ゼログラビティーシートとは、日産自動車が開発した長時間運転でも疲れにくい革新的なシート技術です。正式名称は「スパイナルサポート機能付きシート」と呼ばれ、2011年10月に初めて発表されました。このシートの最大の特徴は、NASAが無重力状態で計測した「中立姿勢」をもとに設計されている点にあります。
参考)ゼログラビティシート(スパイナルサポート機能付きシート)
人間が無重力空間で自然に脱力した姿勢こそが、身体への負担が最も少なく、長時間でも姿勢が崩れにくく疲れにくい理想的なポジションです。日産はこの中立姿勢をクルマのシートに転用することで、筋肉や背骨への負荷を少なくし、血行も改善することに成功しました。
参考)[初代パジェロ]のシートはダンパーが付いてた!! ホンネを言…
背もたれパッドを中折れ形状(逆くの字型)にして、重量のある胸郭と骨盤を積極的に支えることで背骨の負担を軽減する構造となっています。慶應義塾大学の山崎研究室との共同研究により、独自のシートシミュレーターと人体筋骨格モデルを用いて、筋肉と背骨の負荷が最小となる着座面形状と各部位の支持力を科学的に把握しています。
参考)https://faq2.nissan.co.jp/faq/show/24888?category_id=63amp;site_domain=default
ゼログラビティーシートは、日産の幅広い車種に採用されており、軽自動車から高級セダンまで多様なラインナップを誇ります。初めて採用されたのは2013年12月にフルモデルチェンジした3代目エクストレイルでした。
現在では新型セレナ、ノート、ノートオーラ、キックス、デイズ、ルークスといった主力モデルに標準装備またはグレード別設定されています。特に注目すべきは、2025年8月に発表された新型ルークスで軽自動車として初めて前席だけでなく後席にもゼログラビティシートを採用した点です。
参考)軽の常識超え! 日産「新型ルークス」に“ゼログラビティシート…
さらにインフィニティブランドのQX60など、高級車ラインにはセミアニリンレザーを使用したキルティング加工の上質なゼログラビティシートが装備されています。助手席回転シート仕様のノートやノートオーラにも、このゼログラビティ技術が採用され、乗降性と快適性を両立しています。
参考)新型車「ノート オーラ」を発表
日産公式:ゼログラビティシート技術詳細
技術の働きや仕組みについて日産が公式に解説している参考資料です。
ゼログラビティーシートの疲労軽減効果は、科学的なデータによって実証されています。ノートに搭載されたゼログラビティシートでは、従来品と比較して疲労度が30%も軽減されたという実測データが公表されています。
参考)腰痛持ちのおじさんにありがたい! 日産こだわりの長時間乗って…
シートの構造を抜本的に変更することで、腰から背中にかけて連続支持する中折れ形状が中立姿勢を再現し、座面と背もたれを面構造にすることで体圧を分散させます。また背もたれの高さを伸ばしたことにより、身体を支えるエリアを拡大し、ロングドライブでのドライバーと同乗者の走行中の疲労を軽減します。
参考)日産:ノート [ NOTE ] コンパクトカー
座り心地の特徴としては、スポーツシートのように固くサイドサポートが強いわけではなく、むしろ柔らかく包み込まれるような感覚が特徴です。押してみると反発力はあまり感じられず、お尻が深く沈み込むわけでもない絶妙なバランスで設計されており、シート自体の作りも大きくゆったりとした印象を与えます。
自動車メーカー各社がシートの快適性向上に取り組む中、日産のゼログラビティーシートは独自の立ち位置を確立しています。トヨタやホンダと比較しても、ゼログラビティという明確なコンセプトと宇宙技術由来の設計思想を持つシートは他社にはない特徴です。
参考)Reddit - The heart of the inte…
一般的な腰痛対策シートや長距離運転向けクッションは市販品として多数存在しますが、これらは後付けのサポート製品であるのに対し、ゼログラビティーシートは車両設計段階から人間工学に基づいて統合的に開発されている点が大きく異なります。
参考)長距離運転の疲れをスッキリ解消!快適なドライブを叶えるクッシ…
興味深いことに、中国のEV市場では「ゼログラビティ」という名称でリアシートがリクライニング・オットマン展開する電動可動式シートを指す場合もありますが、日産のゼログラビティーシートはあくまで姿勢サポートと疲労軽減に特化した固定式シート技術であり、コンセプトが全く異なります。
参考)EVが中国のライフスタイルを変えた…人気の“ゼログラビティ”…
ゼログラビティーシートを搭載した車両を選ぶ際には、いくつかのポイントを押さえておくことが重要です。まず、車種やグレードによって装備の有無が異なるため、購入前に必ず確認が必要です。例えば日産キックスではグレードごとに装備差があり、ゼログラビティーシートの有無で快適性が大きく変わります。
参考)日産キックスe-POWERのグレードごとの装備差・価格差はど…
新型セレナでは1列目と2列目にゼログラビティーシートを採用していますが、車種によっては前席のみの設定となる場合もあります。家族での長距離ドライブを想定するなら、後席にもゼログラビティーシートが装備されているルークスのような車種がおすすめです。
参考)軽の常識超え! 日産「新型ルークス」に“ゼログラビティシート…
既存の車両にゼログラビティーシートを後付けすることは基本的にできないため、新車購入時や乗り換え時に慎重に選択する必要があります。ただし市販の人間工学設計クッションや腰痛対策製品を併用することで、既存シートの快適性を向上させることは可能です。
参考)腰痛対策ができる車用シートクッションのおすすめ人気ランキング…
なお、シートの柔らかい座り心地が体質的に合わない方もいるため、購入前には必ず試乗して実際の座り心地を確認することをおすすめします。
参考)新型オーラ オーテックのシートは快適性はイマイチ?【メリット…
ベストカーWeb:新型ルークスのゼログラビティシート採用記事
軽自動車で初めて後席にもゼログラビティーシートを採用した新型ルークスの詳細レポートです。