自動車リサイクル法における最も重大な違反の一つが無許可営業です。全国で実際に摘発された事例として、香川県土庄町で2017年に会社社長が無許可で使用済み自動車を引き取り、解体・破砕を行ったとして逮捕されました。この事例では、鉄くずを売却して利益を得ることを目的に、県の許可を受けずに使用済み自動車を取り扱っていました。
参考)自動車リサイクル法違反:土庄の社長を逮捕 県内での摘発第1号…
無許可営業の背景には、鉄スクラップの価格上昇があります。リサイクル業者が鉄くずを集めようとするあまり、必要な許可取得の手続きを省いてしまうケースが発生しています。しかし、自動車リサイクル法の解体業許可は簡単には取得できない仕組みになっており、無許可での営業は厳しく処罰されます。
神奈川県厚木市でも同様の事例が発生しており、知事の許可を受けずにヤードで使用済みトラックの前部ボディーを取り外し、解体業を営んだとして書類送検されています。こうした無許可営業は、自動車リサイクル法違反だけでなく、廃棄物処理法違反にも該当する可能性があります。
参考)http://www.saito-office.com/sub9-9-1.htm
移動報告義務違反も頻繁に確認される違反事例です。経済産業省と環境省が実施した調査では、移動報告の実績がない解体業者に対して立入検査を行い、22件の事業場でリサイクル料金の預託等のない自動車を扱っていたことが確認されました。
参考)https://www.eic.or.jp/news/?act=viewamp;serial=12027amp;oversea=
特に悪質な事例として、茨城県の事業者は引き取った使用済自動車の移動報告をしないまま、解体後に輸出していました。また、熊本県の事業者は他の許可業者に移動報告をしてもらうという不適切な方法を取っていたため、両者とも法第90条に基づく移動報告義務違反の勧告を受けています。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/automobile/automobile_recycle/other/pdf/press/051215.pdf
移動報告は使用済自動車を実際に引き取った後及び引き渡した後、3日以内に行うよう法令で定められています。この報告の遅滞は法律違反になるだけでなく、次工程の業者にも影響を与える重大な問題となります。
参考)よくあるご質問詳細|自動車リサイクルシステム
全国一斉立入検査では、256事業者が何らかの法違反または不適正な取扱いを行っていることが確認されており、移動報告の改ざんや期限内の報告を怠るケースが多く見られました。
参考)自動車リサイクル法に関する全国一斉立入検査の結果について(お…
自動車リサイクル法違反に対する罰則は、違反の内容によって大きく異なります。無許可営業を行った場合、自動車リサイクル法上は1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。
参考)自動車リサイクルの流れとは?リサイクル券がない場合の対処法も…
さらに重大なのは、廃棄物処理法の許可も受けていない場合です。この場合は廃棄物処理法の無許可営業として、5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(法人の場合は3億円以下)という厳しい処罰が科される可能性があります。
参考)https://www.env.go.jp/content/000049397.pdf
その他の違反行為についても罰則が定められており、自動車リサイクル法では以下のような罰則体系があります。
参考)https://recyclehub.jp/articles/machanism/car/
違反例としては、無許可で解体業を行う、使用済自動車のシュレッダーダスト・エアバッグ類・フロン類を取り外して転売する、解体前にフロン類を回収しないなどが挙げられます。
全国一斉立入検査では、使用済自動車や部品等の保管に関する違反が37件確認されています。具体的には、回収された部品が適正に保管されていなかった事例や、使用済自動車または解体自動車の保管場所の基準が満たされていない事例が多数報告されました。
参考)自動車リサイクル法に関する全国一斉立入検査の結果について(お…
保管基準違反は法第16条第2項や法第62条第1項に該当し、適切な保管環境を整えることが義務付けられています。届出をしていない場所で使用済自動車、解体自動車、部品等の保管を行っていた事例も確認されており、これは重大な法令違反となります。
また、使用済自動車の保管高さが基準を超えていたり、保管場所が適切に区画されていなかったりする事例も見られました。廃棄物処理法第12条第2項の保管基準に違反して使用済自動車を保管していた事業者も多く、廃棄物が混入した使用済自動車を引き取っていた事例も報告されています。
エアバッグ類の取扱いについても問題があり、山形と宮城の2事業者は自動車リサイクル法で再資源化を義務付けているエアバッグ類の回収を行っていないことが判明し、法の再資源化義務違反として指導が行われました。
車の所有者として最も重要なのは、違法業者に廃車を依頼しないことです。自動車リサイクル法の登録を受けていない無許可業者に廃車を依頼することも法律違反となります。そのため、業者選びは慎重に行う必要があります。
適法な業者を見分けるポイントとして、公衆の見やすい場所に標識を掲示しているかを確認することが挙げられます。全国一斉立入検査では、標識を掲示していなかった事業者が多数確認されており、これは法第50条等に違反する行為です。
また、廃車を依頼する際には、業者が電子マニフェスト(移動報告)を適切に行っているかを確認することも重要です。経済産業省では、事業者が電子マニフェストによる報告を一定期間行っていない場合、違法業者の可能性があるとして注意を呼びかけています。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/automobile/automobile_recycle/results/results03.html
許可業者であっても、無許可業者との取引がある場合は要注意です。実際に、無許可業者への幇助罪(手助けをした罪)で逮捕された事例もあり、許可業者であっても無許可業者との取引には最新の注意が必要です。
廃車を依頼する前に、自動車リサイクルシステムのウェブサイトで業者の登録状況を確認することもできます。引取業者、フロン類回収業者、解体業者、破砕業者のそれぞれに登録・許可が必要であり、これらの確認を怠らないことが車所有者の責任となります。
参考:経済産業省「自動車リサイクル法に関する主なQ&A」では、無許可営業の罰則や注意点について詳しく解説されています
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/automobile/automobile_recycle/other/pdf/explanation/hikitoriQA.pdf
参考:環境省「自動車リサイクル法に関する全国一斉立入検査の結果について」では、全国の違反事例の詳細が報告されています
自動車リサイクル法に関する全国一斉立入検査の結果について(お…