廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(通称:廃掃則)は、昭和46年9月23日に厚生省令第35号として公布され、廃棄物の排出抑制と処理の適正化により、生活環境の保全と公衆衛生の向上を図ることを目的としています。この規則は、廃棄物処理法の具体的な運用基準を定めた重要な法令で、産業廃棄物の収集運搬から処分まで、各段階における詳細な基準を規定しています。
参考)廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)
施行規則では、産業廃棄物の保管基準として、第8条で保管場所の設置要件や保管方法が定められており、記録は作成から3年間の保存が義務付けられています。車両を使用した産業廃棄物運搬には特に厳格な規定があり、2005年4月1日からは表示義務と書面備え付け義務が強化されました。この法改正により、不法投棄や不適正処理の防止がより実効性のあるものとなっています。
参考)e-Gov 法令検索
環境省の公式サイトでは、施行規則の全文が公開されており、事業者は常に最新の法令内容を確認できます。2025年には施行規則の一部改正が公布され、電子マニフェストの項目追加や委託契約書の記載事項追加など、さらなる適正化措置が講じられています。
参考)電子マニフェストと産廃契約書の改正で、排出事業者は何をするか…
環境省の廃棄物処理法公式ページ - 法令全文や最新改正情報の確認に有用
産業廃棄物の収集運搬車両には、廃棄物処理法施行令第6条第1項第1号イおよび施行規則第7条の2の2により、車体両側面への表示義務が定められています。表示内容は、運搬主体が排出事業者の自社運搬か、収集運搬業者による委託運搬かで異なります。
参考)産廃トラック(産業廃棄物収集運搬車両)の種類・義務について解…
排出事業者が自ら運搬する場合は、以下の2項目が必要です:
参考)産業廃棄物収集運搬車への表示、書面備え付け義務 新潟市
収集運搬業者が委託を受けて運搬する場合は、上記に加えて許可番号(下6桁以上)の表示が必須となります。表示は識別しやすい色の文字で鮮明に行う必要があり、活字体(印刷文字)での表示が求められます。手書きの表示は基本的に認められていません。
参考)https://www.env.go.jp/recycle/waste/pamph/02.pdf
実務上の注意点として、車体に直接プリントする必要はなく、マグネットシートなどを使用した貼付でも法令要件を満たします。ただし、運搬中に廃棄物などで表示が隠れてしまうと表示義務違反となるため、常に視認可能な状態を保つ必要があります。特別管理産業廃棄物の運搬車についても、「特別管理」の表示は特に必要なく、通常の産業廃棄物と同様の表示で対応可能です。
参考)産業廃棄物の自社運搬は許可不要!書類携帯や表示義務など注意点…
産業廃棄物を運搬する車両には、表示義務に加えて書面備え付け義務が課されています。施行規則第7条の2第3項により、2005年4月1日から書面の常時携帯が義務化されました。この書面には、運搬中の産業廃棄物に関する重要情報を記載する必要があります。
参考)産廃収集運搬車は「表示・書面備え付け」義務があります!|株式…
書面に記載すべき必須項目は以下の通りです:
| 記載項目 | 内容 |
|---|---|
| 氏名・名称・住所 | 排出事業者または収集運搬業者の基本情報 |
| 廃棄物の種類と数量 | 運搬している産業廃棄物の具体的な種類と量 |
| 積載日 | 産業廃棄物を車両に積載した年月日 |
| 排出事業所情報 | 名称、所在地、連絡先 |
| 運搬先情報 | 処分先の事業所名、所在地、連絡先 |
書面の形式には指定がなく、記載内容に誤りがなければ紙媒体のほか、スマートフォンやタブレットなどの電子機器でも携帯可能です。実務上は、紙マニフェストを携帯することで書面備え付け義務を満たすことができます。電子マニフェストを使用している場合は、受渡確認票を持参することで基準を満たせます。
参考)https://www.amita-oshiete.jp/qa/entry/010865.php
自社運搬の場合、マニフェストの交付義務はありませんが、書面備え付け義務は適用されるため注意が必要です。運搬中に行政による路上調査が実施されることがあり、その際に書面提示を求められる可能性があります。
参考)産業廃棄物の自社運搬の概要 マニフェストは不要?
廃棄物処理法に違反した場合の罰則は非常に厳格です。最も重い罰則は、無許可営業や不法投棄に対するもので、5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(法人の場合は3億円以下の罰金)、あるいはこれらの併科が科されます。不法投棄については、未遂であっても罰則の対象となる点が特徴的です。
参考)廃棄物処理法に違反したときの罰則や違反を防ぐための注意点を紹…
その他の主な違反と罰則は以下の通りです:
参考)廃棄物処理法における罰則一覧表(令和7年6月1日施行後) -…
実際の違反事例として、収集運搬時の事故が挙げられます。一般社団法人廃棄物処理施設技術管理協会の調査によると、平成元年から平成10年の間に発生した産業廃棄物事故のうち49%が収集運搬時に発生しており、その内訳は交通事故54%、墜落・転倒21%、挟まれ・巻き込まれ13%となっています。
参考)産業廃棄物の収集運搬時に事故が起こったら?対応と対策について…
車両表示や書面備え付けを怠った場合も、行政から改善命令が発出され、違反を繰り返すと刑罰や社名公表の対象となります。また、排出事業者が無許可業者に処理を委託した場合も、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金またはこの併科が科される可能性があります。
群馬県公式サイトの罰則一覧 - 廃棄物処理法における罰則の詳細確認に有用
車両を使用した産業廃棄物の運搬において、法令を遵守しながらコストを削減する方法として、自社運搬の活用が有効です。自社運搬とは、排出事業者が自ら産業廃棄物を処分先まで運搬することで、産業廃棄物収集運搬業の許可は不要です。これにより、外部業者への委託費用を削減できる可能性があります。
自社運搬を実施する際の準備コストは比較的低く抑えられます。車両表示については、マグネットシートを使用することで初期投資を数千円程度に抑えることができ、運搬時のみ貼付すれば良いため運用の柔軟性も高くなります。車検証の使用者が排出事業者と同一であれば、所有者が異なっていても問題ありません。レンタカーも自治体によっては使用可能ですが、事前確認が必要です。
参考)産廃収集運搬に使用する車両の要件
書面備え付けについても、既存のマニフェストを活用できるため、新たな書類作成の手間は最小限で済みます。紙マニフェストをそのまま携帯するか、電子マニフェストの場合は受渡確認票をスマートフォンで表示することで基準を満たせます。帳簿や記録の保存についても、環境省の通知により電子データでの保存が認められており、システム導入により管理コストの削減と効率化が図れます。
参考)帳簿等の電子データによる保存について
ただし、自社運搬にはリスクも伴います。県をまたぐ移動でも許可は不要ですが、運搬基準を満たさない場合は各自治体での許可取得が必要になります。また、建設現場で生じた廃棄物を下請業者が運搬する場合は自社運搬にならず、収集運搬業許可が必要となる点にも注意が必要です。事故発生時のリスク管理として、適切な保険加入や安全教育の実施も重要なコスト要素となります。