国土開発幹線自動車道建設法予定路線の概要と整備状況

国土開発幹線自動車道建設法で定められた予定路線とは何か。全国1万1,520キロに及ぶ路線の整備計画や未整備区間の現状、そして計画から実現までのプロセスをご存じでしょうか。

国土開発幹線自動車道建設法予定路線の概要と整備状況

この記事で分かること
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予定路線の全体像

国土開発幹線自動車道の予定路線32路線・総延長1万1,520キロの詳細

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基本計画から整備計画へ

予定路線が実際の高速道路として開通するまでの段階的なプロセス

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未整備区間の現状

予定路線の中で未だ整備されていない区間とその理由

国土開発幹線自動車道建設法における予定路線の法的位置づけ

国土開発幹線自動車道建設法(昭和32年法律第68号)第3条では、高速幹線自動車道として国が建設すべき自動車道の「予定路線」が別表で定められています。この予定路線は、全国的な高速自動車交通網の最も大きな枠組みを決定するもので、路線名・起点・終点・主たる経過地が法律で明記されています。
参考)国土開発幹線自動車道建設法|条文|法令リード

予定路線は1966年の法改正時に32路線・総延長7,600キロが定められ、その後1987年の第四次全国総合開発計画(四全総)に基づく改正により、従前の路線を延伸または新たな路線を追加した結果、現在の総延長1万1,520キロとなっています。この計画では、全国の都市や農村地から概ね1時間以内に高速道路にアクセスできることを目標としました。
参考)国土開発幹線自動車道 - Wikipedia

法律上の予定路線は、国土の普遍的開発を図り、産業の立地振興および国民生活領域の拡大を期するとともに、産業発展の不可欠の基盤となる全国的な高速自動車交通網を形成することを目的としています。​

国土開発幹線自動車道の予定路線一覧と地域別分布

国土開発幹線自動車道の予定路線は、日本全国を網羅する32路線から構成されています。地域別に見ると、北海道では北海道縦貫自動車道(函館市~稚内市)や北海道横断自動車道の根室線・網走線など3路線が指定されています。
参考)国土開発縦貫自動車道建設法の一部を改正する法律 (昭和41年…

東北地方では、東北縦貫自動車道の弘前線・八戸線、東北横断自動車道の釜石秋田線・酒田線・いわき新潟線、日本海沿岸東北自動車道、東北中央自動車道などが予定路線として定められています。関東地方は関越自動車道(新潟線・上越線)、常磐自動車道、東関東自動車道(館山線・水戸線)、北関東自動車道などが含まれます。​
中部地方では中央自動車道(富士吉田線・西宮線・長野線)、第一東海自動車道、第二東海自動車道、東海北陸自動車道、中部横断自動車道、北陸自動車道が予定路線です。近畿・中国・四国・九州地方にも、それぞれの地域を縦貫または横断する複数の路線が法定されており、これらが一体となって全国的な高速道路ネットワークを構成する計画となっています。​

予定路線から基本計画、整備計画への段階的プロセス

予定路線が実際に高速道路として建設されるまでには、基本計画の決定と整備計画の策定という段階的なプロセスを経る必要があります。まず国土交通大臣は、高速自動車交通の需要の充足や国土開発の地域的な重点などを考慮し、予定路線のうち建設を開始すべき路線の「基本計画」を立案します。
参考)https://assess.env.go.jp/files/0_db/seika/0187_01/S1_201.html

基本計画では、建設線の区間・主たる経過地・標準車線数・設計速度・道路等の連結地・建設主体が定められます。この基本計画の決定には国土開発幹線自動車道建設会議(国幹会議)の議を経る必要があり、決定後は公表され利害関係者からの意見申出の機会が設けられます。​
その後、基本計画が決定された区間の中から、高速自動車国道法第4条第1項の規定に基づく政令によって高速自動車国道の路線が指定され、さらに「整備計画」が策定されます。整備計画では、経過する市町村名・車線数・設計速度・連結位置及び連結予定施設・工事に要する費用の概算額などが定められ、この段階で初めて具体的な事業実施に移行します。2009年の第4回国幹会議までに、予定路線の92%にあたる延長1万623キロの区間が基本計画に、またうち9,428キロの区間が整備計画に策定されています。
参考)301 Moved Permanently

国土開発幹線自動車道予定路線の未整備区間の現状と課題

国土開発幹線自動車道の予定路線1万1,520キロのうち、すべての区間が整備されているわけではありません。2000年時点では、整備計画策定済みの区間9,342キロおよび別方式で供用中または事業中である区間943キロを除く1,235キロの区間が「未事業化区間」として、事業化に向けた調査が実施されていました。
参考)https://www.mlit.go.jp/road/singi/001215/001215-2b.html

未整備区間が残る背景には、複数の要因があります。第一に、採算性の問題です。国土交通省の調査では、未整備区間の多くが通行料収入だけでは建設費の半分も返すことができない「赤字路線」と判定されています。第二に、建設費の膨大さがあります。2006年の国幹会議では、更なるコスト削減の具体化や、「抜本的見直し区間」の設定などが議論され、一部区間については当面着工しないという判断が下されました。
参考)https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/kansen/20060207/3.pdf

また、環境保全の観点からも慎重な検討が求められています。国土開発幹線自動車道建設審議会(現在の建設会議)では、大気・騒音などの環境保全、地球温暖化防止の観点からの二酸化炭素排出削減、生物多様性保全の観点からの絶滅危惧種保護などについて十分配慮することが求められてきました。これらの要因により、予定路線の全線整備には長期間を要する状況が続いています。
参考)第31回国土開発幹線自動車道建設審議会について

自動車利用者から見た予定路線整備の意義と将来展望

自動車を日常的に利用するドライバーにとって、国土開発幹線自動車道の予定路線整備は、単なる道路建設以上の意義を持ちます。予定路線の整備により、地方都市間の移動時間が大幅に短縮され、ビジネスや観光における利便性が向上します。特に、全国の都市や農村地から1時間以内に高速道路にアクセスできるという目標は、地方在住者にとって生活圏の拡大を意味します。​
また、災害時の代替ルート確保という観点からも重要です。予定路線が完成すれば、一つの路線が災害で通行不能になった場合でも、別ルートを利用できる冗長性の高い道路ネットワークが実現します。物流業界においても、全国的な高速道路網の充実は輸送時間の短縮とコスト削減につながり、地域経済の活性化に寄与します。​
近年の高速道路建設は終盤を迎えつつあり、高速道路6社は2018年3月までに予定する新路線のほぼすべての建設事業に着手しました。しかし、予定路線の完全な実現には、財政面・環境面・需要面での課題が残されており、自動車利用者としても建設優先度や採算性について関心を持つことが求められます。四全総から約40年が経過し、人口減少社会における高速道路網のあり方について、新たな視点からの検討が必要な時期に来ています。
参考)高速道路の新路線建設、終盤へ 遅れた近畿も事業着手 - 日本…

国土開発幹線自動車道建設法の全文
法律の条文と予定路線の詳細一覧が記載されています。予定路線の法的根拠を確認できます。

 

国土交通省:国土開発幹線自動車道建設会議資料
基本計画や整備計画の策定プロセスについての公式資料です。予定路線から実際の建設に至るまでの手続きが分かります。