車検に合格したバケットシートでも、年式が変わっただけで次回の車検は突然不合格になります。
バケットシートとは、読んで字のごとく「バケツ型の座席」のことで、左右の縁(ヘリ)を高くすることで身体を深くホールドする形状が特徴です。通常の純正シートと比べ、コーナリング時や急加速時でも体が左右にずれにくく、ドライバーが余計な力を使わずにハンドル操作できるため、スポーツ走行において大きなアドバンテージになります。
バケットシートには大きく分けて2種類あり、それぞれ車検への対応が異なります。
フルバケとセミバケでは、車検の合否を左右する要素がかなり異なります。どちらを選ぶかによって、事前に準備すべき書類や対応も変わってくるため、この違いをまず押さえておくことが重要です。
代表的なメーカーとしては国内外で知名度の高いRECARO(レカロ)、BRIDE(ブリッド)、SPARCO(スパルコ)があります。これらのメーカーは保安基準への適合を自社で対応しているため、書類の取得ルートが整備されています。一方、通販などで購入できる無名・格安品のバケットシートは、保安基準適合を証明する書類が存在しないことが多く、車検時に大きなリスクを抱える可能性があります。
つまり、どんなバケットシートでも「装着すれば車検に通る」わけではありません。
参考:レカロ社の保安基準適合試験成績書申請ページ
RECARO 車検資料申請フォーム(レカロ公式)
バケットシートを装着した車が「前回は車検に通ったのに今回は不合格」という話がよく起きるのは、平成29年(2017年)7月の法改正が主な原因です。これが非常に重要なポイントです。
この改正では、道路運送車両法施行規則の一部が見直され、それまでグレーゾーンに置かれていた社外シート・シートレールについて「保安基準適合を証明する書類」による確認が義務化されました。改正前は検査官の裁量に任せられる部分が大きく、ある陸運局では合格、別の陸運局では不合格という"場所によって違う"状況が続いていたのです。これは不公平でもあり、安全性の観点からも問題があるとして整理されました。
H29年改正のポイントをまとめると以下のとおりです。
この改正を知らないまま、以前と同じ状態で車検に臨むと、当日になって書類が無いと判明し再検査・再手配が必要になるリスクがあります。痛いですね。
なお、車の「製造年式」と書類取得の要否については、実務上の対応が検査場によって異なるケースも報告されています。平成19年(2007年)以前の年式の車について、シートレール側の書類提示が不要と案内された事例も存在しますが、これは検査場・担当者による判断であり、将来的には全年式で統一されていく方向とされています。現時点では「昭和50年(1975年)以降の製造車が対象」というのが法律上の基本線です。
保安基準適合の書類は、車検を受けるオーナー自身がメーカーに申請して取得し、車検を受けるディーラーや車検工場へ送付してもらうフローになっています。申請には、シートとシートレールそれぞれの製造番号・保証書・車検証の情報が必要です。書類がオーナーの手元ではなく工場に直送される点も覚えておくと安心です。
書類を一度提出して車検を通過したシートは、次回以降の車検で改めて書類を出さなくても通せるケースがあります。これは知っておくと得する情報ですね。
参考:平成29年改正に関する詳しい解説記事
前回合格も突然不合格はなぜ?シート&シートベルトの車検基礎知識(オートメッセウェブ)
バケットシートが保安基準適合品であっても、装着方法や車のタイプによって車検NGになるケースがあります。これが意外と見落とされやすい落とし穴です。
ケース1:2ドア車の前席両方にフルバケを装着している
2ドア・3ドアの後部座席付き車両では、後部座席へのアクセスに前席シートの背もたれを前方に倒す操作が必要です。リクライニング機能のないフルバケットシートを運転席・助手席の両方に装着すると、後部座席の乗員が脱出できなくなるとして車検不合格になります。
この場合の対応策は2つです。どちらかの席だけをフルバケにする(もう一方は純正かセミバケにする)か、後部座席を取り外したうえで乗車定員を2名に変更する「構造変更(記載事項変更)申請」を行うかのいずれかです。構造変更申請の法定手数料は普通自動車で2,600円程度ですが、業者依頼では別途工賃がかかります。
ケース2:シートの背面が剥き出し(シェル素材むき出し)
カーボン・FRP・アラミドなどのシェル素材が後部座席側に剥き出しになっているシートは、衝突時に後部座席の乗員を傷つける恐れがあるとして車検NGになります。これは年式に関わらず問題になります。対策としては「シートバックプロテクター」と呼ばれるクッション製のカバーをシート背面に装着することです。ただし、もともと2シーターであるオープンカーや、後部座席を取り外して構造変更済みの車両であれば、背面カバーの要件は不要になります。
ケース3:シートとシートレールのメーカー・品番が異なる
シートはレカロ製でも、シートレールが別メーカーや刻印のない格安品だった場合、保安基準適合試験成績書による「シートとシートレールの組み合わせが合格した組み合わせである」ことを証明できません。適合書類がないと車検NGです。シートを中古で購入した場合や、友人から譲り受けたセットをそのまま流用した場合に、このトラブルが起きやすいです。
ケース4:4点式シートベルトを装着したまま
サーキット走行では4点式ハーネスベルトを使う方も多いですが、一般道・車検では3点式シートベルトの装備が義務付けられています。上半身の動きが制限される4点式のままでは後方確認ができないとみなされ車検NGです。サーキットと公道で使い分けている場合は車検時の戻し忘れに注意が必要です。3点式に戻すだけでOKです。
参考:バケットシートのNG条件と車検対策
保安基準適合シートへの交換でも車検に通らない場合がある(WEB CARTOP)
「自分の車の年式だと何が必要か?」を整理しておくことが、スムーズな車検につながります。年式が基準になります。
昭和50年(1975年)以降製造の車全般
道路運送車両法の保安基準は昭和50年以降の車を基本的な適用対象としています。この年式以降の車にバケットシートを装着する場合は、保安基準への適合が求められます。ただし、極めて古い年式の旧車については、検査場によって書類要件の適用を柔軟に解釈するケースも報告されており、事前に確認することが無難です。
平成19年(2007年)以前の車
前述したように、シートレールの強度証明書類について「H19年以前の車なのでしっかり取り付けされていれば大丈夫」と案内された実例があります。ただしこれは全国統一ルールではなく、検査場や担当者によって異なります。今後は全年式で書類要求が統一されていく見通しとされているため、早めに書類を整えておくほうが安全です。
平成29年(2017年)7月以降に車検を受けるすべての車
保安基準改正が施行されたこの日付以降、シートとシートレールの強度証明書類の提示が事実上必須となりました。この年以降に車検を受けた経験のある方は「書類を出した」という記憶があるはずです。
整理するとこうなります。
| 車の製造年式 | シートの書類 | シートレールの書類 |
|---|---|---|
| S50(1975)年以前 | 原則不要(検査場による) | 原則不要(検査場による) |
| S50〜H19(2007)年以前 | 必要(原則) | 不要の場合あり(検査場による) |
| H19(2007)年以降 | 必要 | 必要 |
| H29(2017)年7月以降 | 必要(厳格化) | 必要(厳格化) |
この表はあくまで目安であり、最終的な判断は車検を受ける陸運局・検査機関に事前確認することをおすすめします。地域差・個人差があるのが現実です。
なお、1度書類を提出して車検に通したシートは、次の車検では書類不要で通せるとされているため、初回さえきちんと対応しておけば、2回目以降の手間が大幅に減ります。これは覚えておけばOKです。
バケットシートで車検に臨む際の流れを、事前準備から当日まで順を追って確認しておきましょう。
ステップ1:シートとシートレールのメーカー・品番を確認する
シート本体とシートレールに貼付されているステッカーまたは保証書を探し、メーカー名・品番・製造番号を記録しておきます。レカロであればシート背面にステッカーがあり、ブリッドも同様に本体・レールそれぞれに刻印や製品シールがあります。品番が確認できない場合、書類の申請ができないため、中古品購入時には必ず確認してください。
ステップ2:メーカーに強度証明書を申請する
レカロの場合は公式サイトから申請フォームに入力し、車両の情報(車検証記載の型式・ナンバー)とシート・レールの製造番号を送ります。書類はオーナーではなく、車検を受ける整備工場・ディーラーへ直接送付されます。申請から書類到着まで数日程度かかるため、車検日の1〜2週間前には手配するのが理想です。
ブリッドの場合も同様に公式サポートへの事前連絡が必要で、必要事項を記入してFAXまたはメールで申請するフローです。スパルコも同様の手続きが設けられています。
ステップ3:車の構造が保安基準を満たしているか確認する
下記のチェックリストを事前に確認してください。
これらを1つでもクリアできていない場合は、車検前に修正する必要があります。
ステップ4:車検当日に書類を整備工場に預ける
書類はオーナー自身で保管するものではなく、車検を受ける工場に到着していることを確認してから持ち込みます。万が一書類が届いていない場合は、その場で検査員に相談して対応を仰いでください。
書類の保管については、一度車検に合格したシートに関する書類を工場側が保管している場合、次回は新たな申請なしでスムーズに対応できます。工場に前回の記録が残っているか確認する手間は、車検前に問い合わせてみるだけで済みます。これは使えそうです。
バケットシートを中古購入した場合に書類が手元にない、あるいはシートレールのメーカーが不明という状況は少なくありません。そのような場合に、純正シートを確実にキープしておいて車検時だけ戻すという手段も現実的な選択肢の一つです。ただし純正シートの保管スペースが必要になるため、置き場を確保しておく必要があります。
参考:コスモ石油のバケットシート車検解説
車検に通るバケットシートとNG例を紹介(コスモ石油販売)

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