ハブリダクション ジムニーで悪路走破と車高を両立

ハブリダクション ジムニー

ハブリダクション ジムニーの仕組みと効果

 

ハブリダクションとは、駆動輪のホイールハブ内に減速ギアを組み込む機構のことです。ジムニーに装着されるハブリダクションシステムは、固定車軸にこの減速ギアを内蔵することで、エンジンの駆動力をより効率的にタイヤに伝えます。このシステムにより、ギア比が約1.16倍下がり、低速でも強力なトルクを発揮できるようになります。

 

従来のリフトアップでは、サスペンションを高くすることで車高を稼ぎますが、最低地上高（デフクリアランス）はそれほど向上しません。ハブリダクションが優れている点は、車軸そのものを高い位置に配置することで、最低地上高を大幅に増加させることにあります。ジムニーにハブリダクションを装着したカスタムモデルでは、最低地上高が400mmにも達し、通常のリフトアップ車では到達できない領域に到達しています。

 

深いぬかるみや岩場などの極限的なオフロード環境では、この最低地上高の確保が走破性を大きく左右します。ハブリダクション搭載ジムニーは、車体下部を障害物から保護しながら、強力な駆動力でセクションを乗り越えることができるため、一般的な四輪駆動車では走破困難な悪路も克服可能になります。

 

ハブリダクション ジムニーのメリット

ハブリダクションシステムをジムニーに装着する主なメリットとしては、まず圧倒的な悪路走破性が挙げられます。ギア比の大幅な低下により、エンジンの回転数が低い状態でも十分なトルクが得られるため、段差の乗り越えや急斜面の登坂が容易になります。オンロード走行でのリプチェーンジ頻度も減少し、エンジンへの負荷が軽減される効果も期待できます。

 

次に、デフクリアランスの向上によるスタック回避効果があります。従来のサスペンション高さだけでは解決できなかった下部クリアランス不足が、ハブリダクションの車軸配置により根本的に改善されます。結果として、より大型の障害物を乗り越えられるようになり、オフロード走行の安全性と確実性が大幅に向上します。

 

また、ハブリダクション搭載により、リムの深いものが選択できるようになるという利点もあります。これはホイールハブとドライブシャフトの間に両側のティバスが組み込まれることで、自然とワイドトレッド化が実現されるためです。これにより、車両の重心が低くなり、オフロード走行での安定性もさらに向上します。さらに見た目の迫力も増し、ジムニーがまるでGクラスのような豪華なSUVに変貌します。

 

ハブリダクション ジムニーの構造的特徴

ハブリダクション搭載ジムニーの構造を理解するには、ポータルアクスル（門型アクスル）という概念を知ることが重要です。ポータルアクスルとは、固定車軸にハブリダクションシステムを組み込んだもので、日本では単にハブリダクションと呼ぶことが多いです。この構造では、減速ギアを内蔵したホイールハブが車軸から距離を持って配置されるため、結果として車軸全体が高い位置に移動します。

 

ハブリダクションに組み込まれる減速ギアの仕組みは、複数段の歯車を組み合わせることで実現されます。大きなリングギアと小さなピニオンギアが噛み合うことで、回転数を大幅に低下させながら同時にトルクを増幅させます。この手法は、鉱山採掘車やダンプカーなどの大型作業車でも採用されている信頼性の高い技術です。

 

製造の観点からは、ハブリダクションの複雑な構造は高い精密性を要求します。各ギアのバランス、ベアリングの精度、油圧パイプの配置など、多くの要素が正確に設計・製造される必要があります。そのため、完成度の高いハブリダクションシステムを実装するには、豊富な経験と高度な技術力を持つメーカーによる製造が必須となります。

 

ハブリダクション ジムニーのカスタム事例

現在、ハブリダクションを装着したジムニーのカスタムは、主に海外のアフターパーツメーカーによって展開されています。Delta4×4とAvusAutoの共同開発による高級ボディキットは、このジャンルの代表例で、最低地上高400mmを実現する画期的なカスタマイズとして注目されました。このキットの総額は約860万円という非常に高額ですが、極限のオフロード走破性を求めるユーザーからの需要は高く、カスタムジムニーの中でも特にプレミアム感が強いカテゴリーとなっています。

 

このカスタムキットの特徴としては、8穴の黒い18インチホイールと全地形対応タイヤが標準装備される点があります。これらのオプションにより、砂漠、岩山、深い泥濘地など、世界中のあらゆるテレインでの走行が可能になります。さらに、ルーフがない場合でも全高が1.8メートルに達する大迫力の仕様となっており、通常のジムニーでは実現不可能な外観に変身します。

 

オフロード愛好家の間では、ハブリダクション搭載ジムニーはステータスシンボル的な存在になりつつあります。SNSやオフロード関連のイベントでハブリダクション装着車の投稿が話題となることが多く、このカスタムへの関心度の高さが窺えます。

 

ハブリダクション ジムニーとオンロード走行の課題

ハブリダクションシステムには優れた特性がある一方で、オンロード走行における課題も存在します。ギア比が極端に低下することで、高速走行時にエンジン回転数が著しく上昇し、燃費性能が悪化する傾向があります。ジムニーの場合、既に1.3リッターの小排気量エンジンを搭載しているため、さらにギア比が下がると、高速道路走行は実用的ではなくなる可能性があります。

 

また、複雑な駆動系の構造により、故障時の修理コストが高くなることも懸念されます。通常のジムニーであれば比較的安価に部品交換ができても、ハブリダクション組み込みのドライブシャフトやハブアッセンブリは、高度な加工と組み立てが必要なため、修理費が数十万円単位になることも珍しくありません。したがって、ハブリダクション搭載ジムニーは、オフロード走行に特化した「専用兵器」として位置付けられており、日常的なオンロード使用は想定されていないのが実情です。

 

さらに、ハブリダクション搭載車で通常のオンロード走行を無理に行うと、駆動系に予期しない負荷がかかり、各部品の耐久性が低下するリスクも存在します。このため、購入を検討する際には、使用目的を明確にしておくことが極めて重要になります。

 

ハブリダクション ジムニーとデフロックの関係性

ジムニーのオフロード走破性向上を語る際、デフロック（差動制限機構）との違いを理解することは重要です。デフロックは左右輪の回転差を制限し、どちらかのタイヤが空転してもロックされた状態で走行できる機構です。一方、ハブリダクションは駆動力そのものを増幅し、最低地上高を確保する機構という、異なる役割を持っています。

 

標準的なジムニーには純正デフロックが装備されていませんが、代わりにブレーキLSDトラクションコントロールが搭載されています。これは、空転するタイヤにブレーキを掛けることで、反対側のタイヤに駆動力を伝える電子制御システムです。ただし、このシステムは完全なロック効果ではなく、より本格的なオフロード走行ではその限界が明らかになります。

 

実は、ハブリダクションとデフロックの組み合わせこそが、ジムニーの究極のオフロード仕様となります。ハブリダクションにより最低地上高と駆動力を確保し、さらに社外品デフロックを装着することで、世界レベルのオフロード走破性を実現することができるのです。一部のハイエンドカスタムではこの両者を組み合わせており、その走破性は工業用ダンプカーにも匹敵する領域に達しています。

 

<参考：ハブリダクションの基本的な仕組みについてはクルマの大辞典の「悪路を走破する技術！ハブリダクションとは？」が詳しく解説しています>
https://kuruma-jisho.com/traction/conquering-tough-terrain-understanding-hub-reduction/
<参考：ジムニーのハブリダクション搭載カスタムキット開発についてはレスポンスの「スズキ ジムニー が800万円オーバー!? 地上高40cmの迫力キット登場」に詳しく記載されています>
https://s.response.jp/article/2021/11/07/351103.html

 

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