循環型社会形成推進基本法リサイクル法と車廃棄の3R

車を利用する際、廃車時のリサイクル料金や環境負荷について考えたことはありますか?循環型社会形成推進基本法とリサイクル法の関係を理解することで、私たちはどう責任ある車社会を実現できるでしょうか?

循環型社会形成推進基本法とリサイクル法の関係

本記事のポイント
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自動車リサイクル法との関連

循環型社会形成推進基本法の実施法として自動車リサイクル法が制定され、車の廃棄処理に責任体制を構築

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3Rの優先順位

リデュース、リユース、リサイクルの順で取り組むことで資源循環を推進

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リサイクル料金の仕組み

新車購入時に6,000円~18,000円程度を預託し、廃車時の適正処理費用に充当

循環型社会形成推進基本法の目的と車への適用


循環型社会形成推進基本法: 環境弱者 日本福祉新聞電子文庫シリーズ

 

循環型社会形成推進基本法は、2000年6月に公布され、循環型社会の形成を総合的かつ計画的に推進するための基本的枠組みを定めた法律です。この法律は、廃棄物の発生を抑制し、循環資源をできる限り再使用・再生利用することで、資源を循環させる仕組みを作り、環境への負荷を最小限に抑えた社会を目指しています。
参考)【5分でわかる】循環型社会形成推進基本法とは?目的と基本理念…

自動車分野においても、この基本法の理念を具体化するために、2002年7月に「使用済自動車の再資源化等に関する法律(自動車リサイクル法)」が制定されました。循環型社会形成推進基本法に基づく第5番目の個別リサイクル法として位置づけられ、2005年1月から完全施行されています。
参考)使用済自動車の再資源化等に関する法律 - Wikipedia

車を利用する私たちにとって、この法律は廃車時の適正処理を保証する重要な制度となっています。かつて廃車は解体業者や破砕業者によってリサイクルされていましたが、金属や部品をリサイクルした後に残る「シュレッダーダスト」を処理するための埋立処分場が不足し、車の不法投棄が問題となっていました。また、エアバッグやカーエアコンのフロン類の適切な処理も十分に進んでいませんでした。
参考)環境に優しい!自動車リサイクルの仕組みを解説

循環型社会形成推進基本法における3Rの優先順位

循環型社会形成推進基本法では、廃棄物処理やリサイクルの取り組みに明確な優先順位を定めています。この優先順位は「3R(スリーアール)」として知られ、①発生抑制(リデュース:Reduce)、②再使用(リユース:Reuse)、③再生利用(リサイクル:Recycle)の順で取り組むことが求められています。
参考)循環型社会形成推進基本法 - 九都県市首脳会議廃棄物問題検討…

車に乗る方にとって、この優先順位を理解することは重要です。最も優先されるリデュースとは、丈夫で長く使用できるような製品づくりによってごみを減らすこと、包装を簡素化することなどが含まれます。車の文脈では、定期的なメンテナンスを行い、できるだけ長期間使用することがリデュースにあたります。
参考)https://www.jarc.or.jp/recycletown/wp-content/uploads/2021/10/10nositumon.pdf

次のリユースは、廃棄物のうち再使用できるものを再使用することを指します。自動車業界では、使用済自動車から取り外されたエンジンドアなどの有用な部品や部材を、交換部品としてリサイクル部品として使用する取り組みが進められています。​
リサイクルは、再使用できないものをできるだけ再生利用することで、アルミや鉄、紙などの資源を再生利用する取り組みです。自動車の場合、解体後の金属部品などが再資源化されます。この3つの取り組みすべてが大切ですが、リユースやリサイクルもエネルギーを必要とし環境に負荷がかかるため、最も重要なのはリデュースであることを理解しておく必要があります。
参考)循環型社会とは?3Rで持続可能な未来を実現しよう

循環型社会形成推進基本法における排出者責任と拡大生産者責任

循環型社会形成推進基本法では、「排出者責任」と「拡大生産者責任」という2つの重要な責任概念が基本理念として定められています。この2つの考え方は、循環型社会を実現するための柱となっています。
参考)環境省_平成26年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 状況…

排出者責任とは、廃棄物を排出する者が、その適正処理に関する責任を負うべきであるとの考え方です。車を利用する私たちにとっては、廃車時に適切な分別を行い、リサイクル料金を負担することが排出者としての責任となります。具体的には、車の購入時にリサイクル料金を支払い、廃車時には適正な引取業者に引き渡す義務があります。
参考)自動車リサイクル料金は、誰がいつ支払うのですか?

一方、拡大生産者責任(EPR:Extended Producer Responsibility)とは、生産者が製品の使用段階だけでなく、使用後に発生する廃棄物やリサイクルに対しても責任を持つという考え方です。自動車メーカーや輸入業者は、リサイクルしやすい素材を選ぶ、修理しやすい構造にするなど、設計段階での工夫を促されています。
参考)拡大生産者責任(EPR)とは?取り組むメリットや推進の方法を…

自動車リサイクル法では、シュレッダーダスト、エアバッグ類、フロン類の3品目について、自動車メーカーや輸入業者が適正処理する義務を負っています。この制度により、自動車ユーザー、自動車メーカー、輸入事業者、引取事業者、解体事業者、粉砕事業者などが一体となって、循環型社会への取り組みが進められています。​

循環型社会形成推進基本法と車のリサイクル料金の仕組み

自動車リサイクル法に基づき、車を廃車して解体する際に出る廃棄物を処理するコストをまかなうために、リサイクル料金が徴収されています。この料金は、シュレッダーダストの処理、エアバッグ類のリサイクル、エアコンのフロン回収にかかるコストとシステム運用のための費用に充当されます。
参考)車を購入する上で支払わないといけないリサイクル料金!知ってお…

リサイクル料金は、自動車メーカーや輸入業者が費用の将来予測をして決定するもので、一般的に6,000円~18,000円程度が目安となっています。車種やグレードによって料金が異なり、国内メーカーと輸入業者によって定められており、各社のホームページで確認できます。
参考)車種別リサイクル料金一覧:あ行 トヨタ

新車を購入する際には、買い手が財団法人自動車リサイクル促進センターにリサイクル料金を預託する必要があります。預託したリサイクル料金は、使用済み車両として廃車(永久登録抹消)するときまで自動車リサイクル促進センターで管理されます。中古車を購入する場合は、リサイクル料金を含んだ車両代金を買い手が支払い、リサイクル券は車についてまわり、最終オーナーが料金を負担する仕組みです。​
リサイクル料金の内訳として、シュレッダーダスト料金が4,770円~5,400円程度、エアバッグ類料金が1,930円~3,300円程度(装備個数により異なり、シートベルトプリテンショナーも含む)、フロン類料金が1,650円~2,050円程度(エアコン装備無しの場合0円)となっています。この他に、資金管理料金や情報管理料金の支払いも必要になります。​

循環型社会形成推進基本計画による車リサイクルの今後の方向性

循環型社会形成推進基本法に基づき、政府は「循環型社会形成推進基本計画」を策定し、循環型社会の形成を総合的・計画的に推進しています。この計画は、環境大臣が中央環境審議会の意見を聴き、案を作成して閣議決定され、おおむね5年ごとに見直されます。
参考)https://www.pref.shiga.lg.jp/file/attachment/5196074.pdf

2024年8月には「第五次循環型社会形成推進基本計画」が閣議決定され、循環経済を国家戦略として位置づけています。この計画では、5つの重点分野が提示されており、①循環型社会形成に向けた循環経済への移行による持続可能な地域と社会づくり、②資源循環のための事業者間連携によるライフサイクル全体での徹底的な資源循環、③多種多様な地域の循環システムの構築と地方創生の実現、④資源循環・廃棄物管理基盤の強靱化と着実な適正処理・環境再生の実行、⑤適正な国際資源循環体制の構築と循環産業の海外展開の推進が掲げられています。
参考)https://www.env.go.jp/content/000242562.pdf

自動車リサイクル制度においても、循環型社会形成推進基本法で定められた3Rの優先順位(①発生抑制(リデュース)、②再使用(リユース)、③再生利用(リサイクル)、④熱回収、⑤埋立処分)が重視されています。車に乗る私たちは、定期的なメンテナンスによって車を長く使用し、リサイクル部品の活用を検討し、適切な廃車処理を行うことで、循環型社会の実現に貢献できます。
参考)https://www.env.go.jp/council/content/03recycle03/000338363.pdf

また、第四次循環計画(2018年6月閣議決定)では、「ライフサイクル全体での徹底的な資源循環」「多種多様な地域循環共生圏形成による地域活性化」「万全な災害廃棄物処理体制の構築」「適正な国際資源循環体制の構築と循環産業の海外展開の推進」「適正処理の更なる推進と環境再生」という5つの柱が掲げられ、循環分野における基盤整備として情報の整備、技術開発、人材育成などが進められています。​
参考リンク(自動車リサイクル料金の預託状況等を照会できる公式システム)。
自動車リサイクルシステム
参考リンク(環境省による循環型社会形成推進基本法の詳細情報)。
循環型社会形成推進基本法 - 環境省
参考リンク(経済産業省による3R政策の解説)。
3R政策 - 経済産業省