2025年4月頃から、SNSやYouTubeで「斎藤知事が1兆円の道路ルートを変更し費用を5千億円に圧縮した」という情報が拡散されました。この情報によると、斎藤元彦知事がルート変更により建設費用を大幅に削減し、それに反発した「既得権益」の議員たちが「斎藤おろし」を画策したとされています。
YouTubeには「播磨臨海道路計画の利権がやばすぎる」「播磨臨海道路の深い闇」などのタイトルの動画が複数投稿され、いずれも10万回以上の再生回数を記録しています。X(旧Twitter)でも1カ月間で2千件以上の投稿がされており、大きな注目を集めました。
しかし、兵庫県道路企画課は「事実無根の陰謀論です」と明確に否定しています。現在のルート案の大枠は斎藤知事の就任前に決まっており、県も「ルート案を変更した事実もない」と断言しています。
播磨臨海地域道路の構想は1970年に浮上し、県や播磨南部の市町が約20年前から要望を続けてきた歴史があります。計画の検討は段階的に進められており、以下のような経緯をたどっています。
優先区間の絞り込み(平成25年度~)
計画段階評価(平成29年3月~)
最初のルート案が示されたのは2019年で、国はまず4つの大まかなルート帯を提示しました。この時の資料によると、最もコストが高額だったのが海側のルート帯で、最大約9500億円と試算されており、これがネット上で「1兆円かかる」といわれた根拠となっています。
2020年6月の委員会において、「内陸・加古川ルート」の採用が確認されました。このルートは加古川バイパス明石西ランプ~加古川東ランプ間に加古川ジャンクション(仮称)を設け、そこから加古川市内の市街化調整区域及び住宅密集地と企業密集地の間の空間を抜けて姫路市に至るものです。
2022年11月28日には、国から県に現行のルート案が正式に手交されました。斎藤知事はこの際、「これでいいんじゃないかと了承した」と述べており、変更を指示していなかったことを認めています。
2023年10月には、ICやJCTの位置を含む詳細なルート案が発表されました。優先整備区間は第二神明道路の大久保IC-明石西IC間に新設する「明石西JCT」を起点に、姫路市広畑区に設ける「広畑IC」に至るルートで、全区間とも片側2車線となっています。
建設費用については、4つのルート帯の中で海側ルートが最も高額で最大約9500億円と試算されていました。しかし、実際に採用された「内陸・加古川ルート」の具体的な建設費用は公表されていません。
内陸ルートが選定された理由として、以下の点が挙げられています。
播磨臨海地域では、国道2号バイパス(加古川バイパス、姫路バイパス)の1日の交通量が10万台を超える区間があり、日常的な渋滞が発生しています。この道路の整備により、慢性的な交通渋滞の解消と物流機能の向上が期待されています。
一方で、この道路建設に対しては反対意見も存在します。主な反対理由として以下が挙げられています。
環境への懸念
将来性への疑問
しかし、兵庫県は将来交通量推計を実施しており、人口動態、GDP、交通機関別の分担交通量なども考慮して推計しています。仮に人口と同様に交通量が減少した場合でも、国道2号バイパスの混雑は解消されず、道路の必要性は変わらないとしています。
環境影響評価については、大規模事業のため環境アセスメントを実施し、道路整備による環境への影響について調査・予測・評価を行い、必要な環境保全措置を講じることになっています。
現在、都市計画・環境影響評価の手続きが進められており、2025年6月には都市計画素案に関する公聴会が開催され、住民から様々な意見が寄せられました。
この道路計画は、播磨臨海地域の交通課題解決と地域発展のために重要な役割を果たすことが期待されていますが、環境への配慮と住民の理解を得ながら慎重に進められる必要があります。