本州日本海側と北海道で標準設置されている縦型信号機の最大の理由は、冬場の積雪対策です。横型の信号機と比較すると、縦型は上から降ってくる雪に対して直接触れる表面積が圧倒的に小さくなります。これにより、信号機本体に雪が積もりにくく、特に大量降雪時でも視認性が大きく損なわれません。
横型信号機の場合、天板部分の面積が大きく、加えて庇(ひさし)も横に並ぶため、雪が堆積しやすい構造になっています。実際に豪雪地帯では、横型の信号機に大量の雪が積もることで、信号の灯器(光の部分)が完全に隠れてしまい、ドライバーが信号を認識できない事態が発生します。これは重大な交通事故につながる可能性があるため、雪国では構造的に雪が積もりにくい縦型が採用されているのです。
さらに重要な点として、縦型信号機の周囲には雪が積もりにくいだけでなく、万が一積もった場合でも落下しやすいという特性があります。このため、信号機の視認阻害を最小限に抑える設計となっているわけです。
もう一つの重要な理由は、信号機支柱にかかる負荷の軽減です。降雪地域では、屋根に大量の雪が積もることで建物が倒壊するケースもあるほど、雪の重さは侮れません。同様に、信号機にも大量の雪が積もると、支柱の過度な曲がりや、信号機全体が落下してしまう危険性があります。
縦型信号機は雪が積もりにくいという特性により、信号機全体にかかる荷重が大幅に減少します。その結果、支柱の強度負荷が軽くなり、破損や故障のリスクが低下します。横型信号機で同じ状況を想定すると、積雪の重量で支柱が曲がることもあり、定期的な点検と補強が必要になる傾向があります。つまり、縦型は構造的に積雪に対する耐久性が優れているため、北国での設置が正当化されているのです。
日本の信号機は1930年11月、東京の日比谷交差点にアメリカから輸入されたものが第1号でした。当初は「赤・黄・青」が上から順に並んだ縦型信号機として導入されたのです。しかし、当時の信号機は交差点の角に設置されていたため、街路樹や看板などの障害物に視界を妨げられるという苦情が多く寄せられました。
その後、日本の道路事情に合わせて改良が進み、現在のような横型信号機が開発されました。しかし北海道と本州日本海側では、早期に導入された縦型信号機がそのまま標準として定着し、地域の気象条件に合わせた継続使用が行われているという背景があります。特に長野県では1954年、広島県では1933年に縦型信号機が導入されており、こうした初期導入の経緯が現在の地域別設置状況を形作っているのです。
日本全国を見ると、縦型と横型の設置状況には明確なパターンが見られます。おおよそ本州の分水嶺あたりを境界として、日本海側は縦型が標準となり、太平洋側は横型が主流です。これは降雪量の差を反映した結果であり、気象環境によって最適な信号機の形状が決定されていることを示しています。
例えば、青森県は青森市などの太平洋側でも縦型が見られるほど豪雪地帯の影響が強く、石川県の平野部は意外にも横型が主流という地域特性があります。さらに滋賀県北部が縦型地域の南限となっており、山間部と平地部でも異なる設置基準が適用されている状況が見られます。兵庫県山間部や島根県山間部にも離れ小島のように縦型信号機が存在するなど、降雪の可能性のある地域では柔軟に対応されているのです。
近年では LED 型フラット信号機の導入により、着雪対策が施された新型の横型信号機が一部地域で導入されています。青森県西部や岐阜県北部でも、従来の縦型から新しいフラット型への更新が進みつつあります。ただし、これらの新型信号機は実地での雪への耐久性がまだ検証途上であるため、今後の環境適応と性能改善が重要な課題となっているのです。
横型信号機が採用されるようになった背景には、都市部での視認性向上という目的があります。横型信号機の色配置は、左が青、中央が黄色、右が赤となっており、この配列には深い工夫があります。信号機が街路樹や看板によって一部隠れてしまう場合、最も重要な赤色だけは必ず見えるように設計されているのです。
一方、縦型信号機は上から赤・黄・青の順で配置されており、障害物の影響を受けやすいという欠点があります。ただし、北国のように空間が比較的広く、障害物が少ない環境では、このデメリットよりも積雪対策のメリットが大きいため、縦型が採用されているわけです。
つまり、縦型と横型の選択は単なる歴史的経緯ではなく、その地域の気象環境と都市構造に基づいた合理的な選択なのです。豪雪地帯では積雪対策が優先され、都市部では視認性が優先されるという、地域特性に応じた最適な信号機が設置されているということになります。
参考資料:北国の交通安全を支える信号機の設計思想について
なんで信号機には横型と縦型があるの?|道路標識マニア
参考資料:積雪による信号機の視認性低下と構造的対策
北国に縦型の信号機が多い理由とは? - CarMe

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