廃棄物処理法では、違反の重大性に応じて8段階の罰則が定められています。最も重い罰則は、不法投棄や無許可営業などに対する5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金で、法人に対しては最大3億円以下の罰金が科されます。不法投棄については、未遂であっても罰則が適用される厳格な規定となっています。
参考)廃棄物の不適正処理禁止|不適正処理対策について|東京都環境局
措置命令違反や委託基準違反(無許可業者への委託)も同様に5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金という重い罰則の対象です。これらは排出事業者と処理業者の双方に適用される可能性があり、適正な処理の委託が求められています。
参考)廃棄物処理法の6つの違反事例と主な罰則を徹底解説
事業者にとって特に注意が必要なのは、委託基準違反(政令で定める委託基準の違反)や再委託基準違反で、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金またはこの併科となります。許可を持たない業者への委託や、適切な契約書の締結を怠った場合もこの罰則の対象です。
不法投棄は廃棄物処理法で最も重い罰則が定められている違反行為です。廃棄物をみだりに捨てた場合、5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金、法人の場合は3億円以下の罰金が科されます。この罰則は、投棄禁止違反の未遂も含まれるため、実際に投棄していなくても処罰の対象となります。
参考)産業廃棄物処理違反でどのような罰則を受けるか|法改正(法に関…
車両を使用して産業廃棄物を運搬する事業者が、不法投棄を目的として収集または運搬を行った場合も、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金またはこの併科という重い罰則が適用されます。投棄の意図があったことが証明されれば、実際の投棄行為がなくても処罰される可能性があります。
環境省の資料によると、硫酸ピッチやスラッジを廃タイヤ等で覆い隠蔽していた事例では、懲役刑4年10ヶ月と罰金刑5が科されています。不法投棄は企業の社会的信用を失墜させるだけでなく、重大な刑事責任を問われる行為です。
参考)https://www.env.go.jp/council/former2013/03haiki/y0320-11/mat03-03.pdf
不法投棄に関する規制は年々強化されており、平成9年の法改正では5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金に引き上げられました。さらに法人に対する罰金刑は3億円まで加重できるようになり、企業に対する抑止力が強化されています。
参考)不法投棄に関する罰則 - 九都県市首脳会議廃棄物問題検討委員…
都道府県などの許可を得ずに産業廃棄物の収集運搬や処分を行う無許可営業は、不法投棄と同じく最高レベルの罰則が科されます。5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金またはこの併科で、法人の場合は3億円以下の罰金となります。
参考)https://www.amita-oshiete.jp/qa/entry/000694.php
不正手段による営業許可取得も同様の罰則の対象です。虚偽の申請や書類の偽造などにより許可を取得した場合、たとえ許可証を所持していても違法行為として処罰されます。事業範囲の無許可変更や、変更許可の不正取得についても同じ罰則が適用されます。
2020年には豊島区の職員ら24人が、許可を得ていない建設会社など7社に産業廃棄物の処理を委託したとして書類送検されました。委託先が無許可であることを知らずに委託した場合でも、排出事業者には処理業者の許可を確認する義務があるため、違反の責任を免れることはできません。
車両による産業廃棄物の収集運搬を行う場合、必ず都道府県知事の許可を取得し、許可証の写しを車両に備え付ける必要があります。無許可で収集運搬を行うと、ドライバーだけでなく雇用主である法人も両罰規定により処罰される可能性があります。
産業廃棄物管理票(マニフェスト)に関する違反は、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科されます。マニフェストの不交付、記載義務違反、虚偽記載、保存義務違反など、様々な違反行為が罰則の対象です。
参考)https://kankyounomikata.co.jp/corporate/business/service/column/manifest-violation/
運搬受託者がマニフェストの写し送付義務に違反した場合や、処分受託者が処分終了後の報告を怠った場合も同様の罰則が適用されます。長崎県の産業廃棄物処理会社の事例では、マニフェストに自社で処分が終了したと虚偽記載し、実際には他社に再委託していたことが発覚しています。
マニフェストの交付を受けていないにもかかわらず産業廃棄物の引渡しを受けた場合、運搬受託者または処分受託者が引受禁止違反として処罰されます。車両で産業廃棄物を運搬する際は、必ずマニフェストの交付を受け、車両に備え付けておく必要があります。
参考)産業廃棄物の収集・運搬基準|盛岡市公式ホームページ
電子マニフェストを使用する場合の虚偽登録や報告義務違反も同じ罰則の対象です。マニフェスト制度違反により不適正処理が行われた場合、措置命令が出されることがあり、これに従わない場合は5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金またはこの併科という更に重い罰則が科されます。
参考)措置命令と罰則
委託基準違反には二つの罰則レベルがあり、違反内容によって異なります。無許可業者への委託は最も重い5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金またはこの併科となり、政令で定める委託基準の違反は3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金またはこの併科です。
委託基準で特に重要なのは、処理業者と事前に書面で委託契約を締結することと、委託する産業廃棄物の種類を取り扱い可能な業者へ委託することです。契約書の作成義務違反や許可証の添付漏れなども罰則の対象となります。
参考)廃棄物処理法違反とは?罰則、違反事例などを紹介
排出事業者が委託基準に違反して処理を委託した場合、委託した事業者だけでなく産業廃棄物の処分を請け負った業者も受託禁止違反に問われます。車両による産業廃棄物の収集運搬を委託する際は、必ず収集運搬業の許可を持つ業者と書面で契約を締結する必要があります。
豊島区の事例では、職員らが「処理の仕方が分からなかった」「違法だとは思わなかった」と供述していますが、委託基準を守らなかった場合の責任は免れません。事業者は委託先の許可内容を十分に確認し、適切な契約手続きを行う義務があります。
参考)排出事業者責任の徹底について
措置命令違反は5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金またはこの併科という重い罰則が科されます。措置命令は、不法投棄された廃棄物の除去や生活環境保全上の支障の除去などを求める命令で、排出事業者、処理業者、認定業者などが対象となります。
参考)廃棄物処理法の違反にはどんなものがある?注意事例と罰則も分か…
事業停止命令違反も同じレベルの罰則が適用されます。都道府県知事から事業の停止を命じられたにもかかわらず、営業を続けた場合は重大な違反として厳しく処罰されます。処理施設の改善命令や使用停止命令に違反した場合は、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金またはこの併科です。
産業廃棄物保管基準違反の事例では、処理業者が受託した産業廃棄物を自社の中間処理施設敷地内に長年にわたって保管し堆積させていました。県からの改善命令が履行されなかったため許可が失効し、施設内で火災が発生する事態となっています。
参考)廃棄物処理法違反とは?主な例や罰則と具体的な事例をチェック
改善命令違反は、排出事業者、一般廃棄物収集運搬業者・処分業者、産業廃棄物収集運搬業者・処分業者などが対象となります。車両による産業廃棄物の収集運搬を行う事業者も、行政からの命令には速やかに従う必要があります。
長崎県の産業廃棄物処理会社では、延べ158回にわたり52の排出事業者から1年2カ月の間、収集した廃棄物を処分せずに自社を排出事業者として他の産廃処分業者に処分を委託していました。これは廃棄物処理法で禁じられている再委託基準違反に該当します。
この会社は自社で処分していないにもかかわらず、マニフェストに自社で処分が終了したと虚偽記載していました。県は同社に対して90日間の産業廃棄物収集運搬業・処分業の全業務を停止するよう命じています。マニフェストの管理票虚偽記載は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象です。
産業廃棄物処理業者が排出事業者から廃プラスチック類の運搬と処理の依頼を受けたものの、自ら処理せず許可を持たない他者に再委託した事例もあります。マニフェストが交付されていたにもかかわらず、自社で処理したように虚偽の記載をして事業者に送付していました。
再委託は原則として禁止されており、例外的に認められるケースは法令で厳格に定められています。車両で産業廃棄物を運搬する事業者は、受託した廃棄物を必ず自ら処理するか、適切な許可を持つ業者に処理を委託する必要があります。
産業廃棄物を車両で運搬する際は、廃棄物処理法で定められた収集・運搬基準に従う必要があります。運搬車両の外側には、産業廃棄物収集運搬車である旨、氏名または名称、許可番号を識別しやすい色の文字で鮮明に表示しなければなりません。
車両には必要な書面の備え付けが義務付けられています。事業者が自社運搬する場合は、氏名または名称および住所、運搬する産業廃棄物の種類および数量、積載した日ならびに積載した事業場の情報、運搬先の事業場の情報を記載した書面が必要です。
産業廃棄物収集運搬業者の場合は、収集運搬業許可証の写しとマニフェストの携帯が義務付けられています。電子マニフェスト使用時は、許可証の写し、電子マニフェスト使用証の写し、運搬する産業廃棄物の情報を記載した書面(携帯電話等で電子情報をただちに表示できる場合は不要)が必要です。
運搬車両や運搬容器は、産業廃棄物が飛散・流出・悪臭が漏れるおそれのないものでなければなりません。帳簿備付け義務違反や車両表示義務違反は30万円以下の罰金の対象となります。車両運搬基準を遵守することは、法令遵守の基本です。
廃棄物処理法では、事業者はその事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任で適正に処理しなければならないと規定されています。産業廃棄物は、ごみになったところから最終処分までごみを出した人の責任です。
参考)排出事業者の責務
廃棄物処理業者に産業廃棄物の処理を委託した場合であっても、排出事業者に処理責任があることに変わりはありません。委託先の業者が不法投棄などの不適正処理を行った場合、排出事業者も措置命令の対象となり、廃棄物の除去費用を負担しなければならない可能性があります。
排出事業者が知らなかったという理由は、法的責任を免れる根拠にはなりません。委託先の選定には十分な注意を払い、許可の内容、処理施設の状況、処理方法などを確認する義務があります。
参考)「排出事業者責任」についてしっかり知っておこう
車両で産業廃棄物を運搬する事業者は、自社運搬であっても車両の表示や書面の備付けが必要です。自ら処理できない場合は、委託基準に従って産業廃棄物処理業者に委託し、マニフェストによる管理を徹底する必要があります。排出事業者責任を理解し、適切な廃棄物管理を行うことが重要です。
参考)さいたま市/排出事業者責任について
廃棄物処理法違反を防ぐためには、まず社内の管理体制を整備することが重要です。産業廃棄物処理責任者や特別管理産業廃棄物管理責任者の設置義務があり、これを怠ると30万円以下の罰金が科されます。責任者には適切な教育を行い、法令の最新情報を常に把握できる体制を構築します。
委託先の選定では、必ず都道府県知事の許可を持つ業者を選び、許可証の内容を確認します。許可の種類(収集運搬、中間処理、最終処分)、取り扱える廃棄物の種類、許可の有効期限などを十分に確認し、委託する業務内容に合致しているか確認します。
書面による委託契約の締結は必須です。契約書には処理の内容、処理場所、委託料金などを明記し、処理業者の許可証の写しを添付します。マニフェストの交付、写しの確認、5年間の保存を徹底し、処理業者から期限内に写しが返送されない場合は速やかに状況を確認します。
参考)廃棄物処理法のマニフェストの位置付けや罰則について徹底解説 …
車両による産業廃棄物の運搬を行う場合は、車両の表示義務と書面の備付け義務を遵守します。定期的に社内研修を実施し、法令遵守の意識を高めることで、違反のリスクを最小限に抑えることができます。
参考リンク(廃棄物処理法の罰則一覧について詳細が記載されています)。
東京都環境局:廃棄物の不適正処理禁止
参考リンク(マニフェスト制度の措置命令と罰則について解説しています)。
電子マニフェスト:措置命令と罰則
参考リンク(産業廃棄物の収集運搬基準の詳細が確認できます)。
盛岡市:産業廃棄物の収集・運搬基準
参考リンク(排出事業者責任について環境省が詳しく解説しています)。
環境省:排出事業者責任の徹底について