火事じゃないのに消防車と救急車が来る理由とPA連携の仕組み

救急車を呼んだのに消防車も一緒に来て驚いた経験はありませんか?火事でもないのに消防車が出動する理由には、PA連携という重要な仕組みがあります。その背景にはどのような事情があるのでしょうか?

火事じゃないのに消防車と救急車が出動する理由

PA連携の基本概要
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PA連携とは

ポンプ車(P)と救急車(A)が連携して出動する仕組み

迅速な対応

救急隊だけでは対応困難な場合に消防隊が支援

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救命率向上

より多くの人員で確実な救護処置を実施

火事じゃないのに消防車が出動するPA連携システム

救急車を呼んだのに消防車が先に到着したり、一緒に来たりする現象は「PA連携」と呼ばれる仕組みによるものです。Pは消防ポンプ車(Pumper)、Aは救急車(Ambulance)を意味し、救急出動要請に対して救急車と消防車が連携して出動するシステムです。

 

この仕組みは、救急需要の増加という深刻な背景があります。平成27年版消防白書によると、全国の出火件数は2005年の5万7460件から2014年の4万3741件に減少した一方で、救急車の出動件数は527万7936件から598万4921件に大幅に増加しています。

 

さらに問題なのは、救急車を呼んでから現場に到着するまでの時間が6.5分から8.6分に延びていることです。この状況を改善するため、一部の消防本部がPA連携を導入し、より迅速で確実な救急活動を実現しています。

 

火事以外で消防車が出動する具体的なケース

消防車が火事以外で出動するケースは多岐にわたります。主な出動理由は以下の通りです。
重篤な傷病者への対応

  • 心肺停止または重症と思われる傷病者の救護
  • 意識がない状態など直接命に関わる状況
  • 救急隊3人では人手が足りない救命処置

現場の安全確保

  • 交通量の激しい場所での傷病者や救急隊員の安全確保
  • 交通事故現場での援護活動
  • イベント会場など通常の救急隊だけでは対応困難な場所

救急車の不足対応

  • 近くの救急車が出動中で到着が遅れる場合
  • 救急要請が重複した際の代替出動
  • 救急車が遠方の現場に出動している間の緊急対応

東京消防庁の2015年データでは、救急出動件数75万9802件のうち、PA連携は20.6%にあたる15万6260件を占めており、この数字は近年横ばいで推移しています。

 

火事じゃないのに消防車のサイレン音が異なる理由

消防車のサイレン音には明確な使い分けがあり、火事かどうかを音で判別することができます。

 

火災出動時のサイレン

  • 「ウ~、ウ~、ウ~」のサイレン音
  • 「カン、カン、カン」の3点鐘(警鐘)
  • 両方を同時に鳴らして火災発生を周辺住民や消防団に知らせる

火災以外の出動時のサイレン

  • 「ウ~、ウ~、ウ~」のサイレン音のみ
  • 警鐘は鳴らさない
  • 救急支援、救助、警戒などの活動を示す

鎮火後の帰還時

  • 「カ~ン、カ~ン」の2点鐘のみ
  • サイレンは鳴らさない
  • 鎮火完了を地域住民に知らせる意味

この音の使い分けは、消防法と道路運送車両法によってそれぞれ規定されており、緊急車両が多数出動する大規模災害時には「消防車が来た」ことを明確に伝える重要な役割を果たしています。

 

火事じゃないのに複数台の消防車が出動する特殊事例

時として、火事でもないのに消防車が複数台出動するケースがあります。これらの特殊事例には以下のような理由があります。
大規模救助活動

  • 建物倒壊や土砂災害での救出作業
  • 高所からの救助活動
  • 水難事故での捜索救助活動

化学物質事故対応

  • 有毒ガス漏れ事故
  • 化学工場での事故対応
  • 放射性物質関連の事故

自然災害対応

  • 台風や暴風雨での緊急出動
  • 沖縄などの台風直撃地域では、暴風下での救急要請に対して消防車が風よけの役割を果たすことがある
  • 地震による建物損壊の安全確認

特殊車両の必要性

  • 重量のある消防車は転倒しにくく、悪天候時の安定性が高い
  • 大型車体により傷病者の搬送時に風よけとして機能
  • 多様な救助資機材を搭載している

これらの特殊事例では、救急車だけでは対応できない状況に対して、消防車の持つ特殊な機能や装備が必要となります。

 

火事じゃないのに消防車出動時の住民への影響と理解

PA連携による消防車の出動は、地域住民にとって時として混乱を招くことがあります。しかし、この仕組みを理解することで、適切な対応と協力が可能になります。

 

住民が感じる疑問と不安

  • 「火事でもないのになぜ消防車が?」という疑問
  • サイレン音による騒音への懸念
  • 緊急事態の規模に対する不安

理解すべきポイント

  • PA連携は救命率向上のための重要な取り組み
  • 消防隊員も救急技術の知識を持ち、AEDや応急処置資機材を携行
  • 救急隊員と同じ資格を持った消防隊員が出動している

住民の協力事項

  • 緊急車両の通行の妨げにならないよう道路を空ける
  • サイレン音は一時的なものとして理解する
  • 現場周辺での野次馬行為を控える

消防本部では、このような住民の疑問に対して積極的な広報活動を行っており、PA連携の意義と必要性について理解を求めています。救急車を呼んだのに消防車が来ても驚かず、迅速な救命活動のための重要な仕組みとして受け入れることが大切です。

 

また、ドクターヘリや消防防災ヘリの運用時にも消防車が出動することがあり、これらの航空機との連携による高度な救急医療体制の一環として機能しています。地域住民の理解と協力により、より効果的な救急救命活動が実現されているのです。