トヨタ プロボックスは2002年の登場時から2014年まで、5速MTが設定されていました。しかし、2014年8月のマイナーチェンジを機に、MT仕様は完全に廃止され、現在は全グレードでCVT(無段変速機)のみの設定となっています。
この変更の背景には、商用車としての使いやすさを重視した結果があります。CVTはクラッチ操作が不要で、運転の負担を軽減できるため、営業車として長時間運転するドライバーにとってメリットが大きいとされました。また、燃費性能の向上も期待できることから、コスト重視の商用車市場では合理的な判断だったと考えられます。
しかし、この決定は多くのMT愛好家から惜しまれる結果となりました。プロボックスの5速MTは「都市部では完璧」と評価されるほど、ギア比が絶妙に設定されており、運転の楽しさを提供していたからです。
近年、プロボックスのMT復活を求める声が各所で高まっています。自動車メディアやユーザーレビューサイトでは「お願いだからMT復活を!!!」といった切実な声が多数寄せられています。
特に注目すべきは、商用車としてだけでなく、趣味の車としてプロボックスを選ぶユーザーが増加していることです。元自衛官のキャンプ愛好家が「MTのトヨタ プロボックス」を最高の相棒として選んだ事例では、SUVにはないMT設定の魅力が語られています。
この背景には、現在の自動車市場でMT車の選択肢が極端に少なくなっていることがあります。特にSUVカテゴリーでは「最近のSUVはどれもMTの用意がない」という状況で、プロボックスのMT復活への期待が高まっているのです。
また、カスタム界隈でもプロボックスの人気が上昇しており、ドレスアップやクロスオーバー化を楽しむユーザーが増加しています。こうしたユーザーにとって、MT仕様は車との一体感を得られる重要な要素となっています。
かつてのプロボックス 5速MT仕様は、多くのドライバーから高く評価されていました。その最大の魅力は、都市部での使用に最適化されたギア比設定にありました。
具体的には、以下のような特徴がありました。
実際にMT仕様を使用していたユーザーからは「大したパワーはないですけど、車体が軽いから、踏めばストレスなく加速できます」という評価が寄せられています。
また、プロボックスのMT仕様は約80万円程度の中古車価格で入手可能で、カスタマイズを含めても150万円程度で理想的な仕様に仕上げることができるという経済性も魅力の一つでした。
プロボックスのMT復活について、技術的な可能性を検討すると、決して不可能ではないことがわかります。
最も現実的な方法として、カローラフィールダーのMT流用が挙げられています。カローラフィールダーには現在もMT設定があり、プロボックスと同じトヨタ車であることから、技術的な互換性は高いと考えられます。
さらに、ユーザーからは単純な5速復活だけでなく、6速化への要望も出ています。具体的には。
この6速目は「90km/h以上出さなければ使い物にならない」ような設定とすることで、高速道路での燃費向上と快適性を両立できるとされています。
エンジンについても、現行の1.5L 1NZ型エンジンは長年にわたってトヨタ車に広く採用されており、MT仕様での実績も豊富です。アフターパーツ市場でもターボやスーパーチャージャーなどの過給機が用意されているほど、拡張性の高いエンジンです。
プロボックスのMT復活には、いくつかの課題も存在します。
市場性の問題
商用車市場では、運転の簡便性が重視される傾向があり、MT仕様の需要は限定的です。トヨタとしては、コストをかけてMT仕様を復活させても、十分な販売台数を確保できるかという懸念があります。
法規制への対応
現在の排出ガス規制や燃費基準に対応するため、MT仕様でも高い環境性能が求められます。CVT仕様と同等以上の燃費性能を実現する必要があり、開発コストが増大する可能性があります。
生産効率の問題
現在の生産ラインはCVT専用に最適化されており、MT仕様を追加するには設備投資が必要になります。
しかし、希望的な要素もあります。トヨタは最近、GRシリーズなど走りを重視したモデルでMT仕様を積極的に展開しており、MT需要への理解を示しています。また、プロボックスの5ナンバーワゴン復活構想も浮上しており、その際にMT仕様が同時に復活する可能性も考えられます。
価格設定については、5ナンバーワゴンが復活した場合、200万円程度での展開が期待されており、MT仕様もこの価格帯で実現できれば、一定の需要は見込めるでしょう。
プロボックスのMT復活は、単なる懐古趣味ではなく、現在の自動車市場におけるMT車不足を補う重要な選択肢となる可能性を秘めています。ユーザーの熱い要望と技術的な実現可能性を考慮すると、トヨタの英断に期待が高まります。