全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連)は、日本の法人タクシー・ハイヤー事業者の業界団体として1962年11月10日に設立されました。現在の会長は、日本交通株式会社代表取締役会長の川鍋一朗氏が務めています。全タク連は全国47都道府県のタクシー協会を正会員とし、5,225社のタクシー事業者が所属しており、組織率は92.1%に達しています。
参考)http://www.taxi-japan.or.jp/content/?p=articleamp;c=55amp;a=1
川鍋一朗会長は1970年生まれで、慶應義塾大学経済学部を卒業後、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院でMBAを取得しました。その後マッキンゼー・アンド・カンパニーでコンサルタントとして活躍し、2000年に家業の日本交通に入社しています。2005年には業界最年少の34歳で日本交通の代表取締役社長に就任し、当時1,900億円の負債を抱えていた同社を大胆な経営改革で立て直した実績があります。
参考)川鍋一朗 - Wikipedia
全タク連の本部は東京都千代田区九段南4丁目8-13の自動車会館3階に置かれ、一般乗用旅客自動車運送事業の適正な運営と利用者に対するサービスを通じて事業の健全な発展を図り、社会公共の福祉に寄与することを目的としています。
参考)全国ハイヤー・タクシー連合会 - Wikipedia
タクシー業界は現在、深刻な運転手不足という構造的な課題に直面しています。特に地方では人口減少によりタクシー利用者が減少し、事業の採算が取れないケースが増加しています。中山間地域では公共交通機関が衰退しており、タクシーが住民の「移動の最後の砦」となっていますが、運転手不足や収益の低迷により事業継続が困難になっている状況です。
参考)Document Moved
全国で9割の法人タクシーが存続の危機にあると言われており、地域間の格差も顕著になっています。四国では香川、愛媛といった観光客を取り込めている地域と、徳島、高知では大きな開きが生じ、九州でも半導体バブルに湧く熊本や福岡に対して、鹿児島や宮崎の事業者は打つ手がなく苦しんでいる状況です。観光資源の有無がタクシー事業者の売上を大きく左右しており、観光客を取り込めていない地域ほど厳しい経営環境に置かれています。
参考)10年後にはタクシーがなくなる地域も——コロナ禍を経て「地域…
一方で都市部では、タクシー需要が高いものの配車アプリや観光タクシーサービスの増加により競争が激化し、運転手間の収入格差が拡大しています。業界全体として若年層の確保が困難であり、労働条件の改善や働きやすい環境づくりが急務となっています。
参考)タクシー業界の今後は?現状の課題や将来性について解説|メトロ…
2025年6月に開催された第120回通常総会において、川鍋会長は「この2年間は地方を中心に取り組んでいきたい」との方針を明確に示しました。都心部ではタクシードライバーが増加し、日本型ライドシェアも順調に稼働していることから、今後は地方での移動手段の確保に注力することを打ち出しています。
参考)全タク連が総会 地方のタクシー不足解消へ新組織 href="https://www.aba-j.or.jp/info/industry/24344/" target="_blank">https://www.aba-j.or.jp/info/industry/24344/amp;#8211…
具体的な施策として「地方タクシー事業再生・進化推進特別本部(仮称)」を新設し、川鍋会長が本部長、田中亮一郎副会長(第一交通産業社長)が副本部長を務める体制を構築しました。この特別本部では隔月で会議を開催し、地方の意見をより多く集めて組織運営に反映していく方針です。
参考)https://www.aba-j.or.jp/?post_type=industryamp;p=24344
地方支援の方法としては、自治体との連携強化が重要視されており、タクシー会社に補助金を支給する仕組みの整備や、地域住民向けの定額制サービス、乗り合いタクシーの導入などが検討されています。また、自家用有償旅客運送制度の見直しにより、過疎地を中心に交通空白地における移動手段の確保を進める取り組みも進行中です。
参考)タクシー不足対策に新サービス 一般ドライバーが担う地域の足 …
日本型ライドシェア(自家用車活用事業)は、2024年4月から導入された新しい移動サービスで、タクシー会社が運行管理を担当する形態です。一般のドライバーが自家用車を使用して有償で旅客輸送を行いますが、ドライバーの教育や勤務管理もタクシー会社が行うため、実質的にタクシーの規制緩和の一環と位置付けられています。
参考)ライドシェアとは?タクシーとの違いやメリット・デメリット、国…
このサービスは、タクシーが不足している地域や特定の時間帯において提供され、「Uber」「S-Ride」「GO」「DiDi」などのタクシーアプリから配車を依頼できます。料金は通常のタクシーと同じ金額で、事前に運賃が確定する配車限定のサービスとなっています。
参考)自動車:日本版ライドシェア(自家用車活用事業)関係情報 - …
川鍋会長が代表を務める日本交通は、配車アプリ「GO」を運営するGO株式会社の代表取締役会長も兼任しており、デジタル技術を活用したタクシー業界の革新に積極的に取り組んでいます。2023年9月には、Uber Japanが全国ハイヤー・タクシー連合会に賛助会員として加入し、業界全体で新しい移動サービスの発展に協力する体制が整いつつあります。
参考)川鍋一朗 株式会社Mobility Technologies…
川鍋会長は、タクシー業界の将来について独自の視点から改革を推進しています。日本交通での経験から、「拾う」から「選ばれる」タクシーへの転換を重視し、サービスの質の向上と差別化戦略を実践してきました。自ら1ヶ月間タクシー運転手を体験するなど、現場の課題を肌で感じる姿勢を持ち、組織変革とサービス差別化を推進しています。
参考)川鍋一朗 アカデミーヒルズ
業界の健全な発展のため、全タク連は運輸省(現在の国土交通省)などの関係諸官庁との連絡を密にし、タクシー事業に関する要望・提言を積極的に行っています。また、会員の福祉親睦のための施設運営管理や会報の発刊など、業界全体の情報共有と連携強化にも力を入れています。
参考)連載シリーズ「#ニッポンの仕事」一般社団法人全国ハイヤー・タ…
川鍋会長は2025年の年頭所感でも、地方のタクシー不足解消と業界の持続可能な発展に向けた決意を表明しており、若年層の確保や労働環境の改善を通じて、次世代に引き継げる業界づくりを目指しています。特に二種免許の取得支援や教育体制の充実により、幅広い層にタクシー運転者という仕事を選択してもらうための施策を推進しています。
参考)〈激流に挑む 2025年 年頭の辞〉全国ハイヤー・タクシー連…
タクシー業界は、地域公共交通機関として国民生活を支える重要な役割を担っており、全国で16万6,500台の車両が稼働しています。川鍋会長のリーダーシップの下、全タク連は地方支援、デジタル化、人材確保という三つの柱を中心に、タクシー業界の未来を切り開く取り組みを続けています。
一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会の公式サイトでは、全タク連の概要や活動内容、最新のニュースなどが詳しく紹介されています。業界団体としての具体的な取り組みや組織体制について知りたい方は、こちらのリンクが参考になります。
国土交通省の日本版ライドシェア(自家用車活用事業)関係情報では、日本型ライドシェアの制度概要や実施状況、事業者向けの情報などが公開されています。タクシー業界の新しいサービス形態について理解を深めたい方に有用です。