都市計画法と道路法は、どちらも道路に関する法律ですが、その目的と適用範囲が大きく異なります。都市計画法は「都市の健全な発展と秩序ある整備を図るための土地利用」を目的とし、将来的な都市づくりの視点から道路を計画します。一方、道路法は既に存在する道路の「管理・維持・構造基準」を定める法律で、実際の道路運営に焦点を当てています。
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両法律の最大の違いは、都市計画法が「将来の計画」を扱うのに対し、道路法は「現在の管理」を扱う点です。都市計画道路は都市計画法に基づいて計画決定され、幅員20メートルや30メートルといった大規模な幹線道路の整備を目的としています。これらの道路が実際に完成した後は、道路法上の道路として国・都道府県・市町村によって認定され、管理されることになります。
参考)https://www.mizuho-re.co.jp/knowledge/dictionary/wordlist/print/?n=2764
車を所有する人にとって重要なのは、これらの法律が建築基準法とどう関連するかという点です。建築基準法第42条1項では、道路法による道路(1号道路)と都市計画法による道路(2号道路)がそれぞれ建築基準法上の道路として認められています。つまり、住宅を建築する際の接道義務を満たすには、これらの法律で規定された道路に接している必要があるのです。
参考)建築基準法における6つの道路種別を分かりやすく解説
都市計画法における道路は「都市計画道路」と呼ばれ、都市の骨格を形成する基幹的な施設として位置づけられています。都市計画道路は、市街地の道路条件を改善し、計画的な都市づくりを実現するために都市計画法に基づいて決定される道路です。主に都市をつなぐ幹線道路の整備を目的としており、一般的な生活道路よりも広い幅員が設定されることが特徴です。
参考)都市計画道路とは|岐阜市公式ホームページ
都市計画施設として指定される施設には、都市計画道路のほか、都市計画公園・都市計画河川・都市高速鉄道の4つがあります。その中でも都市計画道路は、都市計画制限を受ける土地のうち最も多くの割合を占めており、車社会における交通インフラの重要性を反映しています。
都市計画道路の決定プロセスは、まず「計画決定」の段階があり、その後「事業決定」の段階へと進みます。計画決定段階では、将来の道路ルートと幅員があらかじめ決められますが、実際の工事はまだ始まっていません。事業決定段階になると、具体的な工事計画が策定され、用地買収などが進められます。この二段階のプロセスにより、長期的な視点で計画的な都市づくりが可能になっています。
参考)都市計画道路とは|仙台市
車で移動する際、幅員の広い幹線道路を利用することが多いですが、それらの多くは都市計画道路として整備されたものです。交通を円滑にし、災害時に道路が有効な役割を果たせるよう設計されているため、日常的な通勤や緊急時の避難路として機能します。
参考)【都市計画道路とは?】土地活用する上での注意点(メリット・デ…
道路法は、道路の管理者を明確にし、道路の適切な維持管理を実現するための法律です。道路法上の道路には、高速自動車国道・一般国道・都道府県道・市町村道の4種類があり、それぞれ管理者が定められています。国道は国土交通大臣が、都道府県道は都道府県知事が、市町村道は市町村長が管理します。
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道路法による道路として認められるには、正式な「認定」または「指定」の手続きが必要です。高速自動車国道や一般国道は、社会資本整備審議会の議を経て政令で指定されます。都道府県道は都道府県議会の議決を経て知事が認定し、市町村道は市町村議会の議決を経て市町村長が認定します。この認定手続きにより、路線名・起点・終点・重要な経過地などが公示され、道路法上の道路としての法的地位が確定します。
参考)http://www.douroweb.jp/313procedure/procedure_route.html
道路法上の道路は、建築基準法第42条1項1号の道路として認められ、幅員4メートル以上であれば建築基準法上の道路の要件を満たします。つまり、道路法で認定された国道・都道府県道・市町村道に面した土地であれば、原則として建物を建築することが可能です。
参考)42条1項1号道路とはどのような道路なのかわかりやすくまとめ…
車を運転する際に日常的に利用する公道の多くは、道路法による認定を受けた道路です。これらの道路は、道路管理者によって舗装の修繕や除雪作業などのメンテナンスが適切に行われており、安全で快適な通行が保証されています。道路法は道路の構造基準も定めており、交通量や地域特性に応じた適切な道路整備が実施される仕組みになっています。
参考)https://www.douroweb.jp/315handling/land_restriction.html
都市計画道路の予定地に指定されると、その土地には厳しい建築制限がかかります。計画決定段階では、都市計画法第53条・第54条により、「地階のない2階建てまで」で「木造・鉄骨造・コンクリートブロック造などの非堅固な建物」しか建築できません。鉄筋コンクリートや鉄骨鉄筋コンクリートなどの堅固な建物は原則として許可されないため、将来的に道路となる予定地では本格的な建築活動が制限されます。
参考)最判昭48.10.18:建築制限付きの土地を収用した場合の補…
事業決定段階になると、建築制限はさらに厳しくなります。都市計画法第65条の規定により、建築する際は都道府県知事の許可が必要となり、事業の進捗状況によっては、余程のことがない限り建築の許可はおりません。これは、将来の道路事業を円滑に進めるために、新たな建築物の建設を抑制する必要があるためです。
参考)最判平17.11.1:「都市計画法の建築制限」と「憲法29条…
建築制限を長期間受けた土地所有者に対する補償問題も存在します。都市計画道路として決定されてから数十年経過しても事業化されないケースでは、土地所有者が建築の自由を制限され続けることになります。判例では、建築制限が「都市計画の実現を担保するために必要不可欠」であり、かつ「権利者に無補償での制限を受忍させることに合理性」がある範囲内でのみ、補償なしの制限が認められるとされています。
参考)https://www.toshi.or.jp/app-def/wp/wp-content/uploads/2018/05/reportg29_2_4.pdf
車を所有する方が土地を購入して住宅を建てる際は、対象地が都市計画道路の予定地に該当していないか必ず確認する必要があります。都市計画道路予定地では、ガレージ付きの3階建て住宅や鉄筋コンクリート造の建物を建てることが困難な場合があり、将来的に土地が買収される可能性もあるためです。役所の都市計画担当課で「拡幅予定線図」などを取得し、計画決定段階か事業決定段階かを確認することが重要です。
参考)都市計画道路とは? 調査すべき内容と不動産取引への影響をわか…
建築基準法では、建物を建築するための重要な条件として「接道義務」が定められています。建築基準法第43条により、建築物の敷地は幅員4メートル以上の建築基準法上の道路に2メートル以上接していなければなりません。この規定は、火災や地震などの災害時に消防車や救急車などの緊急車両が迅速に通行できるようにするためのものです。
参考)建築基準法上の道路とは(建築基準法第42条)
建築基準法第42条では、建築基準法上の道路として認められる6種類の道路が規定されています。その中で都市計画法と道路法に関連する道路は、「第42条1項1号道路(道路法による道路)」と「第42条1項2号道路(都市計画法等による道路)」です。1号道路は道路法で認定された国道・都道府県道・市町村道が該当し、2号道路は都市計画法や土地区画整理法などに基づいて築造された道路が該当します。
参考)42条1項2号道路とはどのような道路なのかわかりやすくまとめ…
重要なのは、道路法上の道路であっても、建築基準法上の道路でない場合があるという点です。登記簿謄本で所有者が「市町村」であり、地目が「公衆用道路」と記載されており、実際に現地を確認しても幅員4メートル以上の公道であったとしても、建築基準法上の道路として認められていなければ、その道路に接する土地には家を建てることができません。道路は道路であっても、建築基準法上の道路でなければ建築の接道義務を満たさないのです。
参考)【コラム】建築基準法上の道路| 株式会社 新日
車を所有し、ガレージ付きの住宅を建てたいと考えている方は、土地購入前に必ず役所の建築指導課などで道路の種別を確認する必要があります。道路の幅員、建築基準法上の道路種別、管理者などを調査し、接道義務を満たしているかを確認することが、後々のトラブルを避けるために不可欠です。特に、狭い道路に面した土地では、セットバック(道路後退)が必要になる場合もあるため、実際に建築可能な敷地面積を正確に把握することが重要です。
参考)都市計画法と道路区分
車を日常的に使用する人にとって、道路法と都市計画法の違いは実生活に直接影響します。道路法は既存の道路の維持管理を担当するため、日々のドライブで利用する国道や県道の路面状態、標識の設置、除雪作業などが道路法に基づいて実施されています。一方、都市計画法は将来の道路網を計画するため、現在は狭い道路でも将来的に幅員30メートルの幹線道路になる可能性があります。
実務上の大きな違いは「所有と管理」の関係です。道路法上の道路は、国・都道府県・市町村が管理者として明確に定められており、道路の土地は道路法の適用を受け私権が制限されます。道路の土地の所有権を持っている人や、持っていると主張する人が、土地の引き渡しを求めたり賃借料の支払いを求めたりすることは、原則として認められません。これは公共の利益のために道路を安定的に管理する必要があるためです。
車で住宅地を走行する際、新しく開発された分譲地では道路が整然と配置されていることに気づくでしょう。これらの道路の多くは、都市計画法による開発許可を得て築造された「開発道路(42条1項2号道路)」です。開発道路は原則として幅員6メートル以上と定められており、車での通行や駐車がしやすい環境が整備されています。
参考)開発道路における公道と私道、位置指定道路との違い
さらに、都市計画道路が事業決定され実際に買収・築造されると、その道路は建築基準法第42条1項4号道路として扱われます。4号道路は「2年以内に事業が執行される予定のものとして特定行政庁が指定したもの」であり、計画から実施への移行段階を示しています。完成後は道路法上の道路として正式に認定され、以後は道路法に基づいて管理されることになります。
参考)三鷹市 |建築基準法上の道路の解説
車を所有する方が土地を選ぶ際は、周辺の都市計画道路の計画状況を確認することをお勧めします。半径200メートル圏内に都市計画道路があると、将来的に騒音・振動・排気ガスなどの影響を受ける可能性があります。一方で、幹線道路へのアクセスが良くなることで、通勤時間の短縮や緊急時の避難経路確保というメリットもあります。これらの情報は重要事項説明書に記載されるべき事項であり、不動産購入時に必ず確認すべきポイントです。
国土交通省の道路情報提供サイトや各自治体の都市計画担当課では、道路法による道路の管理情報や都市計画道路の計画状況を公開しています。詳細な情報が必要な場合は、以下の参考リンクから確認できます。