塩化カルシウム（CaCl₂）が水と反応する際、強い発熱反応が起こります。この反応では、塩化カルシウムが水に溶ける過程でカルシウムイオン（Ca²⁺）と塩化物イオン（Cl⁻）に電離し、それぞれが水分子に取り囲まれた水和イオンになります。この水和イオンの形成時に放出されるエネルギーが、イオン同士が引き合うエネルギーよりも大きいため、溶解熱として熱が発生するのです。
参考）液体・粒状 塩化カルシウム
塩化カルシウムの溶解熱は非常に大きく、周囲の温度を急速に上昇させることで即効性のある融雪効果を発揮します。一方、塩化ナトリウム（食塩）は水への溶解速度が遅く吸熱反応であるため、塩化カルシウムほどの即効性はありません。この発熱反応により、塩化カルシウムは冬期の道路凍結防止剤として広く使用されています。
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化学式で表すと以下のようになります。
CaCl₂ → Ca²⁺ + 2Cl⁻（水溶液中での電離）
参考）塩化カルシウムと水の化学反応式を教えて下さい！ - ありませ…
ただし、塩化カルシウムと水の反応は厳密には化学反応ではなく、溶解現象です。塩化カルシウムは水に溶けて水和物（CaCl₂・XH₂O）を形成します。水和する水分子の数は1、2、4、6個など複数のパターンがあります。
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塩化カルシウムが水に溶けると、水の凝固点（凍る温度）を大幅に下げる効果があります。これは「凝固点降下」と呼ばれる現象で、溶媒に他の物質が溶けることで溶媒の凝固点が下がる性質を利用しています。通常、純粋な水は0℃で凍りますが、塩化カルシウムが溶けた水溶液は0℃になっても凍らず、-55℃という超低温まで凍結を防ぐことができます。
参考）積雪対策と高校化学との関係
凝固点降下の度合いは溶質の濃度によって決まり、高い濃度の水溶液ほど凝固点が低くなります。塩化カルシウムの場合、濃度32％で凝固点曲線が終わり、これが最も低い凝固点となります。また、濃度30％の塩化カルシウム水溶液はマイナス55℃まで凍結しません。この特性により、塩化カルシウムは寒冷地での凍結防止剤として優れた性能を発揮します。
参考）塩化カルシウムとは
凝固点降下の計算式は以下の通りです。
ΔTf = Kf × m
（ΔTf：凝固点降下度、Kf：モル凝固点降下、m：質量モル濃度）
参考）凝固点降下（定義・公式・計算問題の解き方など）
塩化カルシウムは電離すると1分子から3つのイオン（Ca²⁺が1個、Cl⁻が2個）に分かれるため、他の物質よりも凝固点降下の効果が大きくなります。この性質が、塩化カルシウムを融雪剤として非常に効果的にしている理由です。
参考）【高校化学】「凝固点降下とは」
塩化カルシウムは非常に強い吸湿性と潮解性を持つ物質です。吸湿性とは空気中の水分を吸収する性質であり、潮解性とは固体が大気中の水分を吸収して自ら溶解する性質を指します。この性質により、塩化カルシウムは常に湿った状態を保ち続けます。
参考）https://www.monotaro.com/k/store/%E5%A1%A9%E5%8C%96%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0%20%E8%9E%8D%E9%9B%AA%E5%89%A4/
車に付着した塩化カルシウムは、この吸湿性により金属表面を常に湿った状態に保ってしまいます。金属の錆は、金属が空気中の酸素と水分に反応して酸化することで発生しますが、水分に塩分が含まれると水が電気を通しやすくなり（電解質溶液の形成）、錆が起きる反応を大幅に早めてしまいます。
参考）冬に必ず使う塩化カルシウムで鉄が錆びる。機械式駐車場の保護塗…
塩化カルシウムによる腐食のメカニズムは以下の通りです。
特に車の下回り、タイヤ周り、フェンダー、マフラー、フレームなどは塩化カルシウムが付着しやすく、錆が発生しやすい箇所です。融雪剤が散布された道路を走行した場合、前方の車が巻き上げた水や空気中に含まれる塩分がボディ全体に付着する可能性があります。
参考）即日洗わないと錆びちゃう？ 雪道走行で塩カルが付着したらいつ…
研究によると、塩化カルシウム水溶液が付着した状態で常に濡れていれば腐食は発生しませんが、走行後に乾燥した場合には腐食が発生する可能性が高いことが明らかになっています。このため、融雪剤が付着した後は速やかに洗車することが重要です。
参考）https://zaidantj.hiho.jp/ron/27ron/H27_1.pdf
塩化カルシウムが車に付着した場合、できるだけ早く洗車することが錆を防ぐ最も効果的な対策です。融雪剤の主成分である「塩」は水で流れるため、とにかく早く水で洗い流すことが重要です。付着してから時間が経った塩化カルシウムは固着して洗い流しにくくなるため、なるべく早く行うのがベストです。
参考）塩カルが付着した際の洗車方法とは？車に与える影響なども解説｜…
洗車の頻度については以下の目安があります。
参考）https://venus-smart-care.com/blogs/carwashblog/how-to-remove-snow-melter-from-your-car
効果的な洗車方法は以下の手順で行います：
参考）融雪剤で愛車が錆びる？！誰でも簡単にできる洗車方法 - Be…
【Step1】高圧洗浄機で全体を洗い流す
車全体に水をかけ、特に車の足回りや下回りは融雪剤が付着しやすい箇所であるため、時間をかけて念入りに水をかけます。高圧洗浄機を使用し、水圧を高くして洗浄するとより効果的です。
【Step2】専用シャンプーで洗浄
塩化カルシウムはアルカリ性のため、中性や弱酸性のカーシャンプー、もしくは専用の除去クリーナーを使うのが効果的です。家庭用の中性洗剤や漂白剤など、車用でないものは使わないようにしてください。
参考）塩カルによるサビを防ぐ洗車方法とは？頻度や下回り洗車のポイン…
【Step3】下回りを重点的に洗浄
ボディの下回りを重点的に洗うのがポイントです。下回りは最も塩化カルシウムが付着しやすい箇所であるため、特に念入りに洗浄します。
参考）車についた融雪剤の洗車方法とは？
【Step4】しっかり乾燥させる
洗車後は水分をしっかり拭き取り、乾燥させることが重要です。濡れたまま放置すると、残った塩化カルシウムが再び腐食を促進する可能性があります。
アンダーコートとは、融雪剤が付着しやすい車体下部に対して防錆処理を施すことを指します。防錆処理があることで、融雪剤が付着した場合でも錆びが発生しづらくなる効果があります。特に降雪地域や融雪剤が撒かれるような地域では、アンダーコートの施工が強く推奨されます。
参考）融雪剤で錆びる？錆びない？冬のドライブでも愛車を綺麗に保つ方…
アンダーコートの主な特徴とメリットは以下の通りです。
参考）https://www.monotaro.com/s/c-86451/q-%E8%9E%8D%E9%9B%AA%E5%89%A4/
代表的なアンダーコート製品としては、防錆剤先進国スウェーデンで開発されたノックスドールがあり、融雪剤、海水、潮風などの塩分による錆から車を守ります。また、塩害ガードスプレーなどのエアゾールタイプの製品も市販されており、DIYでの施工も可能です。
参考）マツダ｜防錆アンダーコーティング｜カーライフケア
ただし、アンダーコートは施工していない会社もあるため、利用を検討している場合は施工店に事前に確認することをおすすめします。また、アンダーコートを施工していても、定期的な洗車は引き続き必要です。
参考）車のアンダーコートとは？必要性や施工頻度、費用まで徹底解説…
アンダーコートを施工することで、長期的な車体の保護と資産価値の維持につながります。特に中古車の買取査定では、下回りの錆の有無が大きく影響するため、アンダーコート施工は将来的な価値保全にも役立ちます。
トクヤマの塩化カルシウム製品情報ページ - 塩化カルシウムの特徴や用途について詳しく解説されています
WEB CARTOP - 融雪剤（塩カル）が車に与える影響と洗車の必要性について詳しく解説されています
積雪対策と高校化学との関係 - 塩化カルシウムによる凝固点降下の仕組みを化学的に解説しています
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