ユーザー車検を受けた後でも点検整備記録簿を提出すれば、車検証備考欄への「未実施」記載を防げます。
突然ポストに「国土交通省自動車局」の文字が入ったはがきが届いたとき、多くのドライバーはまず「何かやらかしたか?」と焦ります。しかし実際には、このはがきが届くケースは大きく分けて3種類あり、それぞれ内容も対応も異なります。
最も多いのが、「自動車局整備課」から届くアンケートはがきです。これはユーザー車検を受けた際に点検整備記録簿の提示がなかったか、確認できなかったユーザー全員に対して国土交通省が送付するものです。はがきの表面には受検した車のナンバーや車台番号が記載されており、初めて受け取ると驚くのも無理はありません。
次に多いのが、「自動車局保障制度参事官室」から届く自賠責保険に関する注意喚起はがきです。自賠責保険の満了日から概ね6ヶ月が経過しても継続契約の確認が取れない場合に送付されます。特に車検制度のない250cc以下のバイクや原付に乗っている車好きの方が受け取るケースが目立ちます。
3つ目は、「自動車起終点調査(OD調査)」の協力依頼はがきです。これは国土交通省が管理する自動車登録情報から無作為に抽出した車両のオーナーに送るアンケートで、ある一日の走行状況を教えてほしいという内容です。三者三様のはがきです。
| 差出元 | 主な内容 | 対応の緊急度 |
|---|---|---|
| 自動車局整備課 | 定期点検整備の実施確認アンケート | 中(任意回答) |
| 保障制度参事官室 | 自賠責保険切れの注意喚起 | 高(放置は法令違反) |
| 自動車局(OD調査) | 走行状況の統計調査協力依頼 | 低(回答は任意) |
対応の優先度が全く異なります。まず差出元と内容を冷静に確認するのが第一歩です。
車好きのあいだでは「国交省からのはがきなんて返信しなくてもいい」という話がよく聞かれます。整備課のアンケートはがきの法的根拠については、道路運送車両法第100条に報告徴収の権限規定がありますが、アンケートの回答は協力依頼であり、返信しなかったこと自体への罰則はありません。
ただし、「返信しなくていい」と「何もしなくていい」はイコールではありません。注意が必要です。
はがきが届いたということは、車検証の備考欄に「点検整備記録簿なし」と記載されている可能性が高いです。これは平成26年2月(軽自動車は平成27年1月)以降、前検査で車検を受けたすべてのユーザーの車検証に記載されるようになった情報です。車両を売却する際や整備工場に持ち込む際に、「この車は定期点検をきちんと受けていない」という記録として残ります。
さらに令和2年4月1日からは、フロントガラスの内側に貼る検査標章(車検ステッカー)の裏面余白にも「法定点検未実施(車検時)」と注意喚起文が記載されるようになりました。つまりはがきへの返信不要であっても、車両そのものに記録が刻まれている状態です。
返信は任意ですが、点検は義務です。はがきを受け取ったタイミングで定期点検整備の実施を検討するのが正解です。
国土交通省「車検時の点検整備実施状況のお知らせ」(はがきの様式と車検証備考欄への記載内容が確認できます)
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha/tenkenseibi/tenken/t3/t3-3/
自動車局保障制度参事官室から届くはがきは、3種類の中で最も対応の緊急度が高いものです。これを「国交省からの書類はどうせ任意」と同じ感覚で放置してしまうのは、大きなリスクになります。
国土交通省の公式情報によると、自賠責保険・共済に未加入(無保険)のまま運行した場合、たとえ事故を起こさなくても以下の罰則が科せられます。
さらに最悪のケース、車検切れ+自賠責保険切れのダブル違反状態で公道を走った場合は、違反点数が合計12点となり90日間の免許停止、そして1年6ヶ月以下の懲役または80万円以下の罰金という非常に重い罰則が待っています。
もし事故を起こしてしまった場合はさらに深刻です。自賠責保険から支払われるはずだった被害者への賠償金(死亡の場合は上限3,000万円)が全額自己負担になります。任意保険に加入していたとしても、自賠責保険の補填範囲については保障外となるのが原則です。
痛いですね。
バイクユーザーに多いパターンとして、長期保管や乗り換えなどで気づかないうちに自賠責の期限が切れているケースがあります。保険会社から満期案内が届いても引越し後の転送漏れなどで見逃してしまうことも。はがきが届いたら速やかに自賠責の現状確認と手続きを行いましょう。
国土交通省「もしも、自賠責保険・共済に加入していないと」(罰則内容と求償の仕組みが詳しく解説されています)
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jibaiseki/about/punish/index.html
車好きの方がユーザー車検を選ぶ理由の多くは、費用の節約と自分の手で愛車の状態を把握したいという気持ちからではないでしょうか。しかし、ユーザー車検を受ける際に点検整備記録簿を提出しないと、思わぬかたちで記録が残ることになります。
車検証の備考欄に記載される内容は大きく2パターンです。
重要なのは、この記載は後から変更できないという点です。国土交通省も「変更することはできないので十分注意してください」と明記しています。車検証に残ったこの記録は、中古車として売却する際に査定に影響したり、整備工場でのメンテナンス履歴の確認時に参照されることがあります。
また、電子車検証(令和5年1月から普及)の場合、この情報はICタグに記録されており、スマートフォンアプリで読み取れる状態になっています。つまり以前と比べて記録の透明性・可視性が一段と高まっています。これは使えそうです。
対策はシンプルで、ユーザー車検を受ける前に定期点検整備を実施し、点検整備記録簿を持参して窓口に提出することです。記録簿は市販されているほか、国土交通省のウェブサイトや関連サイトからダウンロードして活用することもできます。自分で記録できる項目は自分で記入し、専門的な分解整備が必要な項目だけを認証整備工場に依頼するという方法も有効です。
車検をネットや格安業者に任せる機会が増えている昨今、意外なリスクが潜んでいます。実は、整備工場のように見える業者であっても、国が認証した特定整備事業者でない場合が存在します。これが国土交通省がアンケートはがきを送付し続けている大きな理由の一つです。
特定整備事業とは、ブレーキ・エンジン・ステアリングなどの重要装置を取り外して行う整備や、衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)のカメラ調整等を行う整備のことです。この「特定整備」を業として行うためには、一定の設備・資格・機器を保有し、国の認証を取得していることが法的に必要です。
しかし、認証を受けていない代行業者が部分的な点検にとどめ、まるで全整備をしたかのように点検整備記録簿に記載している事例が確認されています。つまり、車検証に「点検整備記録簿記載あり」と書かれていても、実際には必要な整備が行われていない場合があるということです。
これは利用者にとって知らないと大きな損失につながります。
認証を受けた整備工場かどうかを見分けるポイントは、事業場内の見やすい場所に掲示されている標識の確認です。
認証工場では整備後に「特定整備記録簿」が発行され、そこに認証番号が記載されます。この番号の有無を確認することが、違法代行業者を見分ける実践的な方法です。なお、国土交通省のホームページには「整備工場検索」機能があり、郵便番号や地域名から認証工場を調べることができます。
国土交通省「自動車の点検整備について」(認証工場の調べ方や整備の重要性が記載されています)
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha/tenkenseibi/tenken/t1/t1-2/
車検切れの状態でも普通に走れてしまうことから、「バレなければ大丈夫」と思っているドライバーがいるのも現実です。しかし国土交通省はこの問題に対し、想像以上に組織的な対策を講じています。
国土交通省の調査では、約39万台を無作為に調べたところ0.28%、つまりおよそ300台に1台が車検切れという実態が確認されています。データ上の無車検車は全国で約510万台にのぼるとも推計されています。
この問題に対して国土交通省自動車局が実施している主な対策は次のとおりです。
つまり国土交通省から届くはがきは、単なる「お知らせ」ではなく、実際の調査・取締り活動と連動したアクションの一部です。はがきが届いた時点で、すでに車両情報が国のデータベース上で特定されていると考えるのが正確です。
もし車検切れのまま公道を走り、そのうえ自賠責保険まで切れていた場合、前述の通り最大で違反点数12点・90日間の免許停止・80万円以下の罰金という重い処罰が待っています。車検の期限管理はスマートフォンのカレンダーアプリへのリマインダー設定など、シンプルな方法で忘れにくくする工夫が有効です。
国土交通省「無車検車両の使用者に対し注意喚起を行っています」(ナンバー読取装置による実績データが掲載されています)
https://www.mlit.go.jp/common/001175846.pdf