ドライバーステータスモニターいすゞ搭載の全機能と仕組み

いすゞのドライバーステータスモニター(DSM)は、居眠りや脇見を検知する安全装置として注目されています。その仕組みや作動条件、EDSS連携まで、あなたはすべて把握できていますか?

ドライバーステータスモニターのいすゞ搭載モデルを徹底解説

直進中の事故が怖いのに、DSMは時速60km未満では一切作動しません。


📋 この記事でわかること3つ
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DSMの基本的な仕組み

赤外線カメラで顔を認識し、脇見・眠気・居眠り・不適切な運転姿勢の4つをリアルタイムで検知する仕組みを解説します。

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いすゞ各車種への搭載状況

ギガ・フォワード・エルフ・エルガバスなど、車種ごとのDSM搭載形態と作動条件の違いを整理します。

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EDSS(異常時対応システム)との連携

DSMが検知した異常をトリガーに車両を自動停止させるEDSSの仕組みと、知らないと損する注意点を紹介します。


ドライバーステータスモニター(DSM)の基本的な仕組みと検知内容

ドライバーステータスモニター(DSM:Driver Status Monitor)は、デンソーが開発した高性能な画像認識システムで、いすゞをはじめとする国内主要トラック・バスメーカーに採用されています。その核心はピラー部やインパネ中央に設置された赤外線カメラにあり、ドライバーの顔を常時モニタリングし続けます。


赤外線カメラを使うことには、明確な理由があります。夜間や薄暗いトンネル内など、可視光が少ない環境でも正確に顔を認識するためです。昼夜を問わず機能する点が、実際の物流・旅客業務では大きな強みになっています。


検知できる状態は主に4種類です。①脇見(顔の向きが前方から逸れている状態)、②眠気(まぶたが重くなり開眼度が低下している状態)、③居眠り(目を閉じたまま一定時間が経過した状態)、④不適切な運転姿勢(落としたものを拾おうとして体が大きく傾くなど)の4つです。これら4パターンが基本です。


顔認識の精度には、ディープラーニングが活用されています。顔の中の62点を特徴点として抽出し、1人ひとりの顔の造形を把握することで、高精度な状態推定を実現しています。例えば「目が細い人」と「眠くて目を細めている人」を区別できるほどの精度があるとされており、これは数十万台規模の顔画像データベースを使って学習させた成果です。


また、赤外線カメラを採用しているため、透過率12.5%程度のサングラスを着用していても目の動きを追跡できます。一般的なサングラスであれば、検知精度への影響は最小限に抑えられるということですね。ただし、透過率が極端に低い濃いサングラスや、完全に遮光するアイマスクのようなものは認識できない場合があります。


異常を検知した場合、システムは段階的に警告を発します。最初は音声メッセージと警告音で「前方にも注意を払ってください」(脇見の場合)、「お疲れでしょうか?」(眠気の場合)、「休憩をとりましょう」(居眠りの場合)などと呼びかけます。これらの警告はメーターディスプレイへの表示とセットで行われます。


参考情報として、デンソーDSMの機能詳細が以下のページで確認できます。


DENSO ドライバーステータスモニター DN-DSM 特徴ページ(デンソー公式)


いすゞ各車種(ギガ・フォワード・エルフ・エルガ)へのDSM搭載状況

いすゞが展開するラインナップのうち、DSMは大型トラック「ギガ」、中型トラック「フォワード」、小型トラック「エルフ」、そして大型路線バス「エルガ」に搭載されています。これが基本です。


ただし、搭載形態はモデルによって異なります。ギガでは、運転席側のAピラー(フロントガラスの端を支える柱)の下部にカメラが設置されており、作動条件は時速60km/h以上となっています。高速道路や幹線道路での長距離運行中にしか機能しない点は、意外と知られていません。


フォワードは少し仕様が異なります。カメラがインパネ中央(ダッシュボードの真ん中あたり)に設置されており、同様に時速60km/h以上で作動します。さらにフォワードのDSMには、「強い眠気を感じていると判断した場合、エアコンから冷風を自動で出して注意を促す」機能が追加されています。これは使えそうです。顔を叩くよりも体に優しく、かつ確実に意識を引き戻す工夫です。


エルフはインパネ中央搭載のカメラで同様の検知を行います。作動条件は他と同じく時速60km/h以上が基本です。


エルガ(路線バス)の場合は、仕様が大きく異なります。作動開始速度が時速25km/h以上と低く設定されており、さらに居眠りや脇見を検知すると「シートバイブレータ(座席の振動機能)」が作動してドライバーに伝えます。路線バスは頻繁に停車・発車を繰り返すため、低速域でも機能することが必要だという判断からです。


| 車種 | カメラ位置 | 作動開始速度 |
|------|------------|--------------|
| ギガ(大型トラック) | Aピラー下部 | 約60km/h以上 |
| フォワード(中型トラック) | インパネ中央 | 約60km/h以上 |
| エルフ(小型トラック) | インパネ中央 | 約60km/h以上 |
| エルガ(大型路線バス) | ピラー下部 | 約25km/h以上 |


また、DSMはいすゞの新車に搭載される「純正仕様」の他に、デンソーが別途販売する後付けモデル「DN-DSM」も存在します。既存車両にも取り付け工賃込みで10万円程度で導入できます。これは有料ですが、古い年式の大型車を運用している事業者にとっては、現実的な安全投資の選択肢になります。


参考として、いすゞ公式のギガ安全性ページを以下に掲載します。


ISUZU ギガ 先進安全装置 DSM掲載ページ(いすゞ自動車公式)


DSMが検知する「直進等速時の事故」という意外な盲点

多くの人は「危険な事故は交差点やカーブで起きる」と思いがちです。ところが実際のデータは違います。全日本トラック協会の統計によれば、事業用貨物自動車の死傷事故の多くが「直進等速時」、つまりまっすぐな道を一定速度で走っているときに発生しています。厳しいところですね。


これはトラックドライバーの事故特性と深く関係しています。カーブや交差点では緊張感が高まり、自然と集中力が上がります。一方、長距離を直線道路で走り続ける状況は単調になりやすく、脳が刺激の少ない状態に慣れてしまいます。この単調さが「マイクロスリープ(数秒間の瞬間的な居眠り)」を誘発するとされています。


マイクロスリープの怖さは、本人がほとんど気づけない点にあります。時速80kmで走るトラックがわずか2秒間のマイクロスリープに入ると、意識のない状態のまま約44m進み続けます。これは信号機のある交差点の横幅1.5個分ほどの距離です。


さらに、長距離トラックドライバーを対象にした研究では、年間10万km以上を走行するドライバーの25〜36%が居眠り運転の経験を持ち、11%が居眠りを原因とした事故を経験しているという調査結果があります。つまり10人に1人以上が「事故を経験している」ということですね。


居眠り運転事故の深刻さは数字にも出ています。居眠り運転以外の事故における死亡事故の割合が0.7%なのに対し、居眠り運転事故の死亡事故率は6.9%と、約10倍の高さになっています。死亡リスクが格段に大きいことがわかります。


DSMはまさにこの「直進等速時のドライバーの不注意」を検知するために設計されたシステムです。交差点での緊張時ではなく、単調な走行中に生じる小さな変化を捉えることがDSMの本来の役割だと覚えておくと良いでしょう。


全日本トラック協会「60分でわかるトラック重大事故対策」(事業用貨物自動車の事故統計データ)


DSMと連携するEDSS(ドライバー異常時対応システム)の仕組み

DSM単体の役割は「警告を発すること」ですが、いすゞのギガでは2021年5月より、DSMと連携する「EDSS(Emergency Driving Stop System:ドライバー異常時対応システム)」がオプション設定されました。国内大型トラック初の装備です。


EDSSの基本的な流れは次のとおりです。まず、時速60km/h以上で走行中にDSMのカメラがドライバーの異常を検知します(または、ドライバー自身がEDSSスイッチを押します)。するとシステムが自動でブレーキ制御を開始し、徐々に速度を落として車両を停止させます。


停止させるだけでは終わりません。EDSS作動中は車外へホーンを鳴らし、ハザードランプとブレーキランプを点滅させて周囲に異常を知らせます。さらにレーンキープアシスト(LKA)と同時選択している場合は、車線内に収まるように停止させる協調制御も行われます。


EDSS作動時には、あらかじめ設定したメールアドレスへ通知が送られる機能もあります。つまり、ドライバーが急病で意識を失ってしまった場合でも、管理者側は速やかに状況を把握できます。運送事業者の安全管理に直結する機能です。


なお、EDSSを誤作動などで解除したい場合は、キャンセルスイッチを押すことで通常走行を継続できます。ただし、キャンセル操作をするまで車内外への報知やブレーキ作動は続きます。


エルガ(バス)の場合、EDSSの作動開始速度は時速25km/h以上と設定されています。また、乗客側にも客席スイッチが設置されており、乗客がドライバーの異常に気付いた際に自ら起動できる設計になっています。車内には「緊急停止、おつかまりください」という音声アナウンスが流れ、乗客の安全確保を最優先にした設計となっています。


参考として、いすゞ公式のEDSS導入プレスリリースを以下に掲載します。


いすゞ自動車公式ニュース「国内トラック初のEDSS採用」プレスリリース(2021年5月)


DSMを100%活かすための運用上の注意点と独自視点の考察

DSMを「付けさえすれば安全」と考えるのはダメです。実際の運用では、いくつかの重要な注意点があり、知らずに使っていると本来の効果を半減させてしまいます。


まず作動条件の確認が最重要です。繰り返しになりますが、ギガ・フォワード・エルフのDSMはすべて「時速60km/h以上」でないと機能しません。市街地での低速走行時や、荷積み・荷下ろしで近距離を移動する際には一切作動しない点に注意が必要です。


次に、カメラの位置と視界の確保についてです。DSMのカメラはAピラーやインパネに設置されていますが、カメラのレンズが汚れている・日光が直射しているなどの状況では、検知精度が落ちる場合があります。こまめなレンズ清掃は実は重要なメンテナンスです。


また、DSMが警告を発した際の対処が肝心です。警告が鳴ったとき、多くのドライバーは「わかった、大丈夫」と警告を消して走行を継続しようとしがちです。しかし、眠気や脇見を検知するほど疲労が蓄積している状況では、次の5〜10分で重大な事態が起きるリスクが高まります。警告が出たらすぐにSAやPAに立ち寄ることが原則です。


ここで一つ、意外と見落とされがちな視点を紹介します。DSMの警告データはSDカードに記録され、PC用アプリで後日確認できます。これを活用すれば、運行管理者は「どのドライバーが、どの時間帯・区間で何回警告を受けたか」を数値として把握できます。これは事故後の責任追跡だけでなく、予防的な乗務割の見直しに使える非常に有用なデータです。例えば「特定の深夜便に警告が集中している」とわかれば、そのルートの乗務割や休憩タイミングを改善する根拠になります。


このように、DSMは「警告を発するだけのデバイス」ではなく、「データに基づいた安全管理を実現するインフラ」として活用することで、その価値が飛躍的に高まります。データを取って終わりではなく、定期的にレビューする運用体制を作ることが条件です。


テレコム:デンソーDN-DSMの記録機能と運用管理についての解説ページ