火薬類取締法例示基準と運搬・貯蔵での遵守事項

車を運転する方が知っておくべき火薬類取締法の例示基準について、運搬時の標識表示や貯蔵方法など具体的な規制内容を解説します。火薬類を扱う際に必要な手続きや注意点をご存じですか?

火薬類取締法例示基準

この記事のポイント
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例示基準の役割

性能規定化された技術基準を満たす具体的な方法を示す

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車両運搬の規制

標識表示や積載方法など運搬時の安全基準

🏢
貯蔵・製造の基準

火薬庫の設置要件や製造施設の技術要件

火薬類取締法における例示基準の位置づけと性能規定化

火薬類取締法施行規則の例示基準は、令和元年12月23日に経済産業省により制定された技術基準の具体的な適合方法を示すものです。この例示基準は、火薬類取締法施行規則に定める技術的要件を満たす技術的内容をできるだけ具体的に示したもので、製造、貯蔵、消費、廃棄などの各分野に対応した基準が設けられています。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/gunpowder/hourei/reiji.html

平成26年度から産業構造審議会保安・消費生活用製品安全分科会火薬小委員会において、技術基準の性能規定化を中心とした見直しが進められてきました。性能規定化の目的は、事業者の創意工夫を阻害せず、新技術や新市場の普及・拡大に対応することにあります。これにより、例示基準に従っている場合は従来と同等の安全性を確保できる一方で、例示基準に従わない場合でも事業者が自ら安全性を証明することで多様な手法を選択できるようになりました。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/gunpowder/hourei/seinoukiteika_tyozo.html

例示基準の重要な特徴は、施行規則に定める技術的要件を満たすものと認められる技術的内容はこの例示基準に限定されるものではないという点です。施行規則に照らして十分な保安水準の確保が達成できる技術的根拠があれば、施行規則に適合するものと判断されるため、事業者は独自の安全対策を採用することも可能となっています。
参考)https://www.j-kayaku.jp/library/57b3d121933dab4e18721fd2/618cbfc1a7ac446743401408.pdf

経済産業省の火薬類取締法施行規則の機能性基準の運用に関するページでは、例示基準の詳細なPDF資料を確認できます

火薬類運搬時の自動車標識表示義務と積載基準

火薬類を運搬する自動車には、火薬類の運搬中であることを明示するため、「火」マークの標識を表示する義務があります。この標識は、火薬類の運搬に関する内閣府令により、縦0.35メートル以上、横0.5メートル以上の大きさで、赤地に白文字で「火」と書き、丸で囲んだデザインと定められています。
参考)トラックの危険物マーク「危」「毒」「高圧ガス」「火」の意味と…

標識の表示位置は時間帯によって異なり、昼間は車両の前後と両側面、夜間は車両の前後に表示する必要があります。夜間はマークを認識しやすいように、「火」の文字に反射材を用いることが義務付けられており、車両の前後に取り付ける「火」マークは反射材の文字である必要があります。​
ただし、次の数量以下の火薬類を運搬する場合は、標識の表示が免除されます:
参考)https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/H051.pdf

品目 免除数量
火薬 5キログラム以下
猟銃雷管 2,000個以下
実包、空包、信管、火管 200個以下

運搬時の積載方法については、火薬類の運搬に関する内閣府令第12条により、運搬中において摩擦し、動揺し、又は転落することのないようにすること、火薬類には耐火性及び防火性の被覆をすることが定められています。さらに、火薬類は包装し、又は梱包して積載しなければならず、発火性・引火性の物、包装が不完全な物、重量物、毒物・放射性物質などとの混載は禁止されています。
参考)http://safety-flare.jp/images/hai_hatsuentou.pdf

火薬類の運搬に関する内閣府令の全文では、運搬時の詳細な技術基準を確認できます

火薬類貯蔵における火薬庫設置要件と数量制限

火薬類は原則として火薬庫で貯蔵しなければならず、火薬庫を設置する場合は都道府県知事の許可が必要です。火薬類取締法施行規則第21条及び例示基準では、火薬庫の構造や貯蔵方法について詳細な基準が定められています。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/gunpowder/files/20240329-4.pdf

令和6年3月29日の改正では、貯蔵の技術基準の性能規定化が実施され、火薬類を収納した容器包装の積み方に関する規定が見直されました。改正後の規則第21条第1項第8号の2では、「火薬類を収納した容器包装は、荷崩れせず、安全な搬出入が可能な高さで積むこと」と性能規定化され、例示基準では具体的な方法として平積みとすること、積む高さは1.8メートル以下とすること、またはチェーンブロック、天井クレーン等の搬出入作業用器具を使用することが示されています。​
火薬類取締法施行規則第24条第15号では、火薬庫の天井裏又は屋根に盗難防止の措置を講ずることも求められており、セキュリティ面での配慮も重要視されています。
参考)https://www.nikkaren.jp/pdf/tanshin_166-4.pdf

少量の火薬類については、火薬庫での貯蔵義務が免除される場合があります。例えば、自動車用発炎筒は火薬類取締法上のがん具煙火に分類されるため、堅固なロッカー等に約300本(火薬量25キログラム相当)まで貯蔵することができますが、その際には火災予防の措置が必要です。
参考)https://www.kokusai-kakoh.co.jp/qa.html

経済産業省の貯蔵の技術基準改正資料では、性能規定化の詳細と例示基準の対応関係を確認できます

火薬類製造施設の例示基準と危険区域内運搬車の要件

火薬類の製造に関する例示基準は、令和3年3月1日に公布され、4月1日から施行されました。施行規則第4条第1項では、製造所内の標識掲示、危険区域の明確化、製造設備の構造など、製造施設に関する詳細な技術基準が定められています。
参考)https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/kayaku/pdf/014_01_00.pdf

製造所内の危険区域が明確に判別できるような措置については、例示基準で次のいずれかの方法が示されています:​

  • 境界線に柵、ロープ等を設置すること
  • 境界線上にラインを引くこと

危険区域内で火薬類を運搬する運搬車については、施行規則第4条第1項第27号により、運搬する火薬類その他周囲の火薬類の爆発又は発火を起こすおそれがないものでなければなりません。例示基準では、次のいずれかの基準に適合する運搬車が具体的に示されています:
参考)https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/gunpowder/files/20240329-3.pdf

🔧 手押し車の基準
運搬する火薬類に摩擦及び衝動を与えないような構造であること
蓄電池車の基準

  • 運搬する火薬類に摩擦及び衝動を与えないように、荷台又は荷台と車軸との間には適当な緩衝装置を備えること
  • 蓄電池は、使用電圧が80ボルト以下に保たれていること
  • 電気設備は、振動によって緩まないように固定され、適当な覆いを有すること

製造施設では、火薬類の爆発や発火に関し必要な事項を掲示し、危険区域の周囲には警戒札を掲示することも義務付けられており、安全管理の徹底が図られています。​

車を運転する方が知っておくべき火薬類関連の道路規制

一般のドライバーにとって、火薬類を積載した車両との遭遇や、火薬類関連の道路規制について知っておくことは安全運転のために重要です。高速道路や有料道路では、火薬類などの危険物を積載する車両の通行が禁止または制限されているトンネルが存在します。
参考)https://www.tokusya.ktr.mlit.go.jp/kisei/pdf/7019.pdf

道路法第46条第3項の規定に基づき、トンネルの構造を保全し、交通の危険を防止するために、危険物積載車両の通行の禁止又は制限が実施されています。具体的には、別表第2の通行制限品目により、火薬類を積載した車両の通行可能数量が定められており、これを超える場合は特定のトンネルを通行できません。
参考)https://www.c-nexco.co.jp/safety/safety_drive/tokusya/pdf/dm02.pdf

例えば、高速道路の別表第2では、火薬類及びがん具煙火について次のような制限が設けられています:
参考)https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000733884.pdf

分類 品目 積載数量制限
火薬 黒色火薬、無煙火薬等 10キログラム以下
爆薬 ダイナマイト、カーリット等 5キログラム以下
火工品 工業雷管、電気雷管 100個以下
火工品 導火管付き雷管 25個以下
火工品 銃用雷管 10,000個以下
火工品 実包、空包 1,000個以下

車を運転する際、「火」マークを表示した車両を見かけた場合は、その車両が火薬類を運搬中であることを認識し、適切な車間距離を保つなど安全に配慮した運転を心がけることが大切です。また、火薬類運搬車両は運転要員の確保や見張人の配置など厳格な安全管理がなされているため、一般ドライバーは通常の安全運転に徹することで十分です。
参考)危険物の輸送に必須な資格は?トラックにつけるべき標識も紹介!…

さらに、廃発炎筒の運搬についても、火薬量が2トンを超える場合は火薬類取締法の適用対象となり、運搬証明の携帯や技術基準の遵守が義務付けられています。自動車整備工場や廃棄物処理事業者などが廃発炎筒を大量に運搬する際には、これらの規制に従う必要があります。​
NEXCO中日本の通行制限品目に関する資料では、高速道路における火薬類の通行規制の詳細を確認できます