2025年の労働基準法関連の改正は、働き方の多様化と労働者の健康確保を目的とした大規模な見直しとなっています。特に育児・介護休業法の改正では、4月と10月に段階的に施行され、企業には柔軟な働き方を実現するための措置導入が義務付けられました。また、約40年ぶりとなる労働基準法の抜本的改正に向けた検討も進められており、勤務間インターバル制度の義務化や連続勤務日数の上限規制が議論されています。
参考)労働基準法改正の変更点!2025年の人事労務担当者向け法令改…
労働基準法改正の背景には、深刻化する人手不足への対応と、労働者の健康と安全を守る必要性があります。2024年から段階的に適用されてきた時間外労働の上限規制に続き、2025年は育児や介護との両立支援、障がい者雇用の促進、労働者の能力開発支援など、より包括的な働き方改革が実施されます。
参考)労働基準法改正2025:最新情報と対応ポイント
車を運転する仕事に従事する方にとっても、2025年の法改正は重要な影響を与えます。特に運送業界では、2024年4月から適用された改善基準告示により、トラックドライバーの拘束時間や休息期間が厳格化されており、この流れは2025年以降も継続します。通勤時の運転や車両を使用する業務においても、労働時間管理の厳格化が求められる時代となっています。
参考)運送業の2025年問題とは?課題と対処法、具体的な影響につい…
2025年4月1日から施行される育児・介護休業法の改正では、子育てや介護と仕事の両立をより実現しやすくするための制度が導入されました。主な変更点として、子の看護休暇の見直しにより、小学校就学前の子を持つ労働者が年5日(子が2人以上の場合は年10日)の休暇を取得できるようになります。
参考)2025年の労務に関する主な法改正について
所定外労働の制限(残業免除)の対象が、従来の3歳未満から小学校就学前の子を養育する労働者まで拡大されました。これにより、より長い期間にわたって残業を免除してもらえる権利が保障されます。短時間勤務制度の代替措置としてテレワークが正式に追加され、企業は柔軟な働き方の選択肢を提供できるようになりました。
参考)https://jpn.nec.com/king-of-time/column/202501/01.html
育児休業取得状況の公表義務の適用範囲が、従業員1,000人超の企業から300人超の企業へと拡大されました。これにより、中堅企業においても育児休業の取得促進と情報開示が求められます。介護に関しても、介護休暇を取得できる労働者の要件が緩和され、介護離職防止のための雇用環境整備や個別の周知・意向確認が義務化されました。
参考)人事・労務に関わる2025年(令和7年)施行の重要法改正まと…
厚生労働省の「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」では、各改正内容の詳細と企業が取るべき対応が図解付きで説明されています
2025年10月1日から施行される「柔軟な働き方を実現するための措置」は、3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者を対象とした新しい制度です。企業は以下の5つの措置から2つ以上を選択して導入することが義務付けられ、労働者はその中から1つを選んで利用できます。
参考)2025年・2026年 労働法改正・税制改正 最新情報まとめ…
選択可能な5つの措置は次の通りです。①始業時刻等の変更:フレックスタイム制度や時差出勤制度の導入により、フルタイムでの柔軟な働き方を実現します。②テレワーク等:月10日以上利用可能な在宅勤務やサテライトオフィス勤務を提供し、出社に伴う時間や負担を軽減します。③保育施設の設置運営等:企業主導型保育事業や保育費用の助成などを行います。
参考)育児・介護休業法改正(10月1日施行)で変わる柔軟な働き方と…
④新たな休暇の付与:年10日以上の育児目的休暇(養育両立支援休暇)を新設・拡充します。⑤短時間勤務制度:1日原則6時間の法定を上回る短時間勤務制度を提供します。企業は措置を選択する際に、労働者の過半数組合または過半数代表者からの意見聴取が義務付けられています。
就業規則の変更が必要となるため、選択した措置を就業規則に明記し、労働基準監督署に届け出る必要があります。また、労働者への措置内容の周知も義務となっており、社内説明会の開催やマニュアルの配布などが推奨されます。
参考)柔軟な働き方を実現するための措置|育児休業制度特設サイト|厚…
厚生労働省の「柔軟な働き方を実現するための措置」特設サイトでは、各措置の具体的な運用方法や導入事例が紹介されています
労働基準法における残業時間の上限規制は、2019年の働き方改革関連法施行により法的拘束力を持つようになりました。原則として、時間外労働の上限は月45時間・年間360時間と定められており、これを超える残業をさせるには36協定の締結が必要です。36協定とは労働基準法第36条に基づく労使協定で、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える労働を認めるための取り決めです。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/000463185.pdf
特別条項付き36協定を締結した場合でも、厳格な上限規制が適用されます。年間の残業時間は720時間以内、1ヶ月で100時間未満(休日労働含む)、複数月平均で80時間以内(休日労働含む)という3つの条件を満たす必要があります。また、月45時間を超える残業が認められるのは年間最大6回までという制限もあります。
参考)残業時間が上限45時間を超えたら会社に罰則はある?規制をふま…
これらの規制に違反した場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。2025年においても、これらの基本的な上限規制は継続して適用されており、企業は勤怠管理システムの導入やアップデートにより、労働時間を正確に管理することが求められています。特にトラック運転手などの自動車運転業務では、年960時間の特例上限が適用されていますが、拘束時間や休息期間の規制も厳格化されています。
参考)残業時間の上限規制とは?年間・月間の上限や36協定について解…
厚生労働省の「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」では、36協定の基本から特別条項の詳細まで、図解を交えて説明されています
2025年に向けて、約40年ぶりとなる労働基準法の抜本的改正の検討が進められています。労働基準関係法制研究会が2025年1月に報告書を取りまとめ、その中で勤務間インターバル制度の義務化が重要なテーマとして取り上げられました。勤務間インターバル制度とは、終業時刻から次の始業時刻までに一定の休息時間を設ける制度で、労働者の健康確保と過重労働の防止を目的としています。
参考)40年ぶりに大改正!?労働基準法 勤務間インターバルの義務化…
報告書では、休息時間を原則11時間とすることを軸に、抜本的な導入促進と義務化を視野に入れた法規制の強化について検討する必要があるとされています。現在は努力義務となっている勤務間インターバル制度ですが、将来的には法的義務となる可能性が高まっています。また、13日を超える連続勤務の原則禁止、つまり14日以上の連続勤務を禁止する規制も同時に検討されています。
参考)勤務間インターバル11時間を軸に法規制の強化について検討へ …
政府の目標として、2025年までに勤務間インターバル制度を導入している企業割合を15%以上とすることが掲げられています。しかし、業種や職種によっては実施が困難な場合もあり、やむを得ない事情がある場合の例外措置や運用上の留意点についても議論が続けられています。副業の割増賃金の算定方法の見直しや、法定休日の明確化義務なども含め、労働時間法制全体の見直しが進められています。
参考)小林労務コラム 「連続勤務の上限規制等 - 勤怠管理コーヒー…
福島テレビの報道では、勤務間インターバル義務化に向けた最新の検討状況と企業への影響が詳しく解説されています
車を運転する業務に従事する労働者にとって、2025年の労働基準法関連の改正は重要な影響を与えています。特に運送業界では「2024年問題」として知られる労働時間規制の強化が2024年4月から段階的に適用されており、その影響は2025年以降も継続します。トラックドライバーなど自動車運転業務では、年間960時間の時間外労働上限規制に加えて、改善基準告示による拘束時間や休息期間の厳格な制限が課されています。
参考)2025年春、物流業界に影響する「新制度」とは?
改善基準告示の改正により、1日の拘束時間は原則13時間以内、延長しても最大15時間までとされ、休息期間は原則連続11時間の確保が求められるようになりました。これにより、従来の「泊まり込み連続運行」が実質的に困難となり、運行計画の大幅な見直しが必要となっています。年間の拘束時間も3,516時間から3,300時間へと216時間削減され、月単位でも最大310時間(年6回まで)という上限が設定されました。
参考)改善基準告示とは?荷主として1日13時間ルールを理解し、対策…
軽貨物ドライバーにも2025年4月から新しい労働時間のルールが適用されており、拘束時間の上限や休憩の新基準が設けられました。違反した場合には罰則や保険適用除外、収入ダウンといったリスクがあるため、シフト管理アプリの活用や勤務記録の適切な管理が推奨されています。営業用トラック(緑ナンバー)だけでなく、自家用トラック(白ナンバー)の運転者も改善基準告示の対象となり、個人事業主も実質的に同様の基準の遵守が求められています。
参考)2025年法改正で変わる!軽貨物ドライバーの労働時間・拘束時…
長距離輸送の制約や人手不足の深刻化により、運送業界全体の構造改革が進められており、企業は勤怠管理システムの導入や配送ルートの最適化、荷待ち時間の削減など、多角的な対応が必要となっています。通勤に車を使用する一般企業の従業員にとっても、労働時間管理の厳格化により、移動時間の扱いや業務時間の明確化が求められる時代となっています。
参考)【2025年最新版】運送業の36協定とは?罰則・上限時間と改…
厚生労働省の「トラック運転者の改善基準告示」特設ページでは、拘束時間や休息期間の具体的な基準と計算方法が詳細に説明されています