e:HEVとハイブリッドの違い徹底解説

ホンダのe:HEVと従来のハイブリッドシステムには、どのような技術的違いがあるのでしょうか?燃費性能や走行フィールの差を詳しく解説します。

e:HEVとハイブリッドの違い

e:HEVとハイブリッドの主な違い
駆動方式の違い

e:HEVは低・中速域でモーター主体、高速域でエンジン直結という独自の制御を採用

🔋
発電システム

2つのモーター(駆動用・発電用)を組み合わせた効率的な電力供給システム

🚗
走行フィール

EVに近い静粛性と滑らかな加速を実現しながら、高速域での燃費効率も確保

e:HEVの基本的な仕組みと特徴

ホンダのe:HEVは、従来のハイブリッドシステムとは一線を画す独自の技術を採用しています。最大の特徴は、駆動用モーターと発電用モーターの2つを組み合わせた2モーターシステムにあります。

 

このシステムでは、発進から街中の走行において、バッテリーからの電気でモーターのみで走行する「EVモード」を基本としています。エンジンが稼働する際も、主に発電用モーターを回すために使用され、その電力で駆動用モーターを動かすという仕組みです。

 

e:HEVの革新的な点は、高速クルージング時にエンジンの動力を直接タイヤに伝える機能を持っていることです。約100km/h以上の高速域では、モーターの効率が低下するため、エンジンを直結させて効率的な走行を実現します。

 

この制御により、市街地ではEVのような静粛性と滑らかな加速を享受でき、高速道路では燃費効率を最大化できるという、両方の利点を兼ね備えています。

 

e:HEVと従来ハイブリッドの技術的違い

従来のハイブリッドシステムは、主に3つの方式に分類されます。
シリーズ方式

  • エンジンで発電し、モーターのみで走行
  • 日産のe-POWERが代表例
  • 全速度域でモーター駆動のため、高速域での効率が課題

パラレル方式

  • エンジンが主役でモーターがアシスト
  • 発進・加速時にモーターがサポート
  • エンジン主体の走行が基本

シリーズ・パラレル方式

  • エンジンとモーターの両方で走行
  • トヨタのTHS IIが代表例
  • 走行状況に応じて駆動力の配分を調整

e:HEVは、これらの方式とは異なる独自のアプローチを採用しています。低・中速域ではシリーズ方式のようにモーター主体で走行し、高速域ではパラレル方式のようにエンジンを直結させる制御を行います。

 

この制御により、各方式の長所を活かしながら短所を補完する、まさに「いいとこ取り」のシステムを実現しています。

 

e:HEVの燃費性能と走行モード

e:HEVの燃費性能の秘密は、3つの走行モードを状況に応じて自動切り替えすることにあります。
EVモード 🔋

  • 発進から街中の走行で使用
  • バッテリーの電気でモーターのみ走行
  • CO2排出ゼロで静粛性抜群
  • 信号待ちの多い市街地で威力を発揮

ハイブリッドモード

  • 加速時や中速域で使用
  • エンジンで発電した電気によりモーター走行
  • 発電用モーターがバッテリーへの充電も担当
  • 最も使用頻度の高いモード

エンジンモード 🚗

  • 高速クルージング時に使用
  • エンジンの動力を直接タイヤに伝達
  • 0.805のギア比で効率的な高速走行を実現
  • 長距離ドライブでの燃費向上に貢献

これらのモード切り替えは、ドライバーが意識することなく自動で行われ、常に最適な効率で走行できるよう制御されています。

 

特に注目すべきは、減速セレクター機能です。ハンドル左右のスイッチで減速の強さを4段階で調整でき、下り坂や高速道路での速度調整を手元で行えます。

 

e:HEVと他社ハイブリッドの比較分析

e:HEVと他社のハイブリッドシステムを詳細に比較すると、それぞれの特徴が明確になります。

項目 e:HEV e-POWER THS II
基本方式 シリーズ+パラレル シリーズ シリーズ・パラレル
高速域 エンジン直結 モーター駆動 エンジン+モーター
市街地 モーター主体 モーター主体 状況に応じて切替
特徴 EVフィール重視 発電専用エンジン バランス重視

e:HEVの優位性

  • 市街地ではEVのような静粛性と滑らかさ
  • 高速域でのエンジン直結による高効率
  • 2モーターシステムによる柔軟な制御

他社システムとの違い

  • 日産e-POWERは全域モーター駆動だが、高速域での効率に課題
  • トヨタTHS IIは全域でバランス重視だが、EVフィールに劣る

e:HEVは、日常使用の大部分を占める市街地走行でのEVフィールを重視しながら、高速域での効率も確保するという、実用性を重視した設計思想が特徴的です。

 

e:HEVの将来性と環境への影響

e:HEVの技術は、自動車業界の電動化トレンドにおいて重要な位置を占めています。特に注目すべきは、外部給電機能への対応可能性です。

 

現在、トヨタのハイブリッド車では1500Wの外部給電機能が標準化されつつあり、災害時の非常用電源として活用されています。e:HEVシステムも同様の機能拡張が期待されており、以下のような用途が想定されます。
災害時の活用 🏠

  • 炊飯器(500W)+ 洗濯機(500W)+ 冷蔵庫(300W)の同時使用が可能
  • 停電時でも通常の生活を維持
  • 移動する電源としての新たな価値

アウトドア活用 🏕️

  • キャンプでの電源確保
  • 電動工具の使用
  • 調理器具の電源供給

e:HEVの2モーターシステムは、発電用モーターを活用した外部給電において、従来のハイブリッドシステムよりも効率的な電力供給が可能になる可能性があります。

 

また、カーボンニュートラル社会への貢献も重要な要素です。e:HEVは、純粋なEVへの移行期における現実的な選択肢として、以下の利点を提供します。

  • 充電インフラの制約を受けない
  • 長距離移動への不安がない
  • 既存のガソリンスタンドインフラを活用可能
  • CO2排出量の大幅削減を実現

ホンダは2040年までに新車販売の100%を電動車にする目標を掲げており、e:HEVはその重要な橋渡し役を担っています。現在、フィット、ヴェゼル、シビック、ZR-Vなど、幅広い車種にe:HEVが搭載されており、今後さらなる展開が期待されています。

 

技術的な進歩により、e:HEVシステムの効率はさらに向上し、バッテリー容量の拡大やモーター出力の向上により、EVモードでの走行距離延長も実現されるでしょう。これにより、日常使用においてはほぼEVとして機能し、長距離移動時のみエンジンを使用するという、理想的なハイブリッドシステムへと発展していく可能性があります。