オールテレーンタイヤを履いていても、チェーン規制区間では通行できずに引き返すことになります。
オールテレーンタイヤ(AT タイヤ)は、舗装路から未舗装路まで幅広く対応できるよう設計されたタイヤです。ブロック状の大きなトレッドパターンが特徴で、泥道や砂利道でのグリップ力に優れています。雪道でも一定の走行性能を発揮するため、「スタッドレスタイヤの代わりになる」と誤解されがちです。
しかし実際には、ATタイヤはゴムの硬度やトレッドの設計において「冬用タイヤ」の要件を満たさないケースが多くあります。国内では、冬用タイヤの性能指標として「スタッドレス性能」または「スノータイヤマーク(M+S表示)」と「スリーピークマウンテン・スノーフレークマーク(3PMSF)」が基準になっています。
ATタイヤのなかには M+S 表示を持つ製品もあります。ただしM+S表示はメーカーの自己申告であり、厳密な第三者試験をクリアしたことを保証するものではありません。日本の冬用タイヤ規制においては、M+S表示があっても規制の対象外とみなされる運用が多い点に注意が必要です。
つまりATタイヤ=冬用タイヤではない、が原則です。
特に本格的な積雪路や凍結路では、スタッドレスタイヤに比べてATタイヤの制動距離が大幅に伸びることが実証されています。JAFの測定データでは、時速40km走行からの制動距離がスタッドレスタイヤ約13mに対し、M+S表示のある一般タイヤでは約50m以上に達した事例も報告されています。東京ドームのグラウンドの長辺が約130mであることを考えると、その差は非常に大きいことがわかります。
雪道規制には大きく分けて「冬用タイヤ規制」と「チェーン規制」の2種類があります。この2つは内容がまったく異なり、混同すると大きなリスクにつながります。
冬用タイヤ規制は、スタッドレスタイヤや(一部の基準を満たす)スノータイヤを装着していれば通行が認められる規制です。この場合、ATタイヤがM+S表示を持ち、かつ道路管理者がその装着を認める状況であれば通行できる可能性があります。ただし、M+S表示があっても現場の警察官や道路管理者の判断で通行を止められる事例があります。
一方のチェーン規制は、文字どおりタイヤチェーンの装着が必須の規制です。スタッドレスタイヤだけでも通行不可です。2019年から国土交通省が指定する特に危険度が高い13区間(後に28区間に拡大)で、大雪時にチェーン規制が発動されるようになりました。これが重要なポイントです。
チェーン規制が発令された区間では、ATタイヤはもちろん、スタッドレスタイヤ単体でも走行は禁止されます。この規制に違反した場合、道路交通法に基づき6ヵ月以下の懲役または10万円以下の罰金が科される可能性があります。罰金刑です。
チェーン規制区間として指定されている代表的な場所としては、上信越自動車道・碓氷軽井沢IC〜佐久IC間、中央自動車道・須玉IC〜長坂IC間、山陽自動車道・六日市IC〜鹿野IC間などがあります。冬に頻繁に山間部を走行する場合は、これらの区間を事前に把握しておくことが重要です。
国土交通省:チェーン規制対象区間の詳細(タイヤチェーン装着規制について)
「ATタイヤは絶対に冬用タイヤ規制をクリアできないのか」というと、そうとも言い切れません。条件次第でクリアできる場合があります。
まず、ATタイヤに3PMSFマーク(スリーピークマウンテン・スノーフレーク)が刻印されている製品の場合、国内の冬用タイヤ規制において「スノータイヤ」として認められる可能性が高くなります。3PMSFは欧州の厳格な試験基準をクリアした製品にのみ刻印が許可されており、M+S表示とは信頼性が大きく異なります。これが条件です。
BFグッドリッチの「All-Terrain T/A KO2」やトーヨータイヤの「OPEN COUNTRY A/T III」など、3PMSFマーク取得済みのATタイヤも存在します。これらの製品であれば、軽度の積雪路や圧雪路での走行においてスタッドレスタイヤに近い性能を期待できる場面もあります。
ただし、3PMSFマーク付きのATタイヤでも、チェーン規制が発令されている区間では走行が認められません。この点は例外なしです。また、現地の積雪状況や気温によっては、警察官や道路管理者の裁量で通行を制限される場合もあります。
購入前に3PMSFマークの有無をタイヤメーカーの公式サイトや販売店に必ず確認しましょう。確認する、この一行動がトラブルを防ぎます。
| タイヤの種類 | 冬用タイヤ規制 | チェーン規制 |
|---|---|---|
| スタッドレスタイヤ | ✅ 通行可 | ❌ 通行不可(チェーン必要) |
| ATタイヤ(3PMSFあり) | ⚠️ 条件付きで可の場合あり | ❌ 通行不可 |
| ATタイヤ(M+Sのみ) | ❌ 多くの場合通行不可 | ❌ 通行不可 |
| 夏用タイヤ(チェーンなし) | ❌ 通行不可 | |
| 夏用タイヤ+チェーン装着 | ✅ 通行可 |
ATタイヤで冬の山道を走行する際、規制をクリアできたとしても走行中の安全リスクは別問題として存在します。これは見落とされがちな点です。
まず凍結路での制動距離の問題があります。気温がマイナス10℃以下になると、ATタイヤのゴムは急激に硬化します。ゴムが硬くなると路面への密着性が低下し、ブレーキをかけてから停止するまでの距離が大幅に伸びます。スタッドレスタイヤは低温環境でも柔軟性を保つシリカ配合ゴムを使用しているため、この差は気温が下がるほど顕著になります。
次に、横風や轍(わだち)による横滑りのリスクがあります。ATタイヤはトレッド中央部のブロックが大きく独立しているため、圧雪路の轍にはまると横方向の力を受けやすくなります。特に高速道路での走行では、轍によるハンドル取られが大きな事故につながります。厳しいところですね。
さらに、ATタイヤのロードノイズの問題も見逃せません。積雪路・圧雪路ではATタイヤの大きなブロックが雪を噛む際に異音が発生しやすく、路面の変化(圧雪からアイスバーンへの移行など)に気づきにくくなる場合があります。
雪道走行中に路面状況が変化した際は、急ハンドルや急ブレーキは厳禁です。速度を落として車間距離を3倍以上に広げることが基本の対策になります。万が一のスリップに備えて、布製チェーンや簡易スプレーチェーンを車内に常備しておくと安心です。特にATタイヤで冬山に行く場合は、チェーン携行が事実上の必須装備と考えてください。
雪道の規制情報を正確に把握するためには、出発前に複数の情報源を確認することが重要です。情報は最新のものを使うことが大前提です。
最も信頼性が高いのは、国土交通省の「道路情報提供システム(JARTIC)」および各地方整備局が提供するリアルタイム規制情報です。JARTICのウェブサイトでは、現在発令中の通行止めや規制情報を地図上で確認でき、スマートフォンからもアクセスできます。
JARTIC(一般財団法人日本道路交通情報センター):リアルタイム道路規制情報
高速道路を利用する場合は、NEXCO各社(東日本、中日本、西日本)の公式サイトやアプリ「ドラぷら」「西日本高速道路ドライブサポート」でも規制情報を確認できます。出発の1〜2時間前に再確認する習慣をつけると、直前の規制発令にも対応できます。
一般道については、都道府県警察の交通情報や地方自治体の道路情報ページも有効です。特に山間部の県道や国道は、幹線道路とは独立して規制がかかることがあるため、個別に確認が必要です。
また、Googleマップの「ライブ交通情報」機能でも一部の規制情報が反映される場合がありますが、規制の詳細(冬用タイヤ規制かチェーン規制かなど)まで表示されないことが多いため、補助的な確認ツールとして使うのが適切です。規制種別の確認はJARTICが基本です。
出発前に確認するのはもちろんですが、長時間の山岳ドライブ中は途中の道の駅やSAで最新情報を都度チェックする習慣が安全につながります。これだけ覚えておけばOKです。
ドラぷら(NEXCO東日本):高速道路のリアルタイム規制・チェーン規制情報

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