マツダの魂動デザインは2010年8月にイタリア・ミラノ近郊で開催された「マツダデザインフォーラム」で世界初披露されました。デザイン本部長に就任した前田育男氏が2009年4月から構想を練り、約1年半で形にした革新的なデザイン哲学です。前田氏はマツダの歴史を徹底的に見直し、「人馬一体」という開発哲学をデザインに落とし込むため、クルマに命を与えるという概念を追求しました。
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魂動という言葉は「鼓動」ではなく「魂の動き」を表すマツダの造語で、英語では「KODO:SOUL of MOTION」と表記されます。この哲学を具現化するため、野生動物が獲物に飛びかかる一瞬の美しさと力強さを表現した「ご神体」と呼ばれるオブジェが制作されました。チーターの走りや狩りの動きをモチーフに、背骨の通った俊敏さとなめらかな曲線が特徴です。
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2010年11月のロサンゼルスモーターショーでは、魂動デザイン初のコンセプトカー「靱(SHINARI)」が一般向けに大々的に披露され、世界中から注目を集めました。このSHINARIは当時のマツダがFRスポーツカーの方向性も視野に入れた野心的なモデルでした。
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魂動デザインが初めて市販車に採用されたのは2012年2月発売の初代CX-5です。このモデルはSKYACTIV技術と魂動デザインを組み合わせたマツダ新世代商品群の第一弾として位置づけられ、世界中で大ヒットを記録しました。CX-5のデザインは日本車離れしたフロントマスクが特徴で、発売から10年以上経った現在でも街中で多く見かける人気モデルです。
参考)【MAZDA】魂動(こどう)デザインを振り返る|シズ
続いて2012年11月には3代目アテンザ(MAZDA6)が発表され、フラッグシップセダンとして魂動デザインを採用しました。その後、2013年にアクセラ(MAZDA3)、2014年に4代目デミオ(MAZDA2)と次々に魂動デザインのモデルが展開されました。2015年にはCX-3やND型ロードスターが加わり、魂動デザインのラインアップが完成しました。
参考)https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/1502/25/news010.html
各モデルのコンセプトカーとしては、CX-5の原型となる「勢(MINAGI)」が2011年1月、アテンザの原型となる「雄(TAKERI)」が2011年12月、デミオの原型となる「跳(HAZUMI)」が2014年3月に発表され、市販化への流れが作られました。
魂動デザインの最大の特徴は「生命感」の表現です。マツダは「クルマは単なる鉄の塊ではなく命あるもの」と考え、ドライバーとクルマの関係を愛馬と心を通わせるようなエモーショナルなものにすることを目指しています。具体的には、動物が獲物に飛びかかる一瞬の躍動感や筋肉の動きをモチーフにしたフェンダーやドアのプレスラインで表現されます。
参考)マツダ|マツダデザイン -This is Mazda Des…
デザインの基本プロポーションは、ウェッジ角度を強めた前傾姿勢と、四隅に配置された大径タイヤで前進感を強調することです。フェンダーの張り出しでキャビンを視覚的にコンパクトに見せ、動きの力強さを期待させる構成になっています。チーフデザイナーの玉谷聡氏は、特に雌のチーターが単独で狩りをする際の身体の造形を意識したと語っています。
参考)https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/1502/25/news010_2.html
魂動デザインのもう一つの重要な要素が「引き算の美学」です。不要な要素を削ぎ落とすことで豊かな生命感を表現し、必要以上にキャラクターラインを持たない方向性が貫かれています。段階を踏むごとに余計な要素を引いていき、第7世代車からはリフレクションや光の移ろいによる表現が中心となりました。
魂動デザインを語る上で欠かせないのが「ソウルレッド」という特別なボディカラーです。前田育男氏はデザインを刷新するタイミングでマツダのブランド様式を定義したいと考え、色・フォルム・フロントマスクの3要素を重視しました。ソウルレッドは「色も造形の一部である」という考えに基づいて開発され、なめらかな曲線がポイントとなる魂動デザインの造形を際立たせます。
参考)広島から世界へ発信する。MAZDAのスタイルに見る「日本の美…
ソウルレッドの最大の特徴は、光に対して鋭敏に反応することです。明るい場所では強く輝き、光が当たらない場所は黒く落ちることでフォルムの陰影がくっきりと浮かび上がります。この効果を実現するため、「匠塗(TAKUMINURI)」という独自の塗装技術が2012年に完成しました。通常塗装の半分以下まで薄くした反射層にアルミフレークを水平に並べ、その上に発色層を重ねる2層構造が採用されています。
参考)『匠塗 TAKUMINURI』を支える“研ぎ”の技 ソウルレ…
マツダによると「赤い車が売れる会社は世界でフェラーリ、アルファロメオ、マツダくらい」とのことで、前田氏が理想とする赤はネッビオーロのワインのような飴色の深い赤です。3代目アテンザのタイミングからソウルレッドが導入され、魂動デザインの象徴的なカラーとして定着しました。
魂動デザインは2015年と2017年のコンセプトカーで次のフェーズへと進化しました。2015年東京モーターショーで発表された「RX-VISION」は、ロータリーエンジンを搭載した正統派スポーツカーのコンセプトカーで、翌年「モスト・ビューティフル・コンセプトカー・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。このモデルから引き算の美学がさらに徹底され、要素を削ぎ落とした強いフォルムと周囲の光と影を写し込むリフレクションが取り入れられました。
参考)【ジュネーブショー 2019】マツダ「CX-30」の深化した…
2017年発表の「VISION COUPE」は、RX-VISIONの思想をさらに発展させたエレガントで上質な4ドアクーペのコンセプトカーです。ボンネットからリアエンドまで一直線に繋がるプレスラインが特徴で、より現実的なデザインへと進化しています。このVISION COUPEのヘッドライトまで食い込むシグネチャーウィングは、現行マツダ車にも採用されているデザイン要素です。
参考)市販化に期待【MAZDA RX-VISION&VISION …
深化した魂動デザインが市販車に初めて採用されたのは2019年発表の新型MAZDA3です。そして同年のジュネーブモーターショーで初公開されたCX-30が、新世代商品の第2弾として魂動デザインのSUVモデルとなりました。CX-30のテーマは「Sleek&Bold(スリーク&ボールド)」で、洗練さと力強さの両方を持ち合わせたデザインになっています。デザインテーマの一つとして書道の筆使いにインスピレーションを受けた「止め」と「払い」の表現が取り入れられています。
マツダ公式サイトのデザインページ
魂動デザインの哲学と最新技術が詳しく解説されており、マツダのデザイン思想を理解する参考資料として有用です。
MotorFan「マツダの魂動デザイン、すべて憶えていますか?」
2010年から2017年までの魂動デザインコンセプトカーの変遷を画像付きで詳しく紹介しており、各モデルの名称と特徴を確認できます。
マツダ「匠塗 TAKUMINURI」公式ページ
ソウルレッドクリスタルメタリックとマシーングレープレミアムメタリックの塗装技術の詳細が解説されており、魂動デザインを支える技術的背景が理解できます。

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