自動車排出ガス規制識別記号とステッカーの見方

車検証に記載された識別記号は、車の排出ガス規制の適合状況を示す重要な情報です。3桁の記号それぞれが持つ意味や、ステッカーから確認できる環境性能について詳しく解説します。あなたの車の識別記号、正しく読めていますか?

自動車排出ガス規制識別記号

自動車排出ガス規制識別記号とステッカーの見方

識別記号の基本構造
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1桁目:規制年と認定レベル

排出ガス規制年と低排出ガス認定の有無や達成レベル(50%、75%低減など)を表示

2桁目:燃料とハイブリッド

燃料の種別(ガソリン・軽油・CNG等)とハイブリッド車の有無を識別

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3桁目:用途と重量区分

車両用途や車両総重量の区分によって割り当てられる記号

自動車排出ガス規制の識別記号とは

自動車排出ガス規制の識別記号は、車検証の型式欄に記載される3桁の英数字で、平成17年規制以降に導入された制度です。この記号は車両がどの排出ガス規制に適合しているかを一目で判別できる重要な情報となっています。従来は2文字のアルファベット表記でしたが、平成17年規制からは3桁の組み合わせ記号に変更され、より詳細な情報が読み取れるようになりました。
参考)https://www.mlit.go.jp/common/001179991.pdf

識別記号は「LDG-」や「3BA-」といった形式で表示され、ハイフンの前の3文字が排出ガス規制の識別記号となります。この記号により、車検時の排出ガス検査基準が決定されるため、整備工場や検査機関にとって不可欠な情報です。平成21年規制以降は「L」「S」「U」「W」「X」「Y」などの文字が1桁目に使用され、規制年を識別できるようになっています。
参考)型式の前に付く謎の英数字は車検時の排ガス検査に関わる超重要な…

自動車排出ガス規制における識別記号の構成要素

識別記号の1桁目は「排出ガス規制年」と「低排出ガス認定レベル」を組み合わせた情報を表しています。例えば平成21年規制では、認定なしの場合は「L」、50%低減は「M」、75%低減は「R」、10%低減は「Q」といった具合に割り当てられます。平成22年規制では「S」と「T」、平成28年規制では「2」が使用されるなど、規制年ごとに異なる文字が採用されています。
参考)http://www.satokyo.jp/site_files/file/kaiin/joseikin/%E8%AD%98%E5%88%A5%E8%A8%98%E5%8F%B7.pdf

2桁目は燃料の種別とハイブリッド車の有無を示し、ディーゼル車の場合はさらに重量車燃費基準の達成状況も含まれます。ガソリン・LPG車でハイブリッドありは「A」、なしは「B」、軽油車でハイブリッドありは「C」、なしは「D」といった分類になっています。電気自動車は「A」、燃料電池車(圧縮水素)は「B」と特別な記号が割り当てられます。
参考)https://www.totokyo.or.jp/management/topics/file/h24/sikibetubangou.pdf

3桁目は車両の用途や重量条件によって決定され、軽自動車は「D」、車両総重量1.7トン以下は「E」、1.7トン超3.5トン以下は「F」、3.5トン超は「G」という区分です。平成17年規制のディーゼル車では、車両重量1265kg以下と超の区分で「B」と「C」が使い分けられるなど、規制年によって細かな違いがあります。​

自動車排出ガス規制のステッカーと低排出ガス認定

低排出ガス車には星マークのステッカーが貼付され、環境性能を視覚的に確認できるようになっています。平成17年基準では50%低減で星3つ(★★★)、75%低減で星4つ(★★★★)が付与され、平成30年基準では25%低減で星3つ、50%低減で星4つ、75%低減で星5つという基準になっています。これらのステッカーは国土交通省の低排出車認定制度に基づき、特殊耐候インキと特殊ラミネート素材を使用して長期間の耐候性を確保しています。
参考)低燃費・低排出ガス認定ステッカー

ステッカーには低排出ガス車のほか、自動車NOx・PM法適合車ステッカーも存在し、ポスト新長期規制適合車、新長期規制適合車など3種類のデザインがあります。これらは排出ガスのクリーンな自動車を見分けるためのもので、該当地域での使用可否を判断する材料となります。ただし2021年3月末以降、トヨタなど一部メーカーでは新車への燃費基準達成・低排出ガス車ステッカーの貼付を廃止する動きもあります。
参考)https://www.env.go.jp/content/900398417.pdf

車検ステッカー(検査標章)は排出ガス規制の識別とは別のもので、車検の有効期限を示すために前面ガラスに貼付されます。四角いステッカーには外から見て小さい数字が年(和暦)、大きい数字が月を表示し、令和5年7月3日から貼り付け位置が変更されています。点検ステッカー(丸シール)は法定点検の期日を示すもので、車検ステッカーとは異なる役割を持っています。
参考)検査標章(ステッカー)|国土交通省|自動車検査登録総合ポータ…

自動車排出ガス規制の歴史的変遷と識別記号の発展

日本の自動車排出ガス規制は昭和41年に始まり、年々強化されてきました。平成12年排出ガス規制は大幅な規制強化となり、今日の乗用車の代表的な規制基準となっています。この規制により多くの著名スポーツカーがモデル廃止を余儀なくされ、国内自動車産業の分岐点となりました。平成15年規制は主にディーゼル車を対象とした新短期規制で、初めて粒子状物質(PM)への併用対策が求められました。​
平成17年規制(新長期規制)は2005年10月から適用され、識別記号が従来の2文字から3文字表記に変更された転換点です。この規制によりディーゼル車の排出ガス基準が大幅に強化され、「PKG-」などの新しい識別記号が導入されました。平成21年規制(ポスト新長期規制)では「L」「M」「R」「Q」などの記号が採用され、さらに厳格な基準が設定されています。
参考)平成17年排出ガス規制 - Wikipedia

平成19年9月以降の型式認証ディーゼル車からは、従来の黒煙測定器に代わってオパシメータを使用した排出ガス検査が導入されました。オパシメータは粒子状物質(PM)を高精度で測定できる装置で、光吸収係数0.80m-1という規制値が設定されています。車検証の備考欄に「オパシメータ測定」と記載された車両は、車検時にこの装置による検査が必要となります。
参考)http://amsdl.ams.or.jp/shinnkoukai/sitei/1.pdf

自動車排出ガス規制における識別記号の実務的活用法

車検証で識別記号を確認する際は、型式欄の最初の3桁に注目する必要があります。型式指定番号が16000以降の自動車や、備考欄に「オパシメータ測定」と記載された車両は、特定の排出ガス検査方法が適用されます。構造変更を行った場合は型式指定番号が備考欄に記載されるため、注意深く確認することが重要です。
参考)https://www.totokyo.or.jp/management/topics/file/kindaikayuushi/h28/sikibetubangou.pdf

識別記号から車両の環境性能を読み取ることで、エコカー減税や自動車税の環境性能割などの税制優遇措置の対象かどうかを判断できます。平成17年規制のディーゼル車では、識別記号「ABA-」は適合(星なし)、「CBA-」は50%低減(★★★)、「DBA-」は75%低減(★★★★)を意味します。平成30年基準では「3BA-」が適合、「4BA-」が25%低減、「5BA-」が50%低減、「6BA-」が75%低減となります。
参考)低排出ガス車認定制度 - Wikipedia

識別記号は中古車購入時の重要な判断材料にもなり、排出ガス規制の適合状況によって車両の使用可能地域が制限される場合があります。自動車NOx・PM法の対象地域では、規制に適合しない車両の登録ができないため、識別記号による事前確認が欠かせません。型式指定番号や排出ガス記号を正確に把握することで、適切な車両選択と維持管理が可能になります。
参考)自動車NOx・PM法適合車ステッカーとは [自動車NOx・P…

国土交通省の自動車排出ガス規制に関する公式ページ - 規制の詳細情報と最新の識別記号一覧が確認できる参考資料
環境省の自動車NOx・PM法適合車ステッカー解説 - ステッカーの種類と適合車両の判別方法に関する公式情報