センターラインが白い実線で引かれている道路は、通常片側の車線幅が6メートル以上ある比較的広い道路です。一見すると追い越しのためのスペースが十分にあるように思えますが、この実線は法令による交通規制に基づいて設置されています。交差点付近30メートル以内は法定により追い越しと追い越しのための進路変更が禁止されており、こうした場所では白の実線が標示されるのです。
追い越し禁止エリアに実線が引かれるのは、交差点付近やカーブ、勾配のある場所など、対向車の状況が見えにくく危険な区間だからです。スペースの広さと安全性は別問題であり、道路管理者は実際の視認性や交通流量を考慮して、はみ出し通行を制限する必要があると判断しているのです。
センターラインの色分けは交通安全の指標となります。白の実線がセンターラインの場合、その右側へのはみ出し通行は原則禁止です。一方、黄色の実線は「追い越しのために車線右側にはみ出して通行することが禁止」されており、文言上はより厳格です。
しかし実際のところ、白の実線は工事現場の迂回や駐停車車両を避ける必要がある場合は、ウインカーを出して慎重に右側にはみ出すことが認められています。黄色の実線でも同様ですが、黄色はより危険度が高いエリアに引かれるため、よほどの事情がない限りはみ出しを避けるべき区間です。このように色と線の種類で、段階的な規制強度が設定されているのです。
白の実線は「グレーゾーン」のサインであり、完全に禁止ではなく「控えるべき」という位置づけです。しかし、だからといって無理な判断は許されません。白の実線での車線変更や追い越しを検討する場合、以下の条件を全て満たす必要があります。
■ 対向車の有無を完全に確認できる視界が得られる
■ 十分な距離とスピード差がある場合のみ実施可能
■ ウインカーで事前に合図を出す
■ 周囲の車両が予測不可能な動きをしていない
これらの条件が一つでも満たされない場合は、白の実線でも追い越しを控えるべきです。特にトンネル内や急カーブの手前、交差点付近では視認性が低下するため、実線の存在以前に追い越しそのものが極めて危険な行為となります。
白の実線が設置される典型的なエリアを理解することで、その意図が明確になります。警察庁の交通規制基準では「舗装された部分の片側の幅員が6メートル未満の道路において、車両が道路の右側部分にはみ出して追越しを行うことを禁止する必要があるときは、追越しのための右側部分はみ出し通行禁止規制を行う」と定められています。
これは逆説的に見えるかもしれませんが、実際には片側6メートル未満の狭い道路で物理的に追い越しが困難な場合に破線が引かれ、その他の危険箇所に白の実線が引かれるということです。交差点手前、峠の頂上付近、トンネル内、見通しの悪い急カーブなど、こうした場所では白の実線が引かれることが多いのです。
危険性判断と道路幅という2つの基準から、白と黄色の実線が使い分けられているわけです。
実線による規制の本質を理解すると、なぜ白の実線でも追い越しを避けるべきなのかが明確になります。もし車線変更そのものが重大な事故につながるレベルで危険なら、道路管理者は黄色の実線を引いたり、ポールやガードレールを設置して物理的に制限します。
白の実線は「そこまで厳しく制限するほどではないけど、注意してほしい」という位置づけですが、これはあくまで「最低限の自由度を残している」という意味です。交通の流れを完全に制限すれば、渋滞や工事で進路を変える必要が生じたときに対応ができなくなるためです。
つまり、白の実線は法的には「禁止」ではなく「控えるべき」という指標ですが、実際の運用では、ドライバーの判断力と安全確認能力に依存しています。自分の技術や周囲の状況判断に自信がない場合は、白の実線でも追い越しを控えるのが無難です。
追い越しによって得られる時間的な利益と、事故のリスクを比較すれば、大多数のケースで追い越しを避ける判断が合理的だからです。
JAF公式:センターラインの白色の破線と実線、黄色の実線の違い
(白、黄色の実線と破線の公式的な定義と規制内容の正確な説明が記載されています)
AUTOC-ONE:黄色線と白線、実線と破線は何が違う?道路に引かれた線のナゾ
(道路線の種類ごとの具体的な使用場所と安全性に関する詳細な解説があります)
JAF TRAINING:車線変更違反の罰金・点数は?違反ケースと場所別のルール
(白の実線での車線変更の法的な位置づけと、実際の違反判定基準について説明されています)