リコール対象なのに未修理のまま乗り続けると、エンジンが突然焼き付いて修理費30万円以上の請求があなたに来ます。
B11Wのリコールは「1回あったかどうか」という話ではありません。複数の不具合が別々のタイミングで届け出られており、内容も部位もバラバラです。まずは主な届け出の全体像を把握しておきましょう。
以下に、三菱自動車および国土交通省に届け出られた、B11W(ekワゴン・ekカスタム)に関連する主なリコール・改善対策をまとめます。
| 届出番号 | 届出日 | 不具合部位 | 主な症状・リスク | B11W対象台数 |
|---|---|---|---|---|
| 3629 | 平成27年9月3日 | EGRクーラー・燃料ポンプ・エンジンECU・点火プラグ | エンスト・再始動不能・始動不良 | 84,336台 |
| (改善対策) | 平成29年1月27日 | エンジンECU(スターター・触媒診断) | エンジン始動不能・警告灯不点灯 | 約15万台(4車種合計) |
| 4016 | 平成29年4月6日 | ドア(ドアラッチ) | 走行中にドアが開くおそれ | 7,370台 |
| 4067 | 平成29年6月15日 | シリンダーブロック(エンジン) | オイル通路閉塞によるエンジン焼き付き | 44台 |
| 4075 | 平成29年6月23日 | シリンダーブロック(対象追加) | 同上(対象車両の追加分) | 追加分 |
| (改善対策) | 平成29年1月27日 | CVT(コントロールユニット) | 発進時に車両が坂道を一時的に後退 | 約14万台(4車種合計) |
表を見ると件数の多さに驚きますね。
特に不具合件数が多かったのは「燃料ポンプ・エンジンECU・点火プラグ」に関するリコール(届出番号3629)で、B11W単独で84,336台が対象となりました。不具合報告は2,212件にも達しており、これはサッカースタジアム(収容約2万人)の約1割の人数が実際にトラブルを経験した計算です。被害がかなり広範囲に及んだことがわかります。
また、エンジンのシリンダーブロックに関するリコール(届出番号4067)は対象台数44台と少ないですが、内容は深刻です。
三菱自動車公式:eKワゴン・eKカスタムのエンジンについて(届出番号4067)
※シリンダーブロックのオイル通路閉塞によるエンジン焼き付きリコールの詳細が確認できます。
三菱自動車公式:eKワゴン・eKカスタム・eKスペースのエンジンについて(届出番号3629)
※EGRクーラー・燃料ポンプ・エンジンECU・点火プラグに関するリコールの具体的な不具合と改善措置の内容が記載されています。
「どこが壊れる可能性があるのか」をざっくりでも把握しておくと、日常の運転中に気づくべき異変がわかります。主要な3つの不具合をひとつずつ見ていきましょう。
① EGRクーラー・EGRバルブハウジング(エンスト・再始動不能)
排気ガス再循環装置(EGR)のクーラーとバルブハウジングに使われた一部の材質が不適切だったため、排気ガスに含まれる凝縮水によって内部が腐食しました。腐食片がEGRバルブに噛み込んだり、ハウジングに穴があいたりすることで燃焼不良を起こし、最悪の場合はエンストして再始動できなくなります。この問題だけで不具合報告は534件(物損事故1件)あり、公道でのエンスト被害がすでに複数発生していたことがわかります。つまり「そのうちなるかも」ではなく、実際に止まってしまった車が全国各地にあったということです。
② 燃料ポンプ・エンジンECU・点火プラグ(エンジン始動不良)
燃料ポンプの製造時に燃料流量の管理が甘く、流量が少ないものが出荷されました。さらにエンジンECUの制御プログラムが不適切で燃料噴射量が過剰になり、点火プラグの仕様も不適切なためにくすぶりが発生。これらが複合的に重なり、エンジンがかかりにくくなったり、まったく始動できなくなるおそれがありました。不具合報告件数は2,212件と、B11Wに関連するリコールの中でも最も多くの実害が出た不具合です。
この件数はオリンピックの水泳競技場(収容約1万5千人)をはるかに超える人数が、実際にエンジン始動トラブルに直面したことを意味しています。数字として見ると深刻さが伝わりますね。
③ シリンダーブロックのオイル通路閉塞(エンジン焼き付き)
これは対象台数44台と非常に少ないものの、リスクの深刻さはトップクラスです。鋳造型の中子がずれたまま製造されたことで、シリンダーブロック内部のオイル通路が完全に貫通していないものが出荷されました。オイルが行き渡らないとクランクシャフトのジャーナルメタルが焼き付き、異音を発しながら最終的にエンジンが使用不能になります。エンジン丸ごと交換になれば、修理費用は軽自動車でも20〜40万円規模になることがあります。これは困りますね。
Car Watch:eKシリーズほか60万台のリコール詳細(エンジンECU・CVT改善対策)
※2017年1月に届け出られたエンジンECUとCVTに関するリコール・改善対策の詳細が確認できます。
「自分のB11Wがリコール対象かどうか」は、自宅から5分もあれば確認できます。難しい操作は一切不要です。
確認に必要なものは車検証1枚だけです。手順は以下の通りです。
B11W-XXXXXXXという形式のアルファベット+数字の組み合わせです。B11W0000054 のように入力します。注意点として、車検証の「製作期間」と「購入時期」は別物です。リコールの対象判定は購入日ではなく製造日の範囲で行われます。「購入したのはリコール発表後だから大丈夫」と思っていても、製造日が対象期間内であれば未実施のリコールが残っている場合があります。これは見落としがちな盲点です。
三菱自動車公式:リコール等対象車両検索ページ
※車台番号を入力するだけで、お使いの車両のリコール・改善対策の実施状況が即座に確認できます。
実は、中古でB11Wを購入したオーナーほどリコール対応が抜け落ちやすい状況があります。これが最も注意すべき落とし穴です。
まず大前提として、リコールは「車両に対して紐づく権利」です。オーナーが変わっても、何度転売されても、未実施のリコールが残っていれば現在の所有者は無償修理を受ける権利を持っています。法的に期限もありません。つまりリコール未対応のまま中古車として売られた車を購入した場合でも、費用ゼロで修理してもらえます。
ところが、中古車購入時にはこのリコール状況が見落とされやすい構造があります。主な理由は以下の3点です。
- 中古車販売店がリコール対応済みかどうかを必ずしも告知しない:法的には未対応のリコールについての説明義務がないケースも存在し、購入者が自分で確認しなければわからない。
- ダイレクトメールが旧オーナーに届いている:三菱自動車はリコール通知を登録オーナーへ郵送しますが、オーナーが変わっていると新オーナーには届きません。「連絡が来ていないからうちの車は対象外」という思い込みにつながりやすいです。
- リコール対応済みのステッカーが貼られていない車もある:一部のリコールでは改善完了後にステッカーを貼付しますが、すべてのリコールで目視確認できるわけではない。
「ハガキが来ていないから大丈夫」はダメです。
こうした見落としを防ぐために実践すべき行動はシンプルです。B11Wを中古で購入したら(または購入前に)、前述の三菱公式サイトで車台番号検索を行い、未実施のリコールがないかを自分の目で確かめることです。対応が必要な場合は三菱ディーラーに電話1本入れるだけで予約が取れます。作業時間も内容によって異なりますが、ECUの書き換えだけであれば当日1〜2時間で完了するものも多いです。
三菱自動車FAQ:リコール対象車の確認方法について
※「自分の車がリコール対象かどうかを調べたい」という疑問に対する三菱公式の回答が確認できます。
リコールはすべて「設計・製造上の不具合」に対してメーカーが届け出るものです。しかし、B11Wにはリコール対応後も乗り続ける際に気にしておきたい弱点が存在します。ここでは、リコール情報と組み合わせて知っておくべき独自視点の情報を紹介します。
ドアミラー電動格納の不具合とリコール期限の落とし穴
B11Wのドアミラー電動格納モーターは故障事例が複数報告されています。この部位については一部の製造年式でリコールが届け出られましたが、保証期間を過ぎた車両については自己負担での修理となります。あるB11Wオーナーのケース(平成28年式)では、リコール対象にもかかわらず「保証期間を2ヶ月過ぎていた」として有償修理になったという報告もあります。保証期間と製作期間の関係は混同しやすいため注意が必要です。
リコール後のエンジンECU書き換えと燃費への影響
平成29年1月に実施されたエンジンECUの書き換えリコールでは、触媒劣化診断のプログラムが修正されました。このECU書き換えによってエンジン制御パラメータが変わるため、作業前後で車のフィーリングや燃費が微妙に変化したと感じるオーナーもいます。これは想定内の現象ですが、「リコール後に燃費が悪くなった」「アクセルのレスポンスが変わった」と感じた場合はディーラーへ相談することをおすすめします。ただし、ECU書き換え自体の修理費は無料です。
CVT改善対策は「リコール」ではなく「改善対策」扱いの場合も
CVT(コントロールユニット)の不具合については、国土交通省への届け出が「リコール」ではなく「改善対策」として届け出られた部分があります。改善対策もリコールと同様に無償で対応されますが、「リコール」という言葉しか知らないオーナーが「自分の車にはリコールがない」と誤解するケースがあります。三菱公式の対象車両検索では、リコール・改善対策・サービスキャンペーンをまとめて確認できます。これが基本です。
以下のポイントを頭に入れて確認すれば、見落としはほぼなくなります。
- リコールと「改善対策」「サービスキャンペーン」は別の分類だが、いずれも無償対応
- 複数のリコールが重なっている場合、1件対応済みでも別件が残っている可能性がある
- 確認方法は三菱公式サイトの車台番号検索が最も確実かつ最速
※リコール修理の費用負担ルールや中古車・代車の取り扱いについて、法的な観点から詳しく説明されています。