ボンネットミラーの装着には明確な基準が定められています。右ハンドル車の場合、直径30センチ、高さ100センチの円柱をフロント左フェンダーに沿ってリアまで動かした際に、運転席からこの円柱の動きが完璧に見えるかどうかが判断基準となります。
見えない部分がある場合は、左フロントフェンダーへの装着が義務付けられています。これは車高の高いボンネットタイプでフロント部の視認性が悪い車両に特に適用され、障害物の巻き込みなどを防ぐことを目的としています。
現在では主に以下の車両に装着されています。
装着位置は通常、ボンネット先端の左側に凸面鏡を使用したミラーが取り付けられます。この位置により、運転席からの死角を効果的に補完することができます。
ボンネットミラーとフェンダーミラーの歴史は1950年代のイギリスにまで遡ります。当初はフロントガラスに取り付けられていたミラーが、屋根やドアが標準装備となったことで車外に移設されるようになりました。
日本では1962年にすべての車両に左右のサイドミラーが義務付けられ、ボンネットを有する車両にはフェンダーミラーの装着が法的に定められていました。この規制は1983年3月まで続き、外国車も日本市場参入時にはフェンダーミラーへの変更が必要でした。
興味深いことに、この規制緩和の背景には国際的な圧力がありました。
1983年5月に日産パルサーエクサが国産車として初めてドアミラーを採用し、これ以降日本車でもドアミラーが主流となっていきました。
ボンネットミラーには独特の機能性があります。最大のメリットは視線移動の少なさです。ドアミラーと比較して、運転席からの距離が近く、頭を大きく振る必要がないため、より安全な後方確認が可能です。
主なメリット:
主なデメリット:
特にタクシー業界では、頻繁な後方確認が必要な業務特性から、現在でもフェンダーミラーが採用され続けています。これは操作性の優位性が実用面で評価されている証拠といえるでしょう。
ボンネットミラーの鏡面が損傷した場合、自作による修理が可能です。特に旧車愛好家の間では、純正部品の入手困難から自作技術が重要視されています。
修理の基本的な手順。
自作時の注意点として、凸面鏡の曲率半径が重要です。適切な曲率でないと、距離感の誤認や視認性の低下を招く可能性があります。また、振動による脱落を防ぐため、接着剤の選択と固定方法には十分な配慮が必要です。
修理用の凸面鏡は自動車用品店やオンラインで入手可能ですが、サイズと曲率の確認が重要です。特に旧車の場合、現代の規格と異なる場合があるため、元の鏡面の寸法を正確に測定することが推奨されます。
現代の自動車技術の進歩により、ボンネットミラーの概念も変化しています。2016年6月から国土交通省がミラーレス車の公道走行を認めたことで、従来のミラーに代わる新技術が注目されています。
カメラとモニターシステムの導入により、以下の利点が期待されています。
しかし、ボンネットミラーが持つ直感的な操作性や、電子機器の故障リスクを考慮すると、完全な代替には時間がかかると予想されます。特に商用車や特殊車両では、信頼性の観点から従来のミラーシステムが重要視され続けるでしょう。
また、自動運転技術の発展に伴い、ボンネットミラーの情報も車両の安全システムに統合される可能性があります。センサーとの連携により、より高度な安全支援機能の実現が期待されています。
電動格納式ミラーの技術は日本で開発され、1984年10月の日産ローレルに世界初として搭載されました。この技術は現在では世界標準となっており、日本の自動車技術が世界に与えた影響の一例といえます。
ボンネットミラーの未来は、伝統的な機械式ミラーと最新のデジタル技術の融合にあると考えられます。安全性と利便性を両立させた新しい形のミラーシステムが、今後の自動車業界で重要な役割を果たすことでしょう。