ZEV規制トランプ撤廃で車好きの選択肢が変わる

ZEV規制をトランプ大統領が撤廃。2035年ガソリン車禁止はどうなる?カリフォルニア州ACC2無効化の背景、日本メーカーへの影響、ハイブリッド車の今後をわかりやすく解説。あなたの次の一台選びに影響するかも?

ZEV規制とトランプ政策が変える自動車の未来

ZEV規制が撤廃されても、あなたの愛車選びのコストは下がらないかもしれません。


この記事でわかること
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ZEV規制とは何か?

カリフォルニア州が定めた「2035年までに新車販売の100%をZEVにする」義務の仕組みと背景を解説。

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トランプ撤廃の全貌

2025年6月にトランプ大統領が署名しACC2規制が無効化。カリフォルニア州含む12地域に連鎖する影響を深掘りします。

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車好きへの実際の影響

日本メーカーのハイブリッド戦略、EV補助金消滅、テスラの利益急落など、知らないと損する最新動向を紹介します。


ZEV規制の基本とカリフォルニア州ACC2の仕組み


ZEV(Zero Emission Vehicle)規制とは、自動車メーカーに対して、販売台数のうち一定割合を「排出ガスゼロの車両」にすることを義務付ける制度です。対象となるZEVには、バッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車PHEV)、燃料電池車(FCEV)が含まれます。


カリフォルニア州が2022年に策定した「アドバンスド・クリーンカーII(ACC2)」は、このZEV規制の中でも特に野心的な内容でした。具体的には、州内での新車販売に占めるZEVの割合を、2026年に35%から始め、2035年には100%にすることをメーカーに義務付けるものです。これはつまり、2035年以降はガソリン車の新車販売が事実上できなくなるということです。


罰金も厳しい内容でした。規制に適合しない車両を販売した場合、1台につき最大2万ドル(約306万円)の罰金が科されると定められていました。1台あたり300万円超という金額は、中型セダン1台分の価格に匹敵します。


そもそもカリフォルニア州は、アメリカ全体の新車販売のおよそ12%を占める巨大市場です。名目GDPで日本を抜いて世界4位に相当する経済規模を持ちます。この州が定めた規制に、ニューヨーク州やワシントン州など11州+ワシントンD.C.が追随して採用していたため、影響は全米規模へと広がっていました。つまり、事実上アメリカの約3分の1の市場をカバーする強力な規制だったわけです。


ZEV規制が原則です。そうした大きな枠組みだったからこそ、トランプ政権による撤廃は世界中の自動車業界に衝撃を与えました。


参考リンク(ZEV規制の基本的な仕組みと全体像を確認できます)。
次世代自動車用語集「ZEV規制」 | CEV補助金公式サイト


ZEV規制撤廃の経緯:トランプ政権が動いた理由

2025年1月に第2次トランプ政権が発足すると、EV推進政策の見直しは急速に進みました。トランプ大統領はかねてから「EV義務化は米自動車産業を破壊する」と主張しており、就任直後からカリフォルニア州への規制適用免除の取り消しに向けた手続きを開始しました。


決定的な動きは2025年5月に訪れます。米連邦議会上院は5月22日、ACC2規制を無効化する決議案を可決しました。これは「議会審査法(CRA)」と呼ばれる仕組みに基づくもので、行政機関が定めた「規則」を、両院で単純過半数が賛成し、大統領が署名することで取り消せる制度です。


そして2025年6月12日、トランプ大統領が正式に署名し、ACC2規制は無効化されました。トランプ大統領は「大気は州をまたぐ性質を有するため、連邦政府が統一して定めるべき」という主張を根拠として挙げました。また「カリフォルニア州のEV義務化を永遠に廃止することで、米自動車業界を破壊から正式に救済する」という強いメッセージも発しました。


この決定はカリフォルニアだけの問題ではありません。同州に追随していた11州+ワシントンD.C.でも、連邦基準よりも厳しいACC2規制の導入が認められなくなる、という連鎖的効果が生じました。つまり全米規模でのZEV義務化の枠組みが一気に崩れたのです。


一方でカリフォルニア州のニューサム知事は猛反発し、「上院の採決は違法だ」と訴訟を起こす構えを見せています。カリフォルニア州はニューヨーク州ら10州と連携し、「クリーンカー推進のための11州連合」を結成、連邦政府に反発しながらも独自のZEV普及路線を継続する姿勢を示しています。これで終わりではないということですね。


参考リンク(トランプ大統領によるZEV販売義務撤回の詳細な経緯)。
トランプ米大統領、カリフォルニア州のZEV販売義務を撤回|ジェトロ


ZEV規制撤廃が日本メーカーとハイブリッド戦略に与えた影響

ZEV規制の撤廃によって最も恩恵を受けたのは、実は日本の自動車メーカーです。意外ですね。


バイデン政権下では、2031年モデルまでに企業平均燃費(CAFE)を約50MPG(約21km/L) まで引き上げることが義務付けられていました。この水準を達成するには、ラインナップにEVを大量に組み込む必要があり、HEV(ハイブリッド車)を得意とする日本メーカーにとって大きなプレッシャーでした。


ところがトランプ政権は2025年12月、この燃費規制を34.5MPG(約14.6km/L) にまで大幅に緩和しました。バイデン基準と比べると、燃費達成目標が約32%緩和されたことになります。東京−大阪間の距離に例えると、同じ1タンクで走れる距離が大きく短くても許容されるようになったイメージです。


この緩和によって、ガソリン車やHEVを中心としてきた日本メーカーへのEV義務比率のプレッシャーが劇的に下がりました。トヨタはウェストバージニア州の工場にハイブリッド車製造のための8,800万ドルの追加投資を決定。米国でのHEV生産拡大が明確な戦略となっています。


米バンク・オブ・アメリカ証券も2025年6月、「市場の重心がEVから内燃機関車、ハイブリッド車へ移る可能性が高い」との分析を示しました。実際にアメリカ市場でのHEV販売シェアは12.8%にまで拡大(2025年調べ)しており、EV(7.4%)を大きく上回る勢いとなっています。ハイブリッドが基本です。


ただし、日本メーカーにとってすべてが好材料というわけではありません。トランプ政権が打ち出した自動車関税引き上げの影響も大きく、各メーカーは「規制緩和の恩恵」と「関税コスト増」という両面を同時に対処しなければならない複雑な状況に置かれています。


参考リンク(日本メーカーへの環境規制見直しの影響と現場の声)。
トランプ政権の環境規制見直し、日本メーカーにも影響「関税引き上げ以上」とも|日刊自動車新聞(自動車業界団体掲載)


ZEV規制が消えてEV補助金も廃止、テスラが受けた衝撃

ZEV規制の撤廃とほぼ同時期に、EV購入者向けの連邦補助金(最大7,500ドルの税額控除)も大きく動きました。これはもともと2032年末まで有効な予定でしたが、トランプ政権が成立させた「大きく美しい1つの法案(The One, Big, Beautiful Bill)」によって、適用期限が2025年9月末に前倒しされました。


つまり実質7年分の補助金が一夜で消えたことになります。7,500ドル(約115万円)という金額は、軽自動車1台の値引き額をはるかに超えるレベルです。これは痛いですね。補助金廃止前には駆け込み需要が発生し、ホンダの「プロローグ」は2025年8月に前年比73.1%増を記録しましたが、10月以降の販売減は避けられない状況となりました。


さらに大きな打撃を受けたのがEV専業メーカーです。意外にも、ZEV規制が存在していた時代には、EV専業メーカーはクレジット(排出枠)を他のメーカーに売却することで大きな収入を得ていました。テスラは創業以来、累計1兆5,000億円以上のクレジット売却益を稼いでいたとされています。ZEV規制が無効化されれば、このクレジット収入が2027年には消滅するとの見方もあります。


ホンダも直接的な影響を試算しており、EV補助金の早期終了とZEV規制無効化による将来クレジット収入の消滅で約500億円の影響が出ると想定し、2025年4〜6月期決算に既に織り込んでいます。


結論はEVにとって非常に厳しい環境です。ブルームバーグNEFは「2030年時点の米国ライトビークル販売に占めるEV比率は27%にとどまる」と下方修正(従来予測の48%から大幅低下)しており、米国でのEV普及シナリオは根本的に描き直しを迫られています。


参考リンク(EV税額控除終了とZEV規制無効化をめぐる最新EV市場動向)。
EV取り巻く環境変化、政策の見直し進む(欧米のEV政策)|ジェトロ


ZEV規制撤廃後もカリフォルニア州が抵抗を続ける独自路線の行方

トランプ政権によるZEV規制の撤廃決定は、連邦政府と州政府の間に深刻な対立を生み出しました。注目すべき点があります。


カリフォルニア州は現時点でも独自路線を諦めていません。ニューサム知事率いる同州は、2025年12月に「脱炭素化ロードマップ」をEPAに提出し、連邦の環境政策に関わらず独自の環境規制を継続する姿勢を明確にしています。同州を含む「11州連合」は、連邦政府が動かなくても独自に充電インフラを整備し、ZEVの購入補助を続ける構えです。


ただ、現実の数字は厳しいです。2025年第1四半期時点で、カリフォルニア州でのBEV販売比率は約21%です。2035年に100%ZEVとする目標に向けて、毎年数%ずつ引き上げていかなければならない計算ですが、ZEV規制という法的拘束力のバックアップが失われた今、メーカーへの義務がなければ自然な普及速度に頼るしかなくなります。


一方、製油所の縮小や高い燃料税によって、カリフォルニア州のガソリン価格は全米平均より1ガロンあたり約1.5ドル(約230円)も高い水準が続いています。一部地域では1ガロンあたり4.6〜5.7ドル(1リットルあたり約190〜230円)に達する地域もあり、これがEV普及の間接的な推進力になっているのは確かです。


また2026年3月現在、トランプ政権はカリフォルニア州独自の自動車規制を巡って連邦訴訟を提起しており、州側も対抗訴訟で応じています。この法廷バトルの結果次第では、ZEV規制が何らかの形で復活・存続するシナリオも完全には否定できません。車好きとして注目すべき点がまだ多くあるということですね。


参考リンク(連邦政府とカリフォルニア州の対立と今後の見通し)。
逆風下の米国環境ビジネス(1)連邦の不確実性と州の二極化|ジェトロ(2026年2月)




トヨトミの野望 小説・巨大自動車企業