原付の30km/h制限は1960年に制定されて以来、60年以上変更されていません。この制限が現代の交通事情に合わないとして、撤廃を求める声が高まっています。
現在の道路では、他の車両が法定速度以上で流れることが多く、原付が30km/hで走行すると大きな速度差が生じます。この速度差は以下のような問題を引き起こしています。
実際に、現行の原付は設計最高速度が時速60km以下のため、スロットルを大きく開ければ時速50〜60kmの交通の流れに乗る性能があります。しかし、その時点で時速20〜30km程度の速度超過となってしまうという矛盾があります。
SNS上では「制限速度の設定がすごく時代遅れ」「時速30km規制を撤廃する方が先では?」といった意見が多数見られ、多くのライダーが現行制限に疑問を抱いていることが分かります。
2025年4月から導入される新基準原付でも、30km/h制限は継続されることが決定しています。この決定の背景には、以下のような理由があります。
免許取得の容易さとのバランス
原付免許は即日発行が可能で、運転経験の浅いライダーが多いのが現状です。警察庁は「原付一種が30km/hに制限されているのは取得が容易で簡単に乗れるからであり、取得が容易で簡単に乗れるのは30km/hまでしか速度を出すことを許されないから」という論理を維持しています。
他の車両区分との整合性
原付二種(125cc以下)は法定速度60km/hが適用されています。原付の速度制限を見直す場合、二種との差別化が難しくなる可能性があり、新たな混乱を招く懸念があります。
安全性への配慮
白バイの警察官からは「原付が30km/h以上出したら危ないでしょ」という意見も出ており、技量不足による事故のリスクを懸念する声があります。
新基準原付では、不正改造防止措置や時速60kmリミッターの採用も予定されており、技術的な安全対策は強化される一方で、交通ルールは現行のまま維持される方針です。
30km/h制限の撤廃については、ライダーや専門家の間で賛否が分かれています。
撤廃支持派の主張
維持派の主張
興味深いことに、海外の事例では、シドニーで交通安全のために一部地域で30km/h制限を導入しようとする試みがありましたが、住民の反発を受けて撤回されました。これは、速度制限の変更が地域の特性や住民の意見に大きく依存することを示しています。
2025年4月からの新基準原付導入により、取り締まりが複雑化することが予想されています。現在でも複雑な原付の交通ルールが、さらに複雑になる可能性があります。
取り締まりの課題
実際に、SNS上では「リミッターの不正改造が横行しそう」「取り締まりをする警察官の方も大変だろうな」といった懸念の声が多数上がっています。
メーカーの対応
ホンダやスズキなどの主要メーカーは、従来の原付バイクの生産終了を表明しました。特にホンダ「スーパーカブ(総排気量50cc以下のタイプ)」が2025年5月を目処に生産終了することは、多くのファンから惜しまれています。
一方で、各メーカーは新基準原付として125cc以下のバイクの最高出力を抑えたモデルの開発を進めており、どのようなラインナップが登場するか注目されています。
現在の議論を踏まえると、30km/h制限の完全撤廃は困難な状況ですが、段階的な改善策が考えられます。
段階的速度制限緩和案
技術的解決策
免許制度の見直し
現在の普通自動車免許に付随する原付免許制度の見直しも検討されています。原付専用の教育プログラムを充実させることで、技量向上と制限緩和の両立が可能になるかもしれません。
2023年12月の警察庁有識者検討会では、原付の排気量上限を50ccから125ccに引き上げる提案が発表されましたが、30km/h制限や二段階右折義務は維持する方針が示されています。
今後の展開として、新基準原付の普及状況や事故統計を踏まえて、段階的な制限見直しが行われる可能性があります。ライダーの声と安全性のバランスを取りながら、現代の交通事情に適した制度設計が求められています。
原付30km/h制限の撤廃議論は、単なる速度制限の問題を超えて、日本の交通政策全体に関わる重要な課題となっています。新基準原付の導入を機に、より柔軟で現実的な交通ルールの構築が期待されます。