政府機関や地方自治体への情報公開請求では、開示請求手数料として統一的に1件あたり300円(オンライン200円)が定められています。この基本的な構造は、財務省、国土交通省、日本銀行といった各機関で共通です。開示実施手数料については、実際に文書を利用する際に発生し、閲覧は100枚ごとに100円、写しの交付はA4判白黒で1枚10円という相場が標準となっています。ただし、計算した手数料が300円以下の場合は無料という「基本額マイナス300円方式」が採用されているため、少量の資料開示であれば追加負担がないことが多いです。
実際に情報開示請求を行う際には、収入印紙の購入手数料や複数回の開示受取に伴う累積手数料も考慮する必要があります。初回は100ページの閲覧で基本額100円(無料)だとしても、追加で写しを取得する場合は「初回の基本額100円+新規の基本額」から300円を控除した額が次の手数料になります。経済的困難がある場合、多くの機関では開示請求1件につき2,000円を限度に手数料の減額や免除対応を行っており、弱者救済の仕組みが備わっています。
政府情報の情報公開請求と、ネット上の誹謗中傷対策としての発信者情報開示請求は、全く異なる費用体系です。政府機関への開示請求は数千円程度で済む場合が多いのに対し、発信者情報開示請求は仮処分申立てで10万~30万円の担保金、弁護士依頼で数十万円から100万円程度の費用がかかります。自動車運転中のドライブレコーダー映像開示など、民間企業からの情報開示請求には、官庁より高額な手数料が設定されることもあり、開示請求の対象先によって費用体系が大きく異なることに注意が必要です。
情報公開窓口での直接支払いか、郵便振替・現金書留での遠隔支払いが選択できます。収入印紙で納付する場合、郵便局やコンビニで事前購入し、申請書に直接貼付する流れが一般的です。おつりの用意がない機関が多いため、正確な金額を事前に確認し準備することが重要です。開示実施手数料は開示決定通知から30日以内に入金する必要があり、納入確認がされない場合は開示が実施されません。
多くの申請者が見落とす隠れた費用として、複数の関連文書を別々に請求した場合の手数料累積があります。1つのファイルにまとめられた複数文書は1件扱いですが、相互に密接でない文書は件数分の手数料が発生します。また、開示請求後に請求を取り下げた場合、原則として手数料は返還されません。カラーコピーが必要な場合はA4判1枚20円と白黒の倍額になり、大量ページのカラー出力では予想外の費用増加になるケースも報告されています。
参考資料:国の情報公開制度について
総務省 情報公開制度・手数料額一覧
参考資料:日本銀行の情報公開手数料体系
日本銀行 情報公開手数料額について
インターネット上の誹謗中傷投稿者を特定する発信者情報開示請求は、情報公開制度とは異なる高額な費用が必要です。個人が自力で裁判所に申し立てる場合、申立手数料として収入印紙2,000円、郵便切手3,000~6,000円、そして最大の負担である仮処分担保金10万~30万円を合算すると、合計10万~31万円が必要になります。仮処分担保金は、申立てが却下された際にSNS運営者側への損害賠償担保として機能しますが、請求が正当と認められれば後日返還されます。この構造により、正当な請求者は実質的に数千円程度の負担で済む可能性がありますが、却下リスクを考えると事前準備が重要です。
弁護士に依頼した場合、着手金が20万~30万円、成功報酬が10万~20万円、法律相談料が30分5,500円程度かかり、総額で60万円以上、最大100万円程度の負担になる可能性があります。複数件の開示請求では報酬金が変動し、事前の費用説明が不十分だと後々トラブルになるリスクもあります。弁護士事務所によっては無料相談を提供していることが多く、正式依頼前に複数の事務所から見積もりを取ることが費用負担を軽減する重要な戦略です。ネット誹謗中傷に特化した弁護士と一般的な弁護士では、実績に基づく料金設定が異なるため、事務所選びが最終的な費用を大きく左右します。
改正プロバイダ責任制限法施行により2022年10月から導入された「発信者情報開示命令」制度では、従来の仮処分と訴訟を一度に行える非訟手続きが可能になり、担保金が不要になります。申立手数料は1,000円の収入印紙と郵便切手代のみで済み、従来方法と比較して数十万円の費用削減が実現します。この制度により、中堅企業や個人事業主でも発信者特定に踏み切りやすくなりましたが、制度を理解していない弁護士もいるため、新制度対応の有無を事前確認することが肝要です。
発信者情報開示請求で投稿者の特定に成功しても、相手に資力がなければ慰謝料回収が困難になります。名誉毀損の慰謝料相場が10万~50万円に対し、弁護士費用が100万円かかれば、完全に費用倒れになる構造です。判例では弁護士費用の全額請求を認めないケースが多く、請求の一部のみ認容される場合、残りは申請者の自己負担になります。事前に相手の資力調査や投稿の悪質性判断を弁護士と協議し、費用対効果を検討することが実務的に重要です。
個人で申し立てる場合の費用を最小化するには、仮処分担保金が返還される可能性を最大化することが第一です。返還されれば実質数千円の負担で済むため、正当性の強い事案を選別することが重要です。また任意開示の段階で相手が応じるケースもあり、弁護士相談後に段階的に対応することで、不要な費用支出を避けられます。複数件の請求が必要な場合は、関連文書をまとめて1件扱いにしてもらえないか交渉する工夫も、費用削減につながります。
参考資料:発信者情報開示請求の手続きと費用について
アトム法律事務所 発信者情報開示請求の費用相場と内訳
参考資料:個人による発信者情報開示請求の実務
春田法律事務所 発信者情報開示請求を個人で行う方法や費用相場
経済的困難が認められれば、開示請求1件につき最大2,000円を限度に手数料の減額または免除が受けられます。この制度は社会的弱者の情報アクセス権を保護する重要な仕組みですが、申請時に経済状況を証明する書類の提出が必要になります。各機関によって減免要件の詳細が異なるため、事前に所管機関に相談することが確実です。減免申請のタイミングは通常の開示請求と同時が一般的で、後出しの減免申請は受理されない可能性があります。
開示請求を取り下げた場合、原則として納入済みの手数料は返還されません。これは申請者による一方的なキャンセルと、機関側の事務処理コストを申請者が負担する仕組みです。ただし機関の処理段階前であれば返還交渉の余地がある場合もあり、取り下げ前に相談することが重要です。オンライン申請で手数料納入済みの場合、電子納付手数料は返還対象外であり、追加の損失になることに注意が必要です。
A4判で計算される際、A3判を二つ折りにしたものはA4×2枚扱いになり、カラーコピーは白黒の倍額(20円)になります。例えば500ページのカラーコピーなら10,000円になり、多量資料の出力時は事前に費用見積もりを依頼することが重要です。デジタルファイルでの提供が可能な機関も増えており、紙資料より低廉な選択肢があるか事前確認することで、不必要な出力コストを避けられます。
発信者特定までに要する期間は8~10ヶ月が基本ですが、相手の反論やログ保存期間の制約により、期間が短縮または延長されます。ログ保存期間は通常3~6ヶ月で、この間に仮処分申立てを完了しないと発信者情報が消失するリスクがあります。迅速対応が必要なため、個人対応では対応しきれず結局弁護士依頼になり、予定外の費用増加になるケースが多いです。費用を抑えたい場合でも、早期の弁護士相談によるアドバイスは投資効果が高いです。
参考資料:国土交通省の情報公開制度
国土交通省 情報公開制度の概要と手数料
参考資料:外務省の情報公開手数料
外務省 情報公開に関するQ&A手数料について
それでは、集めた情報に基づいて、要件に合わせた記事を作成します。