年末調整でも確定申告でも控除できません。
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住民税は所得税とは異なる計算方法を採用しています。住民税は所得割と均等割の2つで構成され、所得割の税率は一律10%です。
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住民税の計算式は以下の通りです。
住民税額 = 所得割(課税所得金額 × 10% - 税額控除額)+ 均等割(5,000円)
住民税を計算する際の注意点は、所得税と控除額が異なる点です。最も大きな違いは基礎控除額で、所得税の基礎控除が48万円であるのに対し、住民税の基礎控除は43万円と5万円少なくなっています。
その他の控除額の違いは以下の通りです。
所得控除 | 住民税 | 所得税 |
---|---|---|
基礎控除(限度額) | 43万円 | 48万円 |
生命保険料控除(限度額) | 7万円 | 12万円 |
地震保険料控除(限度額) | 2万5,000円 | 5万円 |
扶養控除 | 33万円 | 38万円 |
特定扶養控除 | 45万円 | 63万円 |
例えば年収1,000万円の方の場合、所得金額は805万円(給与所得控除195万円)となり、社会保険料控除123万円と基礎控除43万円を差し引くと、課税所得金額は639万円です。これに10%を乗じて63万9,000円が所得割となり、均等割5,000円を加えた64万4,000円が住民税額となります。
住民税は前年の所得に対して課税されるため、転職や退職をした場合でも前年の収入に基づいて翌年の住民税が請求される点に注意が必要です。
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自動車を所有している方は、住民税とは別に自動車税(軽自動車税)も納める必要があります。普通車の場合は年間約3万~10万円、軽自動車は年間約1万円が課税されます。
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年収から実際に手元に残る手取り額は、所得税、住民税、社会保険料を差し引いた金額です。自動車を所有するドライバーは、さらに車両維持費も考慮する必要があります。
年収別の手取り額と税金・社会保険料の内訳は以下の通りです(独身・扶養家族なし・基礎控除のみの場合)。
年収 | 手取り額 | 社会保険料 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|---|---|
300万円 | 約236万円 | 約48万円 | 約5.4万円 | 約11万円 |
400万円 | 約312万円 | 約62万円 | 約8.5万円 | 約17万円 |
500万円 | 約387万円 | 約75万円 | 約14万円 | 約24万円 |
600万円 | 約458万円 | 約92万円 | 約20万円 | 約30万円 |
700万円 | 約524万円 | 約108万円 | 約31万円 | 約37万円 |
800万円 | 約590万円 | 約118万円 | 約47万円 | 約45万円 |
1,000万円 | 約722万円 | 約129万円 | 約85万円 | 約64万円 |
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年収400万円未満の方の場合、手取りは約20万円台前半となります。車の購入予算は年収の半分までが目安とされているため、年収400万円未満の方は200万円以内の車両を選ぶのが適切です。
参考)車を買うなら年収の何割がいい?予算別に購入できる車種を紹介
年収500万円の方は月々の手取りが30万円台前半となり、独身や共働き世帯では生活にゆとりを感じられるレベルです。ただし子育て世帯の場合は、育児費用や住宅ローンの返済で金銭的な余裕が少なくなる可能性があります。
年収1,000万円を超えると手取りは700万円程度となり、所得税率が33%に上昇するため税負担が一気に重くなります。収入の約3分の1が税金と社会保険料に消えることになるため、見た目の年収ほど手元に残らない点に注意が必要です。
手取り20万円の方が車を所有する場合、税金や社会保険料を含めた月収は約24万円で、年収は約290万~360万円となります。車の購入予算は約145万~180万円、ローンの借入上限額は約90万~145万円が目安です。
税負担の観点から最も効率的な年収レンジは、年収600万円から700万円です。この年収帯では所得税率が20%から23%へと緩やかに上昇するだけで、税負担の増加が比較的少ないのが特徴です。
課税所得330万円を境に所得税率が10%から20%に倍増するため、この境目を超えると税負担が急激に増加します。年収で換算すると約640万円前後がこの境目に該当し、配偶者控除や扶養控除などの各種所得控除を考慮すると、年収600万円~700万円程度が税金的に最も効率的なレンジとなります。
一方、年収900万円を超えると所得税率は33%に上昇し、年収2,000万円では40%、年収4,000万円では45%となります。収入の半分近くが税金の支払いに消えてしまうため、高年収になるほど税負担率が高くなる仕組みです。
独身世帯の場合、年収695万円が損得の境目となります。年収694万9,000円までの税率は20%、年収695万円以上の税率は23%となり、わずか3%の違いしかありません。独身世帯は扶養家族や配偶者がいる世帯と比べて公的支援が少ないため、所得税や住民税を抑えられる年収695万円程度を目指すのが効率的です。
共働き世帯(子どもなし)の場合、配偶者の年収が103万円以下であれば38万円の配偶者控除を利用できます。世帯収入を夫婦で半分ずつ稼ぐよりも、どちらかの収入を抑えた方が税金的には負担が少なくなります。現実的な世帯年収としては700万円をやや下回るくらいが理想的です。
夫が仕事をして専業主婦と子ども2名を養う世帯では、年収600万円が最も税金で得する年収となります。この年収レンジでは配偶者控除・扶養控除を活用でき、児童手当の所得制限もかからないため、公的支援や各種控除をフル活用できます。
自動車を所有するドライバーの場合、手取り額から車両維持費を差し引いた実質的な可処分所得を考慮する必要があります。年収600万円の手取り額は約458万円ですが、ここから軽自動車の維持費約25万円を差し引くと、実質的な可処分所得は約433万円となります。
参考)車種別自動車の維持費
給与から天引きされるのは税金だけでなく、社会保険料も大きな負担となります。社会保険料は健康保険料、介護保険料(40歳以上)、厚生年金保険料、雇用保険料の4つで構成されます。
参考)個人住民税は社会保険料に含まれる?給与から引かれる税金をおさ…
社会保険料の計算方法は税金とは異なり、標準報酬月額に保険料率を乗じて算出します。健康保険料率は加入している健康保険組合や地域によって異なりますが、厚生年金保険料率は一律18.3%です。
年収別の社会保険料の概算は以下の通りです。
📌 年収760万円以下:年収額 × 約15%
📌 年収770万円~1,650万円:健康保険料(年収 × 約5.79%)+ 厚生年金保険料(約71万円)
📌 年収1,700万円以上:一律約168万円
例えば年収600万円の方の場合、社会保険料は約90万円(600万円×15%)となります。これに所得税約20万円と住民税約30万円を加えると、年間で約140万円が税金と社会保険料として天引きされることになります。
注意すべき点は、通勤手当の扱いです。所得税には非課税限度額(月15万円まで)が設けられており、一定額までの交通費は課税の対象外です。しかし社会保険料を計算する際は、交通費を全額含める必要があります。
参考)交通費は社会保険料の計算に含まれるのか|所得税における取り扱…
例えば基本給が30万円で通勤手当が3万円の場合、所得税の計算では30万円を基準としますが、社会保険料の計算では33万円を基準とします。このため通勤手当が多い方は、社会保険料の負担が大きくなる傾向があります。
自動車通勤をしている方の場合、通勤距離に応じた非課税限度額があります。片道2km以上10km未満で月4,200円、片道10km以上15km未満で月7,100円が非課税となりますが、この金額も社会保険料の計算には含まれます。
参考)通勤手当は非課税なのに、社会保険料対象なのはなぜ?
年収が増えるほど社会保険料の負担も増加しますが、厚生年金保険料には上限があるため、年収1,700万円以上では社会保険料が一律約168万円に固定されます。このため超高年収の方は、社会保険料率の面では相対的に負担が軽くなります。
自動車を所有するドライバーにとって、社会保険料は税金と同様に避けられない固定費です。年収から税金と社会保険料を差し引いた手取り額を正確に把握し、その中から車両維持費を賄える余裕があるかを確認することが重要です。
辻・本郷税理士法人の年収別税金早見表
年収200万円から1億円までの詳細な税金額と手取り額を確認できる参考資料です。
国税庁:所得税の税率
所得税の税率と控除額について、国税庁の公式情報で正確な数値を確認できます。