ジェットエンジン吸い込まれる危険性と事故の安全対策

ジェットエンジンは離れていても強力な吸引力で人を吸い込む危険があります。エンジン前方の危険範囲や実際の事故事例、車やバイクのドライバーが空港近くで知っておくべき安全対策とは?

ジェットエンジン吸い込まれる危険性

ジェットエンジンの吸い込み危険性
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離れていても吸い込まれる強力な吸引力

エンジン中心から半径4.2m以内は危険区域で、側面も含む広範囲で吸引されるリスクがあります

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目に見える吸引の力

雨や雪の日には、地上の水や雪がエンジン後方からも吸い込まれる様子が確認できます

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重大事故のリスク

人がエンジンに吸い込まれると即座に致命的な状況となり、複数の死亡事故が世界各地で発生しています

ジェットエンジン前方の危険範囲と吸引力の実態


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ジェットエンジンは前方から空気を猛烈な勢いで吸い込み、燃料と混ぜて燃焼させ、後方に噴射することで推力を得る仕組みです。航空機のエンジンはアイドリング状態でも毎秒数百キログラムの空気を吸い込み続けており、これが目に見えない強力な吸引場を形成しています。ボーイング737NGの場合、警告マークには空気取入口の中心から半径4.2メートルの範囲が危険区域として指定されており、この範囲は正面だけでなく側面でも危険性があることが明示されています。
参考)ジェットエンジンは離れていても吸い込まれる危険がある ~ 連…

この吸引力の強さは、雨や雪の日に視覚的に確認することが可能です。地上の水分や雪がエンジンに吸い込まれていく様子が観察でき、空気取入口よりも後方にある雪までが吸い込まれることもあります。エンジンの後方に関しても、稼働中の航空機エンジン後方100メートルは危険区域として設定されており、ブラスト(排気)の威力でハイエースのような車両が簡単に吹き飛ばされてしまうほどの力があります。
参考)航空機周辺での作業時における注意事項

さらに、ボーイング787の与圧空調用空気取入口も注目すべきポイントです。小さな取入口ですが吸い込む力は非常に強く、熱交換機の空気取入口では異物吸い込みによってファンのブレードが欠けることがあるほどの吸引力を持っています。これらの事実から、ジェットエンジンの吸引力は一般の人が想像する以上に広範囲かつ強力であることがわかります。​

ジェットエンジン吸い込まれる実際の事故事例

世界各地でジェットエンジンへの人の吸い込み事故が複数発生しており、その多くが致命的な結果となっています。2024年5月29日、オランダのアムステルダム・スキポール空港では、KLMオランダ航空の旅客機のエンジンに人が巻き込まれて死亡する事故が発生しました。この事故は、デンマーク・ビルン行きの便の出発準備中に起き、死亡したのは離陸前の旅客機を押し戻す作業に携わっていた従業員だった可能性があります。youtube​
参考)https://www.bbc.com/japanese/articles/cp44zlxvxreo

イタリア北部ベルガモのオリオ・アル・セーリオ空港でも2025年7月8日、男性が旅客機のエンジンに吸い込まれて死亡する事故が発生しました。この男性は空港で運営されている会社の従業員であり、地元メディアによると空港職員として確認されています。また、アメリカ・テキサス州サンアントニオでも2023年に27歳の空港職員が航空機のエンジンに吸い込まれて死亡する事故が起きています。​youtube​
これらの事故は、多くの乗客と乗組員が目撃する中で発生しており、作業員がジェットエンジンに吸い込まれると、あっという間に致命的な状況になることが報告されています。オランダの事故では、調査によって男性が故意に機械に近づいたことが明らかになり、自殺事件として扱われたケースもあります。台湾でも2025年1月に曹長がエンジンに吸い込まれて死亡する事故が発生しており、これらの事例は航空機のエンジン周辺での作業がいかに危険であるかを示しています。
参考)Reddit - The heart of the inte…
​youtube​

ジェットエンジンと異物吸入FOD対策の重要性

FOD(Foreign Object Debris/Damage)とは、航空用語で異物による損傷を意味し、ジェットエンジンにとって深刻なリスク要因となっています。エンジンは空気以外にも雨や雹、砂や小石、火山灰などさまざまな物を吸い込むため、鳥に限らず吸い込まれた物体はまずエンジン入口で回転しているファン動翼と衝突する可能性があります。これは、扇風機を裏側から見ている状態に相当し、裏側からいきなり何か物を投げ入れるようなイメージです。
参考)https://www.ihi.co.jp/technology/techinfo/contents_no/__icsFiles/afieldfile/2023/06/16/85c326f96f50bd41fc0c109e377f6993.pdf

異物がエンジンに吸い込まれると、ファンの翼形状や回転速度などの関係からさまざまな衝突状態が考えられます。極端な例では、ファンの翼間をすり抜けて後ろにあるエンジン部品が直撃を受けることもあります。多くの場合、ファンの前縁部で衝突してファンの回転を妨げる力が働き、翼面に変形痕が生じ、損傷が大きくなると部分的に破壊してエンジン性能の大きな低下につながります。​
FOD対策として、軍用機の中にはS字型に曲がった吸気口を採用し、吸気口に入った異物が強力なスプリングで閉じられたドアを押し開けて機外へ飛び出す仕組みを持つものがあります。しかし、この方式は空気の流路が曲げられることでエンジンの有効馬力が減少するため、現在ではあまり用いられていません。飛行場での取材では「落とし物をしないように、モノが飛ばされないように」と非常に緊張する必要があり、空母の艦上では狭い場所に多数の人と飛行機が入り乱れるため、鳥ではないものがエンジンに吸い込まれる事故がたまに起きるとされています。
参考)飛行機の安全対策(9)エンジンの異物吸い込みやFODに備える…

ジェットエンジン吸い込みバードストライクの脅威

バードストライクとは、航空機が野鳥と衝突したり、エンジンに吸い込んだりして生じる事故のことです。航空機のジェットエンジンは猛烈な勢いで空気を吸い込むため、近くを飛ぶ鳥が巻き込まれ、鳥が大型であるほど衝撃は大きく、エンジン内が損傷し、最悪の場合は停止します。国土交通省によると、日本国内の空港では年間1000件超のバードストライクが発生しており、2023年には1499件が報告され、このうち航空機の機体が損傷するケースが59件確認されています。
参考)韓国旅客機事故の原因? バードストライク、日本では年1000…

衝突件数のうち、エンジンへの吸い込みは全体の約20%を占めており、鳥が突っ込んでくるのは致し方ないとして、ぶつかってもある程度は耐えられるように設計されています。実際に、小さな鳥に対してはある程度の推力を維持できる損傷にとどめ、万一同時に複数のエンジンで吸い込んでも、着陸に必要な推力を機体全体で保持するよう設計されています。一方、大きな鳥と衝突した場合は、火災などの重大な2次損傷を引き起こすことなく安全に停止することで、もう1台の健全なエンジンによって空港に無事着陸できるようにしています。​
韓国南西部の務安国際空港で2024年12月29日に発生した旅客機事故では、エンジンが鳥を吸い込むバードストライクが原因で発生した可能性が指摘されており、鳥がジェットエンジンに吸い込まれるとタービンブレードが破損し、エンジンが停止するという深刻なリスクがあります。海外では、1960年10月に米ボストンの空港を離陸したイースタン航空375便がヨーロッパムクドリの群れに衝突してエンジンが損傷し、機体が墜落して62人が死亡する事故が発生しています。2009年にもニューヨークのハドソン川に大型旅客機が不時着水する事故が発生しており、これもバードストライクが原因でした。
参考)済州航空とは?バンコク発2216便の墜落事故とバードストライ…

車のドライバーが知るべきジェットエンジン周辺の安全行動

車やバイクのドライバーが空港周辺や航空ショーなどで航空機に接近する機会がある場合、ジェットエンジンの危険性を正しく理解し、適切な安全行動をとることが極めて重要です。空港内で運転する際、稼働している航空機エンジン後方100メートルは危険区域として設定されており、この範囲への立ち入りは禁止されています。エンジンのブラスト(排気)はエンジンの出力によって変わりますが、ハイエースのような車両が簡単に吹き飛ばされてしまうほどの威力があります。​
空港のランプ内で運転することに慣れてしまうと、危機感が薄れてしまいがちですが、空港での運転において小さな油断の1つは大事故につながりかねません。一度事故を起こせば、多くの航空機の運航に支障を与えてしまい、損害は莫大になります。そのため、常に安全確認を行い、安全運転を徹底する必要があります。航空機の前方についても、エンジン中心から半径4.2メートルの範囲は危険区域であり、正面だけでなく側面でも吸い込まれるリスクがあることを認識しておくべきです。​
羽田空港では、ランプ内を走る旅客用のバスを自動化するプロジェクトが進められていますが、安全運行にあたり、ブラストをいかに回避するかということが重要なファクターとなっています。これは、自動運転システムでさえもエンジンのブラスト回避が大きな課題となっていることを示しており、人間のドライバーにとってはさらに注意が必要です。車両のドライバーは、航空機のエンジンが稼働している場合には十分な距離を保ち、指定された安全区域を厳守することが求められます。また、エンジン音や地上スタッフの指示に常に注意を払い、緊急時には速やかに安全な場所へ移動できるよう準備しておくことが重要です。​
ジェットエンジンの危険範囲について詳しく解説した専門記事(月刊エアライン副読本)
IHI技報によるバードストライクとエンジン吸い込みの技術解説資料(PDF)
国土交通省による航空機の安全確保に関する公式情報