フロントガラスはハンマーで叩いても絶対に割れません。
シートベルトカッターは、事故や水没などでシートベルトのバックルがロックして外れなくなった際に、ベルトを切断して脱出するための緊急用ツールです。その中でも「フック型」と呼ばれるタイプは、刃部がフック(鉤)状になっており、ベルトをフックに引っ掛けた状態で引くだけで安全にカットできる設計になっています。
普通のナイフや鋏と大きく違う点は、刃が常に露出していないことです。フックの内側に隠れた刃がベルトを捉えてから切断する構造のため、焦っている状況でも指を傷つけるリスクが少ない点が特徴です。これが安全設計ということですね。
また、シートベルトはナイロンやポリエステルを何重にも束ねた非常に丈夫な繊維素材でできており、一般的なハサミではなかなか切断できません。専用のカッターのフックに内蔵された鋭い刃であれば、1〜2秒で素早く切ることができます。これは使えそうです。
現在市販されている多くの製品は、緊急脱出ハンマー(窓ガラス割り)とシートベルトカッターが一体化した「2in1タイプ」です。一体型であれば1本を手にとるだけで2つの脱出行動に対応できるため、緊急時のパニック状態でも操作ミスが起きにくいというメリットがあります。
| タイプ | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| フック型カッター単体 | コンパクト、持ち運びやすい | ハンマーを別途所持している人 |
| ハンマー+カッター一体型 | 1本で2役、管理がしやすい | 車に緊急脱出ツールを初めて置く人 |
| ポンチ式+カッター一体型 | 力がいらず女性・高齢者向け | 力に自信のない方、家族用の車 |
シートベルトカッターを選ぶ際に見落とされがちなのが、品質・安全性の基準です。国民生活センターが2020年に行った調査では、緊急脱出ハンマーのテスト対象11社のうち、JIS D5716の認証を取得していた事業者はわずか2社のみでした。つまり、市場に出回っている製品の大多数は、公的な品質基準の認証を受けていないということです。
JIS(日本産業規格)の認証品かどうかが条件です。
JISマーク取得品は、ガラス破砕性能やシートベルト切断性能について一定の水準をクリアしていることが第三者機関によって確認されています。一方で、認証のない格安品の中には、耐熱試験で変形したり、耐寒試験後に割れてしまうものも確認されています。国民生活センターのテストでは、4銘柄で柄の部分に耐熱性の問題が見つかりました。
夏の車内は最大80℃前後に達することも珍しくありません。車を炎天下の駐車場に放置した場合、ダッシュボード付近の温度はさらに上がります。そんな環境に耐えられない品質の製品を積んでいても、実際の緊急時に役に立たない可能性があります。痛いですね。
品質を確認するためのポイントは以下の通りです。
購入先の観点では、ホームセンターやカー用品店(オートバックス、イエローハットなど)の店頭で実物を手に取って確認できる環境が理想的です。通販でも商品説明欄にJIS規格番号が記載されているものを優先して選ぶと安心です。つまり安さだけで選ばないことが原則です。
また、国土交通省が行った市場製品の破砕性能調査(2021年)によれば、金づちタイプとピックタイプのハンマーについては、JIS規格の試験方法に準拠して評価した結果、性能に一定の差が確認されています。同じ価格帯であっても、認証の有無でいざというときの信頼性が大きく変わるため、購入前に確認する習慣をつけておくと良いでしょう。
参考:国民生活センター「自動車用緊急脱出ハンマーによるガラスの破砕」
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20200820_1.html
シートベルトカッターやフック付きの緊急脱出ハンマーを用意しても、置き場所が間違っていれば意味がありません。国民生活センターの調査では、緊急脱出ハンマーを所持している人の中に、トランク等の「手が届かない場所」に積載しているケースが確認されています。これは非常に危険な状況です。
正しい設置場所が条件です。
国土交通省のガイドラインが推奨する設置場所は「運転席から手を伸ばしてすぐ届く位置」です。具体的には次のような場所が代表的です。
最も重要な確認ポイントは「シートベルトを着用したまま手が届くかどうか」です。事故や水没時にはシートベルトがロックして身動きが取れなくなることがあります。腕を精一杯伸ばした状態で触れる場所にあるかどうか、実際に座って試してみることをおすすめします。
水没事故の場合、車が水に沈みはじめてからパワーウィンドウが動かなくなるまでは数十秒程度しかありません。水没が進んだ状態での脱出猶予は、概ね1分以内と言われています。この短時間の中で「ツールを探す」という行動が加わると、それだけで致命的なタイムロスになります。
固定方法については、専用ホルダーやベルクロテープ式のホルダーを使うのが基本です。ただポケットに入れているだけでは、走行中の振動や急ブレーキで飛んでしまうことがあります。振動で床に転がってしまうと、いざという時に全く手が届かなくなる可能性があるため、必ず固定することが必須です。
参考:国土交通省「台風の前に車両からの脱出手順の確認を!」
https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha08_hh_003793.html
シートベルトカッターとセットで使う緊急脱出ハンマーについて、多くの人が「叩けばどのガラスでも割れる」と思い込んでいます。しかし実際には、ハンマーで割れないガラスが存在します。それが「合わせガラス」です。
合わせガラスとは、2枚以上の板ガラスの間に柔軟な樹脂フィルム(中間膜)を挟んで接着した構造のガラスで、衝撃を加えても中間膜によって破片が飛散しにくく、貫通もしにくい特性を持っています。乗用車のフロントガラスはすべて合わせガラスです。これが原則です。
問題なのは、静粛性向上のために一部メーカーがドアガラスにも合わせガラスを採用しはじめていることです。国民生活センターの調査によれば、調査対象の自動車製造事業者8社の回答では、約2割の車種のドアガラスに合わせガラスが使用されていることが明らかになりました。つまり5台に1台の割合です。
さらに同調査では、緊急脱出ハンマーを所持している人の4割が「ハンマーで割れないガラスがある」ことを知らなかったことも報告されています。意外ですね。
自分の車のガラスが強化ガラスか合わせガラスかを確認するには、車のガラスの端(下部や端部)にある刻印を見るのが確実です。
合わせガラスを採用した車種に乗っている場合は、ハンマーで割れる窓の位置を把握しておく必要があります。後部座席のサイドガラスやリアガラスが強化ガラスのケースもあるため、事前に全ての窓のガラスの種類を確認しておくことが大切です。
ディーラーや車両のオーナーズマニュアルで確認するか、ガラスの端の刻印を実際に見て調べる、この2つの方法が実用的です。自分の車のガラスの種類を把握できていれば、いざという時に迷わず行動できます。
参考:国民生活センター「自動車のどの箇所のガラスが割れるか」
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20200820_1.html
カーマニアや車好きの方ほど、緊急脱出ツールを「一応積んでいる」状態で満足してしまいがちです。しかし実際に緊急時になって初めて手に取ると、カバーの外し方がわからない・フックの向きが逆だったという事態が起こります。国民生活センターのテストでも、ハンマーを使った経験がある188人のうち89人が何らかの理由でガラスを破砕できなかったと報告されています。約半数が失敗しているということですね。
フック付きシートベルトカッターを実際に使う基本手順は以下の通りです。
事前に「模擬体験」をしておくことが有効です。実際にシートベルトを切る必要はありませんが、ツールを手に取ってカバーを外す動作、フックを引っ掛ける方向などを確認するだけで、緊急時の動作が格段にスムーズになります。
また、車好きの方が意外と見落としがちなポイントがあります。それは「長期間積みっぱなしにしている製品の経年劣化」です。プラスチック製のホルダーやカバーは、夏の高温・冬の低温を繰り返すうちに劣化して割れやすくなります。特に樹脂素材の柄やカバーが変形すると、緊急時にカバーがうまく外れない、あるいはカバーが外れた状態でツールが剥き出しになるリスクが生じます。
推奨される点検の目安は1〜2年ごとです。車の定期点検のタイミングに合わせて、緊急脱出ツールの状態も一緒に確認するルーティンを作るのが、実用的な維持管理の方法です。これだけ覚えておけばOKです。
さらに見落とされがちな独自視点として、「後部座席の乗員がカッターを使える状況かどうか」という問題があります。事故や水没の状況では、後部座席の乗客がシートベルトをロックしたまま動けなくなるケースも想定されます。家族全員分の脱出に対応するなら、後部座席エリアにも1本カッターを固定しておくことが理想です。前席に1本・後席に1本の合計2本体制が、家族連れのドライバーにとって最も安心できる備えといえます。
参考:自動車安全運転センター「指導ガイド 災害時緊急脱出」
https://www.jsdc.or.jp/Portals/0/pdf/library/HP%20%E6%8C%87%E5%B0%8E%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%80%80%E7%81%BD%E5%AE%B3%E6%99%82%E7%B7%8A%E6%80%A5%E8%84%B1%E5%87%BA.pdf

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