消防法危険物一覧と車載時の取扱い基準

車に危険物を載せる場合、消防法で定められた基準を理解していないと法令違反になるだけでなく重大事故につながります。消防法における危険物の種類や指定数量、車両運搬時の注意点を知っていますか?

消防法危険物一覧

消防法における危険物の6つの分類
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性質による分類

第1類から第6類まで化学的・物理的性質で分類され、それぞれ異なる危険性を持つ

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指定数量の設定

各類ごとに法令で指定された数量が定められており、この数量以上は厳格な管理が必要

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運搬・貯蔵規制

消防法により貯蔵方法や運搬基準が厳密に定められ、違反すると罰則の対象となる

消防法で規定される危険物とは、火災を発生させる危険性の高い物質として法律で指定されたものを指します。消防法第2条第7項では、危険物を「別表第1の品名欄に掲げる物品で、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するもの」と定義しています。この規定により、危険物の貯蔵や取扱い、運搬に関して火災予防の観点から厳格な保安規制が設けられています。
参考)消防法で定められている危険物とは?種類別の指定数量と適切な保…

危険物は化学的・物理的性質により第1類から第6類までの6つに分類され、さらに各類ごとに品名が指定されています。車を日常的に使用する方にとって、特に第4類の引火性液体(ガソリンや灯油など)が身近な危険物ですが、塗料や接着剤、クリーニング溶剤なども該当する場合があるため注意が必要です。
参考)消防法危険物について|消防法危険物確認試験|危険性評価・防災…

消防法危険物第1類から第6類の特徴

第1類は「酸化性固体」に分類され、塩素酸塩類、過塩素酸塩類、硝酸塩類などが該当します。これらは単体では燃焼しませんが、他の物質を強く酸化させる性質があり、可燃物と混合すると熱や衝撃で発火・爆発する危険性があります。代表的な物質として塩素酸カリウムや過マンガン酸カリウムなどがあり、指定数量は第1種で50kg、第2種で300kg、第3種で1,000kgと定められています。​
第2類は「可燃性固体」で、硫化りん、赤りん、硫黄、鉄粉、金属粉などが含まれます。火炎によって着火しやすく、比較的低温(40℃未満)で引火する固体が該当し、酸化されやすい性質から酸化性物質と接触すると発火や爆発の危険があります。一度燃焼が始まると消火が非常に困難という特徴があり、アルミニウム粉やマグネシウム粉などの第1種可燃性固体の指定数量は100kg、鉄粉などの第2種は500kg、固形アルコールなどの引火性固体は1,000kgです。​
第3類は「自然発火性物質及び禁水性物質」に分類され、カリウム、ナトリウム、アルキルアルミニウム、黄りんなどが該当します。空気にさらされると自然発火する性質や、水と接触すると発火または可燃性ガスを発生させる性質を持ち、多くの物質が両方の性質を併せ持っています。指定数量は第1種が10kg、第2種が50kg、第3種が300kgとなっています。​

消防法危険物第4類引火性液体の詳細分類

第4類の「引火性液体」は、日常生活や車の使用で最も関わりの深い危険物です。引火性液体が発生させる可燃性蒸気は空気と混合した際、点火源(火気、火花、静電気、摩擦熱)があると引火や爆発を起こす危険性があります。​
特殊引火物は発火点100℃以下または引火点-20℃以下で沸点40℃以下の物質で、二硫化炭素やジエチルエーテルなどが該当し、指定数量は50リットルです。第1石油類は引火点21℃未満のもので、ガソリン、ベンゼン、トルエンなどが含まれ、非水溶性液体は200リットル、水溶性液体(アセトンなど)は400リットルが指定数量となっています。​
第2石油類は引火点21℃以上70℃未満で、灯油や軽油が代表的な物質です。車を使用する方にとって最も身近な危険物であり、非水溶性液体の指定数量は1,000リットル、水溶性液体(ぎ酸、酢酸など)は2,000リットルです。第3石油類(重油など)は引火点70℃以上200℃未満、第4石油類(ギヤー油など)は引火点200℃以上250℃未満、動植物油類(ヤシ油、アマニ油など)もそれぞれ指定数量が設定されています。​

消防法危険物第5類と第6類の性質

第5類は「自己反応性物質」で、有機過酸化物、硝酸エステル類、ニトロ化合物、ピクリン酸などが該当します。燃焼に必要な「可燃物」と「酸素供給体」の両方を含んでおり、比較的低温で多量の発熱を起こしたり爆発的に反応が進む特徴があります。第1種自己反応性物質の指定数量は10kg、第2種は100kgと定められています。​
第6類は「酸化性液体」に分類され、過塩素酸、過酸化水素、硝酸などが含まれます。単独では燃焼しませんが、他の物質を酸化させる性質があり、接触した可燃物を介して火災を引き起こす危険性があります。指定数量は300kgと定められており、これらの物質を取り扱う際は適切な容器と保管方法が必須です。​

消防法危険物の指定数量と倍数計算方法

指定数量とは、危険物の危険性を考慮して政令で定められた数量で、消防法第9条の3に規定されています。指定数量以上の危険物を貯蔵または取り扱う場合、市町村長の許可を受けた施設で、政令で定められた技術上の基準に従って行わなければなりません。​
指定数量の倍数は、貯蔵または取り扱う危険物の数量をその危険物の指定数量で割った値で計算されます。例えば、ガソリン(第1石油類非水溶性液体、指定数量200リットル)を400リットル貯蔵する場合、400÷200=2となり、指定数量の2倍となります。この倍数が1以上の場合、消防法の適用を受け、消火設備の設置、種類・数量の届け出、管理者の選任、定期点検の実施などが義務付けられます。​
異なる類の危険物を同一場所で保管する場合は、各危険物の指定数量に対する割合を合計して判断します。例えば、ガソリン100リットル(100÷200=0.5)と灯油600リットル(600÷1,000=0.6)を保管する場合、0.5+0.6=1.1となり、指定数量以上となるため消防法の規制対象となります。​

消防法危険物を車に積載する際の独自の安全管理法

一般的には知られていませんが、車両で危険物を運搬する際、季節や気温による危険度の変化を考慮することが重要です。特に夏季の車内温度は60℃以上に達することがあり、第2類可燃性固体の引火点(40℃未満)を大きく超える可能性があります。そのため、真夏の直射日光下での駐車は危険物の性状変化を引き起こし、予期せぬ事故につながるリスクがあります。
参考)https://www.fdma.go.jp/relocation/kasai_yobo/about_shiken_unpan/unpan_gaiyou.html

また、車両の振動や揺れによる容器の劣化も見落とされがちなポイントです。長距離輸送や悪路走行を頻繁に行う場合、運搬容器の接合部分や封の劣化が進みやすく、定期的な容器の点検と交換が必要になります。消防法では著しい摩擦や動揺を防ぐことが求められていますが、実務上は緩衝材の使用や固定方法の工夫により、容器への負担を最小限に抑える対策が効果的です。
参考)7-5.危険物を運搬する場合に留意すべき事項 – 小さな運送…

さらに、車両火災時の延焼リスクを考慮した積載位置の選定も重要です。エンジンルームや燃料タンクから離れた位置に危険物を配置することで、車両自体のトラブル発生時でも危険物への影響を遅延させることができます。特にガソリン携行缶を車載する場合は、トランク内の最も低温で振動の少ない位置に固定し、周囲に可燃物を置かない配置が推奨されます。​

消防法危険物を車で運搬する際の基準

消防法危険物運搬容器の基準と表示要件

危険物を車両で運搬する際、運搬容器は消防法の「危険物の規制に関する規則」で定められた材質、構造、最大容積の基準を満たす必要があります。運搬容器は落下試験などの性能基準に適合したものでなければならず、危険物の種類に応じて適切な容器を選択することが求められます。
参考)消防法(危険物)の解説|株式会社ヒイラギ

容器への表示義務として、危険物の品名、数量などを明記する必要があります。この表示は運搬中の事故発生時に消防機関が迅速に対応するために不可欠な情報であり、不適切な表示は法令違反となります。また、運搬容器は収納口を上方に向けて積載することが義務付けられており、液体の危険物が漏れるリスクを最小限に抑える工夫が必要です。​
さらに、日光の直射や雨水の浸透を防ぐため、危険物の性質に応じた防護措置を講じることが求められています。特に第4類引火性液体は温度上昇により蒸気圧が高まり、容器の破損や漏洩のリスクが増大するため、遮光シートや断熱材の使用が有効です。運搬容器を積み重ねる場合は高さ3メートル以下に制限されており、転倒や落下による事故を防ぐための規定です。​

消防法危険物の車両積載方法と混載禁止

危険物を車両に積載する際は、転落、落下、転倒、破損しないように固定することが基本です。消防法では危険物が著しく摩擦や動揺を起こさないように運搬することが求められており、適切な固定具やクッション材を使用する必要があります。​
種類の異なる危険物や災害を発生させるおそれのある物品との混載は厳しく制限されています。例えば、第1類の酸化性固体と第3類の禁水性物質を同一車両に積載すると、万が一の事故時に化学反応により大規模な火災や爆発を引き起こす可能性があります。指定数量の10分の1以上の危険物を運搬する場合、高圧ガスとの混載も禁止されており、類を異にする危険物の混載にも制約があります。
参考)http://www.e-kikenbutu.com/transport/index2.html

指定数量以上の危険物を運搬する場合、車両には黒地に黄色文字で「危」と表示した標識を前後の見やすい箇所に掲げなければなりません。標識のサイズは30cm~40cm四方と定められており、反射素材を使用することで夜間や悪天候時の視認性を確保する必要があります。また、危険物に適応する消火設備(消火器など)を車両に備え付けることが義務付けられています。​

消防法危険物運搬中の注意事項と事故対応

指定数量以上の危険物を車両で運搬する際、積替え、休息、故障などで車両を一時停止させる場合は、安全な場所を選び危険物の保安に十分注意する必要があります。住宅密集地や学校、病院などの近くでの長時間停車は避け、万が一の事故時の被害を最小限に抑える配慮が求められます。​
運搬中に危険物が著しく漏れるなど災害が発生するおそれがある場合、運転者は直ちに応急措置を講じるとともに、最寄りの消防機関などへ通報しなければなりません。この通報義務は指定数量未満の危険物運搬時にも適用されるため、少量だからといって油断は禁物です。応急措置としては、漏洩箇所の特定と拡大防止、火気の遮断、周囲への警告などが含まれます。​
危険物の荷降ろし作業では、誤注入やあふれなどの事故を防止するため、荷降ろしをする側と受ける側の双方の危険物取扱者が立ち会うことが推奨されます。危険物の種類、量、注入口、タンクの残量などをしっかりと確認し、静電気による事故を防止する措置(接地、導電性の高い靴や衣服の着用など)を取った上で作業を行う必要があります。​

消防法危険物取扱者の資格と車両運搬の関係

危険物取扱者には甲種、乙種、丙種の3種類があり、取り扱うことができる危険物の種類や権限に違いがあります。甲種は第1類から第6類までの全ての危険物を取り扱い、無資格者への立会いができます。乙種は免状を取得した類の危険物に限って取り扱いと立会いができ、第1類から第6類まで各類ごとに資格があります。丙種は第4類のうち指定された危険物(ガソリン、灯油、軽油など)についてのみ取り扱いができますが、立会いはできません。
参考)危険物の運搬に資格は必要?条件や取得方法など解説|カラフルキ…

車両で危険物を運搬する場合、指定数量未満であれば危険物取扱者の資格がなくても運搬可能ですが、消防法で定める運搬基準は遵守しなければなりません。一方、タンクローリー(移動タンク貯蔵所)で危険物を移送する場合は、移送する危険物を取り扱うことができる資格を持った危険物取扱者が乗車し、免状を携帯することが義務付けられています。
参考)よくあるご質問② 危険物の輸送について①

危険物運搬の仕事を本格的に行う場合、乙種第4類の資格取得が推奨されます。第4類は引火性液体を取り扱う資格で、ガソリンスタンドや燃料配送など、車を使用する職業で最も需要が高い資格です。乙種第4類の受験資格には特別な制限がなく、誰でも挑戦できるため、車を業務で使用する方にとって有益な資格といえます。​

消防法危険物積載車両のトンネル通行規制

危険物を積載した車両は、水底トンネルや長大トンネルなどで通行が禁止または制限されています。これは道路法第46条第3項の規定に基づき、トンネルの構造保全と交通の危険防止を目的とした措置です。通行禁止の対象となる危険物には、火薬類、高圧ガス、消防法で定める危険物などが含まれます。
参考)http://www.thr.mlit.go.jp/sakata/ROAD/nitiendo/pdf/nichien_kikenbutsu_kisei.pdf

具体的には、指定数量以上の危険物を積載した車両は、指定されたトンネルを通行できません。ただし、一部のトンネルでは通行制限として、特定の時間帯のみ通行が認められる場合や、事前届出により通行許可が得られる場合もあります。危険物運搬業務に従事する運転手は、運行ルートに規制対象のトンネルが含まれていないか事前に確認することが重要です。
参考)注意!危険物積載車両は水底・長大トンネル等で通行を禁止または…

また、車両の高さにも注意が必要で、タンクの高さが車両本体より高い場合、高さ検知棒を設置することが推奨されています。これにより、トンネルや高架下などの障害物との接触事故を未然に防ぐことができます。危険物積載車両の運転では、通常の貨物運搬以上に慎重な運行計画と安全確認が求められます。
参考)危険物積載車両とは? 何が載ってるの?

総務省消防庁:危険物運搬の概要ページ(運搬容器、積載方法、運搬方法の詳細な基準が記載)
MECCS:消防法で定められている危険物の種類と指定数量の詳細一覧表
住化分析センター:消防法危険物の分類と性質のフローチャート