コンパクトカーに乗っているだけで、GRヤリスより速いパワーウェイトレシオになります。
2026年1月9日から11日にかけて幕張メッセで開催された「東京オートサロン2026」。日産自動車と日産モータースポーツ&カスタマイズ(NMC)が合同ブースで披露したのが「AURA NISMO RS Concept」です。会場では「変態すぎる」「日産はかくあるべき」といった声が飛び交い、SNSでも大きな反響を呼びました。
このクルマの誕生には、NMCのモータースポーツパワートレイン開発部 主管・片倉丈嗣氏の強い意志がありました。片倉氏は「レースカーをいきなり作ると量産車へのフィードバックに時間がかかる。だから量産にすぐフィードバックできる検証車を作りたかった。どうせ作るなら市販も匂わせたい」と語っています。単なるショーカーではなく、実際に走らせて技術を磨くことを前提とした「本物志向」が貫かれています。
ベース車は既存の市販車「ノート オーラ NISMO」です。そこにミドルサイズSUV「エクストレイル NISMO」のパワートレインをそのまま搭載するというアプローチをとりました。車格でいえば2段階ほど上のエンジンユニットを、コンパクトカーに押し込んだわけです。開発担当者は「1.5リッター VCターボがギリギリ入った」とも述べており、文字通りギリギリの挑戦だったことがわかります。
コンセプトは「e-POWER / e-4ORCEの性能MAXポテンシャルの具現化」。量産技術の延長線上にありながら、レースで鍛え上げた知見を融合させた次世代NISMOの象徴です。
日産公式プレスリリース:AURA NISMO RS Conceptの公式スペックと開発コンセプト詳細
スペックの違いを見ると、ニスモ オーラ RSがベースのオーラ NISMOからどれほど大きく進化したかが一目でわかります。
| 項目 | NISMO RS(概念) | NISMO(ベース) |
|---|---|---|
| 全長 | 4,260mm | 4,120mm |
| 全幅 | 1,880mm | 1,735mm |
| 全高 | 1,485mm | 1,505mm |
| 車両重量 | 1,490kg | 1,390kg |
| 発電エンジン | 1.5L VCターボ | 1.2L NA |
| エンジン最高出力 | 106kW(144PS) | 60kW(82PS) |
| フロントモーター | 150kW(204PS)/ 330Nm | 100kW(136PS)/ 300Nm |
| リアモーター | 100kW(136PS)/ 195Nm | 60kW(82PS)/ 150Nm |
| 4WDシステム | NISMO tuned e-4ORCE | 4WD(e-POWER) |
| ブレーキ(前) | 対向4ポッド φ355mm | 片押し1ポッド φ258mm |
| ブレーキ(後) | 対向2ポッド φ280mm | ドラム式 |
| タイヤ | 245/45R18 | 205/50ZR17 |
パワーウェイトレシオはオーラNISMO比で約30%向上。同じパワートレインを積むエクストレイルNISMOの車重1,870kgと比べると、ニスモ オーラ RSは1,490kgですから約380kg軽く、エクストレイルの約80%の重量です。重さ比較でイメージするなら、スーツケース7個分(1個約55kg換算)を外した分だけ軽い、ということになります。
つまり同じパワーを、より軽いボディで使えるわけです。
注目すべきはブレーキシステムの大幅強化です。ベースのオーラNISMOはフロントが片押し1ポッドにφ258mmのソリッドディスク、リアはドラム式という構成でした。対してRSコンセプトは、フロントが対向4ポッドのベンチレーテッドディスク(φ355mm)、リアが対向2ポッドのソリッドディスク(φ280mm)と、完全にレーシング仕様へ刷新されています。ローター径の違いでいえばフロントは約38%大径化されており、「走る」と同じレベルで「止まる」にも本気を出していることがわかります。
ホイールはNISMOブランドが誇るレーシングホイール「NISMO LM GT4」の18インチ×9.0Jを採用し、タイヤはミシュランのスポーツタイヤ「パイロットスポーツ4」(245/45R18)を組み合わせています。これが高性能です。
autoc-one:ニスモ オーラ RSの予想スペックをベース車と詳細比較した記事
ニスモ オーラ RSのデザインコンセプトは「Evolution of Agile Electric City Racer」。オーラNISMOが持つデジタルで都市的なアグレッシブさをさらに深化させ、電動スポーツとしての塊感と存在感を高めることを目指しました。
最も目を引くのは、左右で145mmも拡大されたフェンダーです。幅で言うと単行本1冊分(約15cm)をボディの左右に追加したイメージです。これはトレッドの拡大に対応するためのダブルブリスターフェンダーで、視覚的な迫力だけでなく、走行安定性の向上にも直結しています。フェンダー上部の膨らみをあえて抑えることで前面投影面積の増加を最小限に抑え、空気抵抗も考慮した形状です。
全高は20mmローダウンされており、より地面に貼り付くような低重心プロポーションを実現。全体のシルエットは「低く、広く、鋭く」を追求した結果です。フロントスポイラー、サイドスカート、リアディフューザーにはNISMOのシンボルであるレッドアクセントが施されており、これがデザインの引き締め役を担っています。
空力面での工夫も見逃せません。フロントバンパーの形状は空気をスムーズに車体の上面・側面へ流すことを重視し、タイヤハウス内の空気を抜く形状のフロントフェンダーも装備。専用リアスポイラーはルーフエンドより後方に位置させることで、ルーフとウイング下面に生じる負圧が互いに相殺するのを防ぎ、ダウンフォースを最大化しています。
ボディカラーは専用新色の「ダークマット NISMOステルスグレー」を採用。NISMOのコミュニケーションカラーであるステルスグレーをマット仕上げに進化させた色で、デザイン担当者は「あらゆる場面で周囲の環境に影響されない、強い存在でありたい」という意思をこの色に込めたと説明しています。
Car Watch:AURA NISMO RS Conceptの外装デザイン解説と開発担当者のコメント詳報
日産とNMCが「ライバルはGRヤリス」と明言している点は非常に重要です。コンパクトな4WDスポーツカーというカテゴリーで、どのような差異があるかを整理します。
まず動力源の方向性が根本的に異なります。GRヤリスは排気量1.6リッターの直3ターボエンジンを前軸で直接駆動するピュアガソリン4WD。一方のニスモ オーラ RSは、エンジンが発電のみを担い、走行はモーターが受け持つe-POWER方式の電動4WDです。アクセルを踏んだ瞬間からのトルク応答という点では、電動モーター駆動のニスモ オーラ RSが有利です。
価格帯で比較すると以下のようになります。
- 🏎️ GRヤリス RZハイパフォーマンス(8速AT):533万円
- 🏎️ GRカローラ RZ:598万円
- 🏎️ シビックタイプR レーシングブラックパッケージ:617万9,800円
- 🚗 ニスモ オーラ RS(予想):549万円
ニスモ オーラ RSは550万円弱というポジションで、GRヤリスとほぼ同額ながら5人乗りの実用性を持つという点が差別化のポイントです。GRヤリスは2ドア4人乗りで後席は非常に狭い設計ですが、オーラのボディを持つRSは4ドア5人乗りです。実際に同乗者を乗せて楽しめるのはRSに軍配が上がります。
4WD制御の方式も異なります。GRヤリスは「GR-FOUR」という機械式センタービスカスLSD方式の4WD。ニスモ オーラ RSの「NISMO tuned e-4ORCE」は前後独立したモーターを電子制御で瞬時に制御できるため、各輪への駆動力配分の速度と精度では電動4WDが優位です。トルク配分の応答性が従来の機械式4WDとは次元の違う速さであることが、e-4ORCEの最大の武器です。
これは使えそうです。
月刊自家用車:NISMO RSコンセプトのGRヤリスとの差異やe-4ORCE制御の詳細分析
日産公式プレスリリースには「今後、厳しい負荷がかかる環境下でクルマを鍛え上げるために、この車両でレースに出場することを検討するとともに、市販化も目指します」と明記されています。NMC社長の真田 裕氏も「これが第一弾」と発言しており、今後さらにRSシリーズのモデルが登場する可能性を示唆しています。
市販化への道筋について整理すると、以下のステップが予想されます。
- ✅ 東京オートサロン2026(2026年1月):コンセプト公開、市販化を表明
- 🔄 スーパー耐久 ST-Qクラス参戦:レース環境での実走テストと技術熟成
- 📋 衝突実験・認証取得:エンジン換装のためフロントメンバーをエクストレイルNISMO用に変更しているため、量産化には新たな衝突試験が必要
- 🏷️ 市販化(予想:2026年12月):限定コンプリートカーとしての販売を検討中
予想価格は549万円。これはパワートレインを共有するエクストレイルNISMOの541万6,400円とほぼ同等の水準です。ベースのオーラNISMO(4WD)の353万1,000円から約196万円高くなりますが、パワーユニットを丸ごと換装し、ブレーキシステムを刷新し、ボディパネルの大半を新設計した仕上がりを考えると、妥当な価格帯といえます。
この車両に込められた日産復活のメッセージも見逃せません。「経営再建計画『Re:Nissan』においてハートビートモデルの導入を表明している」という背景のもと、NMCの知見を結集した象徴モデルとして発表されたのがニスモ オーラ RSです。開発担当者の片倉氏は「いま日産は必ずしも良い印象だけではない状況。とはいえ今出している技術の集合体で、こうした魅力的なものに生まれ変わることを見せていきたい」と語っています。技術力の証明と、ブランド復活の起爆剤という二重の役割を担っています。
1990年代のパルサーGTI-R(コンパクトボディに強力なSR20DETターボとアテーサ4WDを搭載した日産の名車)を思わせるアプローチで、「令和のGTI-R」として注目を集めています。
ベストカーweb:ニスモ オーラ RSコンセプトの市販化検討と日産復活戦略の考察
Car Watch:東京オートサロン2026 オーラNISMO RSコンセプトのレース参戦計画と市販化方針

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